2012年12月31日月曜日

それではよいお年を

大晦日をいかがお過ごしでしょうか?まさか、解離のオペしている麻酔科医もいたりして・・・
今年は、フェイスブック上で議論するあまり、ブログの更新をしていませんでした。また、手術室副部長となり、手術室全体のスケジュールを組むことになり、以前ほど、手術麻酔にだけ専念していればよいという状況ではなくなりました。その上、手術室および麻酔科の医療安全のマネージャーも担当することになり、様々なインシデントにも対応しなくてはならないようになりした。こうした状況にも負けず、来年はブログ上で情報発信ができたらと思います。

2012年12月28日金曜日

年末最後の良い知らせ

自分が診ている大学四年生の患者さんがいます。大学一年のときに、検診の採血針によって左腕の慢性痛を抱えました。この年末、患者さんは国家試験の勉強と卒業論文用の研究や執筆で左腕だけでなく、左手、右手にまで痛みがでてきてしまい、どうにもこうにもならなくなってしまいました。左手をかばうあまりに右手も酷使しているので無理もありません。前回の診察で、どうしたらよいのか分からなくなり、患者さんは泣いていました。そんな患者さんに、僕は、自分の母が戦争で祖父が死んで母子家庭の中で、辛い中を生き抜いたこと、そんな母がどんな時も諦めなければ道が開けるということを僕にアドバイスしてくれることを話ました。そして、最後に、歯を食いしばってでも、この困難を乗り越えろと伝えました。もちろん、精神論だけではなく、右手と左手の超音波画像診断を行い、責任病変部にステロイドを超音波ガイド下に行いました。今日、その患者さんが卒業論文の発表が終わったと、発表スライドの写しをもって、笑顔で報告してくれました。箸すらもてなかった患者さんですが、ボールペンに巻きつけるデバイスを使い、この難局を乗り越えたそうです。これからも、いろんな困難が立ちはだかると思いますが、大丈夫だと感じました。こういう瞬間に出会えることが、僕にとっての幸せである。

2012年12月22日土曜日

フィリピンからの手紙

フィリピンの麻酔科医から、胸部傍脊椎ブロックを教えて欲しいとメールがきました。久しぶりの海外からの手紙に、すこしワクワク。喜んで引き受けましたが、本当に来るかどうかは分かりません。
どうでしょう・・・・?

2012年11月16日金曜日

アメリカからの来客

富士フイルムソノサイトのsenior user interaction designerのAmandaさんとmanagement analystのNaomiさんが,ペインクリニックでのM-tubroの使う状況を視察しに、大学に来られました。今後の超音波画像診断装置がどのようなものにしていくべきか参考にするためです。お役に立てられるようなものであったか、よく分かりませんが、ウィレナさんと二人でブロックをしている姿をみてもらいました。今日の僕たちの姿をみて、どのように富士フイルムソノサイトの装置が進化していくのか楽しみです。診療の終了後にインタビューも受け、最後に記念撮影。単に写真を撮るだけではつまらないので、なつかしのXライダーをイメージして、お二人にプローブでXの字を作ってもらいました。


2012年11月15日木曜日

正しく使うのは難しい

日立の超音波診断装置で胸部傍脊椎ブロックをしつづけ、毎回、最適画像をえる設定に手間取り、先週、とうとうブロックをするのを諦めた話をしました。どうしてそうなったのか、日立アロカ(日立とアロカが合併)の方が説明をしに来てくれました。

バイト先病院で使用されている38ミリ幅のリニアプローブは、筋骨格筋系や乳腺の診断用に特化したもので、30ミリ深までに存在する構造物を観察するには抜群の能力を発揮します。しかし、それより深い位置になると、いくら周波数、フォーカス、コントラストを調節しても見えないということでした

リニアプローブがもっぱら30ミリ深までの観察が適するというのは、我々でも知っている知識です。ここで、我々、現場で使用する者が知らなければならないのは、30ミリ深を超えた領域において、我々の観察したいものを描出してくれるかは、リニアプローブの性能(もしくは開発の目的)によるということです。

手術室に超音波診断装置がなく、各部署から取り寄せながら、超音波ガイド神経ブロックをやっている麻酔科医の多くは、同様の事例に遭遇していると推察します。全国、津々浦々で講演をすると、時に、「先生の書かれているように描出しようとするが、画像がよく分からないのです。どうややれば、先生のように描出できるのですか?」と尋ねられることがあります。今まで、この質問の意味が理解できませんでした。プローブの当て方の説明をソノサイトを使って説明すると、「これだと,よく見えるんですね。」という返事が返ってきたことがありました。これは、リニアプローブの性能による問題なのでしょう。

やっぱり、超音波ガイド手技のために開発された超音波機器を麻酔科医専用に購入することが一番なんでしょう。

2012年11月13日火曜日

Martin & MacArthurのコアの時計

今年、ハワイ旅行に行った際に、Martin & MacArthur製のコアの木で出来た腕時計を購入しました。コアの木は神が宿るということで、縁起が良く、この腕時計の中味は数百円の安物のcitizenの時計ですが、コアの木によって値段が4万円を超える代物になります。

この時計の購入は要注意です。アラモアナショッピングセンターのMartin & MacArthurの専門店で購入しましたが、お店の人は「時計の部分は千円もしないcitizenだから、日本の時計店にもっていけば、電池交換をしてくれる」と言っていました。それなら安心と思って、大枚をはたいて、買いました。

購入して、うきうきしていたのは、わずか3ヶ月でした。電池切れか、動かなくなり、近所の時計店数軒に持ち込んだところ、みんな、電池交換を拒否。
コアの木を傷つけずに電池交換をすることを保証できないというのが理由ということでした。

そして、さらに電池交換をしてくれるところを探して、いろいろお店に電話をしてみると、どうやら
Martin & MacArthurの時計に問題が発生している情報を聞きつけました。そのお店は、カナダのTense社という同様の木製腕時計の取り扱っています。店主によると、Martin & MacArthurの時計を持ち込んでくる人が今年はやけに多いとのこと。電池交換ではなく、どうも、citizenの時計に問題があって、動かないかもしれないということでした。そして、最後に留めを刺されるアドバイスを頂いてしましました。日本で電池交換ができるといわれて、ハワイで安易に買う日本人がいるが(僕のこと)、Martin & MacArthurの時計は、実は、時計店でも扱いが難しい腕時計で、そのお店でも電池交換はできないので、Martin & MacArthurに海外輸送で送っているということでした。

社会勉強にしては、高いお値段でした。まだまだ、物を見抜く力が足りません。

 

2012年10月31日水曜日

臨床麻酔学会と福島の復興

明日から日本臨床麻酔学会が福島で行われます。福島に到着された麻酔科医のみなさん、朝日新聞の福島版を読まれたでしょうか?

学術総会の会場のひとつであるビックパレッドふくしまは、東日本大震災で深刻な被害をうけ、応急処置をしながら避難所としても使われていました。その後、少しずつ事業を再開してきて、明日から全面再開だそうです。つまり、福島の復興シンボルの全面再開のひとつに、日本臨床麻酔学会がわるわけです。すばらしい!!

敗北

火曜日は週一でいく病院での麻酔です。そこには日立の超音波診断装置2台を整形外科診察室、救急処置室、手術室で共同で使用しています。いわゆる超音波診断用の装置であるため、非常に細かい設定ができます。毎週、ここで肺の手術があり、超音波ガイド下傍脊椎ブロックを行っています。日立製では、実施前のプレスキャンでかなりの時間を費やします。非常に細かい設定を適切に行わないと、内肋間膜が描出されてこないのです。

今日、僕はとうとう超音波ガイド傍脊椎ブロックができませんした。横突起は描出されるものの、外肋間筋や肋骨挙筋、内肋間膜、傍脊椎腔、胸膜が明瞭には描出されませんでした。vascular、artery, breast, throid,orthopedicなどの設定は変えては、コントラスト、フォーカスをいじっているうちにとうとう、横突起まで分からない画像に・・・。デプスは4cmで充分であったので、本来なら解剖が明瞭に描出されてこなければなりません。これ以上、プレスキャンに時間を費やすのはよくないと判断し、しかたなく、従来法で行いました。

従来法とは、傍矢状面上で針を盲目的に操作し、傍脊椎腔にカテーテルを挿入する方法です。背部皮膚に垂直に刺入される針から挿入されるカテーテルは、傍脊椎腔前面に衝突する形で挿入されるために非常に抵抗が強く、挿入するのが大変でした。挿入された後のカテーテル先端もどこにあるか、分かりません。案の定、効果発現に時間を要し、必要とされる皮膚分節遮断域も不完全でした。超音波ガイド下に切開レベルに確実にカテーテル先端を留置できる、超音波ガイド下法の完成度の高さを実感した次第です。

この病院は、僕が赴任するようになり、麻酔科医の超音波ガイド手技が増え、院長も新しい携帯型超音波診断装置の購入にOKを出して頂きました。装置が病院に搬入されるのが今年の12月なので、それまでは何とかしのぐしかありません。

2012年10月12日金曜日

GraphPad Prismがバージョンアップ

きれいなグラフとしっかりとした統計解析をしてくれるGraphPad Prismがバージョン5からバージョン6にアップデートしています.バージョン5を持っている先生は149ドルでバージョンアップできます.
http://graphpad.com/scientific-software/prism/#whatsnew

新しいものが好きな僕はすぐにバージョンアップ.パソコンにはバージョン5も残っているのでサポートセンターに問い合わせたところ,アップデートすると,バージョン5のほうは無効になるので,パソコンから削除してよいということでした.しかし,普通にバージョン5も使えるんじゃないか・・・・

2012年10月4日木曜日

eZONO

最近,フェイスブック中心に発言をしているために,とんとブログの更新をしておりませんでした.

パーカー気管チューブのK社がドイツのベンチャー企業が開発したeZONOという超音波診断装置を取り扱うということで,事前評価をして欲しいと来訪されました.
http://www.ezono.com/eng/select-your-language
超音波診断装置には,リニアプローブ,マイクロコンベクスプローブ,コンベクスプローブの3つのプローブが使用可能.

金属ケースに入れられたeZONOをみて,僕の目に飛び込んできたものはeZONOではなく,マイクロコンベクスプローブでした.これはソノサイトやGEが持っているマイクロコンベクスとはサイズが異なり,指3本分くらいの幅,つまり僕が一番,脊椎・傍脊椎領域で必要だと主張しているコンベクスプローブのサイズでした.すぐに,そのマイクロコンベクスプローブの画質を確かめたくなり,説明も充分に聞かずに,マイクロコンベクスプローブを自分の腰に当てました.残念ながら,画質は初期のLOGIQeのコンベクスプローブレベル.自分が観たいものは観ることができませんした.

リニアプローブの画質も確認しました.周波数は10MHz.ソノサイト180以上,初期(5年前)のLOGIQe以下といったところ.中心静脈穿刺程度でしか,超音波ガイド手技をしない人には問題ないかもしれませんが,今の超音波ガイド下神経ブロックには追いついていない画質だと判断しました.タッチパネル形式ですが,まだ超音波診断装置の概念から抜け出せておらず,治療手段としての超音波機器としてタッチパネルの内容を再検討する必要があると思いました.

ただ,eZONOはドイツのベンチャー企業で,行動力のある企業ということで,画質に関してはバージョンアップが期待できるようでした.eZONOの最も良い点は,診断装置の中に教育ツールが入っており,プローブの当て方,局所解剖のイラスト,超音波画像,動画などが入っており,それらを観ながら,自分の画像と比較できる点です.今後の画質の向上に期待したいと思います.
臨床麻酔学会で展示するということでしたので,触ってみたい先生はK社ブースをのぞいてみるとよいと思います.「あ~これか~」を合い言葉に・・・
 

2012年9月2日日曜日

日本麻酔科学会東海北陸支部地方会ワークショップ

昨日,日本麻酔科学会東海北陸支部地方会が行われました.僕はその中でワークショップのコーディネーターとインストラクターを務めました.ワークショップはいつもと違う形式をとりました.通常は様々なブースを回って,一通りの内容を受講する形式ですが,今回は,受講者が参加したい内容を選択できるようにして,ブース毎に参加申し込みをする形にしました.そして一つのブースにつき、1000円を徴収する形にしました.値段をみて,高いと思われた麻酔科医もいたかもしれません.しかし,海外に目を向けると,同じような内容で15万円も支払わなければならないものがほとんどです.それに対して,日本は知識を得ることに対する代価がものすごく安いことを知って頂きたいと思います.
 
今回は,手術麻酔用の末梢神経ブロックとペインクニックにおける診断と治療も含めた内容としました.Usui先生に運動器疾患として,肩関節の診断についてお願いしました.Usui先生は,お父上の会社に依頼して,独自のソフトを開発し,そのソフトを使ってレクチャーをしてくれました.Ultrasound Utility Shoulderという名前のソフトで,Appleから購入が可能です.ただ,価格は6000円と高目です.プローブの当て方と超音波画像,それと動画も入っていますが,解説文はまだありません.Usui先生の話を聞きながら,使用すると,価値のあるソフトですが,Usui先生の側にいない人向けに解説文を付けて頂けたらと思います.手元にmusculoskeletal ultrasounの本がある人は解説文がなくても,価値が理解できると思います.僕はもう買いました.
 

2012年7月31日火曜日

名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム,ちょっとだけ再開

国立国際医療研究センターのM先生からメールがあり,超音波ガイド神経ブロックの見学希望者がいるということでした.M先生はH大学時代の医局長で,研修医時代にとてもお世話になった先生でしたので,1日でよいということでしたので,お引き受けいたしました.

7月30日,6年目の麻女,K先生がいらっしゃいました.面で捉えるTAPブロック,胸部傍脊椎ブロックの見学したあと,実際に一緒にやってもらいました.国立国際医療研究センターでは,四肢の神経ブロックでは,カテーテルをいれるところまで普及しているということでしたが,体幹の神経ブロックはまだ行っていないということでした.ブロックだけでなく,実際にどのように硬膜外麻酔をせずに
開腹術や開胸術の麻酔管理を行っているか,直接見て頂くことで,より理解できたのではないかと思います.これで,国立国際医療研究センターで体幹の神経ブロックが始まってくれると幸いです.
いつもながら,実習のために協力をしてくれる医局員には感謝します.

2012年7月7日土曜日

はじめ人間ギャートルズ

産まれた、産まれた、何が産まれ~た?星がひとつ。くらい宇宙に産まれ~た~。
ということで、赤根くんおめでとう。

2012年6月27日水曜日

よく失くす

SonositeのMturboを使いたいと思ったときに使えないことが最近、増えている。電源コードが接続口から外れて、電源コードが行方不明になり、その後、しばらくは充電で使われて、丁度、充電がなくなったところで、自分が使う羽目に。

2012年6月22日金曜日

仕事道具を失った

Mtuboに接続して、USGRAの記録に使用してきたソニーのビデオカメラが壊れた。タッチパネルなので、液晶パネルが壊れると、何もできない。ペインクリニック学会のワークショップの準備が、これでできなくなりました。撃沈

このHDDビデオカメラは入力端子がついていて,超音波診断装置の画像が記録できる.残念ながら,ソニーはこのバージョン以降,入力端子を装備からはずしてしまった.これがなければ,仕事にならない.このビデオカメラのおかげで,世界中の麻酔科医と友人になれた.そういっても過言ではない.なんとか,修理せねば,いくらお金がかかったとしても・・・・とりあえず,日本ペインクリニック学会に間に合いそうにないのが心配.


2012年6月20日水曜日

180で手技を見せる

現在,碧南にある病院に週1回,外勤日に出向しています.そこには,若い麻女が一人だけいて,がんばっています.僕が行くようになって,彼女が超音波ガイド下末梢神経ブロックに取り組んでいます.そこには超音波画像装置は,日立のものしかなく,他科の外来診療にも使用されており,手術室専用ではありません.そこで,自分のソノサイト180を持って行き,それでブロックをしています.先週から立て続けに,呼吸器外科手術があり,180で傍脊椎ブロックのカテ入れを二人でやっています.もっと,いい画質の装置があれば,神経ブロックの教育もよくなると思うのですが・・・仕方ありません.

治療のための超音波装置

学会で,末梢神経ブロックに必要なのは超音波診断装置ではなく,治療のための超音波画像装置なんだと主張し,そのためにどんなプローブが必要なのかを機器展示のブースで講演しました.特に,脊椎・傍脊椎ブロック用のプローブは今までの大きさ,形,画質ではだめで,どんなものがよいのかについては,2大超音波機器メーカーには伝えてきました.

僕の主張に感化された麻酔科医が,国内の超音波機器で,脊椎・傍脊椎周囲専用プローブを模索しはじめた.フェイスブックのディスカッションで話題として上がってきている.超音波ガイド下神経ブロックの新展開,超音波機器メーカとしての販売実績も,このプローブのあるなしが左右するような気がしている.

2012年6月9日土曜日

末梢神経ブロックは,本当に普及期に入ったのか?

学会の超音波ガイド神経ブロックワークショップは,ソノサイトとGEの二つの企業協賛ワークショップがありました.僕としては,ソノサイトからかなり前の段階でインストラクターの話が来ていたので,同日開催ということもあり,時間的に厳しいかなと考え,GEのほうはお断りをしました.

ソノサイトのワークショップの設定は,はじめから上級者用として話が来ていました.末梢神経ブロックが普及期に入り,今までのようなワークショップではなく,つまり教科書的な話ではなく,実際にエキスパートがどのように末梢神経ブロックを手術に使っているのか,何を準備し,どんな薬を使い,どのようにブロックをするのか,ビデオで見せて欲しいという話でした.話をきいて,僕は上級者用コースを頭に設定してしまいました.患者入室からの流れを話をしていたら,当然,教科書的な話などできるはずもなく,聴講者は上級者だと判断したわけです.一方で,GEは今までどおりのワークショップを開くと聞いたので,初級者はGEのワークショップを受けるんだなと思いました.

そして,学会二日目,僕は体幹のワークショップを担当しました.解剖やら超音波画像の説明は一切しませんでした.難易度の高い胸部傍脊椎ブロックをどのようにおこなっていけばよいのか,コツは何かを説明しました.真っ暗闇の向こうにいる聴講者は,末梢神経ブロックの中級から上級者だと思っていました.

ところが,ビデオレクチャーが終わって,各ブースに分かれてからのレクチャーでは,聴講者のほとんどが,プローブの握り方すらままならない初級者,しかもブロックをほとんどしたことがない先生ばかり.それが分かった瞬間,全く意味のないビデオを供覧してしまったことを後悔・・・.

この学会で思ったのは,本当に末梢神経ブロックは普及期に入ったのか?ということです.まだ,一部の急性痛管理に熱心な麻酔科医がやっているだけの導入期で,一部の熱心な麻酔科医が増えただけ.たしかに演題数をみると,かなりの数になってきました.しかし,ほとんどの先生方は施設に麻酔科医用の超音波機器が手術室に配備されておらず,指をくわえて見ているだけの導入期じゃないのかと思いました.どうなんでしょう?やっぱり,普及期?

2012年6月8日金曜日

名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラムは今・・・

この学会でも,数人の方からお問い合わせがありました.以前にお話しましたように,今年は麻酔科入局者数が多かったために,現時点で研修にくる先生を医員として採用して,生活費の保証をしてあげられる体制が整っていません.また,タイ人麻女Wireenaさんのブロック教育に力を注いでいます.よって,しばらくはプログラムを止めております.状況が変わり次第,またご報告させて頂きます.

美味しい

今年の企業共催ワークショップで、ソノサイトで出されたクッキーを皆さん、召し上がりましたか?これが、また美味しいのなんのって。最高でした。

2012年6月6日水曜日

査読の質が一定していない

座長の依頼を受けているので,学会の抄録を読んでいます.読んでいて,びっくりすることは,データも書いていないのに発表を許されているものが目に付くことです.僕が査読をしたものは,データ記載のないもの,統計学的におかしな結論を出したものは全て通しませんでした.中には,他の文献と比較考察し発表するというような地方会ネタのような抄録まであります.このような場合は,結論のところで他の手法と比較した結果が述べてあって然りです.こんな不公平な査読が許されてはいけません.査読者は,もっとしっかりするべきではないでしょうか.

1番の心配

今学会で1番の心配は、予定日を迎えたAA先生が壇上にあがること。壇上分娩になっても大丈夫なように、魔法瓶にお湯、桶をもっていこうかな?

2012年5月26日土曜日

S-nerve vs Venueどっちを買うべきか?

そんな質問を受けました.答えは明白です.S-nerveです.Venueは使用に耐えません.GEは超音波機器メーカーとしての姿勢を変えずに今まで,超音波診断装置を売り続けました.超音波機器メーカーとしての診断装置を作るノウハウをフル動員して,作ったから使ってみろという姿勢でした.

一方,ソノサイトはどうでしょう?2005年,ソノサイトの開発最高責任者のJames M. Gilmoreが僕の外来にきました.180を使いながら,SGBや大腿神経ブロックをしている無名の僕に,僕が何が見たいのか,180の画像では何故,駄目なのか尋ねてきました.僕は超音波ガイド下神経ブロックに必要な画質はなにかを大腿神経を描出しながら説明をしました.ソノサイトは,世界的に超音波ガイド下神経ブロックが普及する以前から,超音波ガイド下神経ブロックに注目し,超音波治療装置を作りはじめていたわけです.

ご存知のとおり,2005年当時,国内で購入できる携帯型超音波診断装置はソノサイトのMicroMaxxとGEのLOGIQeでした.GEは摘みをいっぱいつけ,MicroMaxxより画質がきれいでした.みんなが当時,LOGIQeのほうが画質がいいんじゃないかと小声で話していました.しかし,超音波治療装置を開発し続けたソノサイトは,MicroMaxxの画質をあっという間に,LOGIQe以上にし,さらにM-Turbo,神経ブロックに特化したS-nerveを出しました.神経ブロックに必要な条件を揃えていました.

GEも携帯型で,より摘みのないVenueを市場に投入しました.ところが,GEは,ここで致命的なミスをします.Venueもまた超音波診断装置だったわけです.このあたり,GEの開発者と話しをしたわけではないので確かなことは言えません.しかし,画像をみて思うことは,GEは超音波ガイド下神経ブロックで,心臓や腹部内臓を診断するときと同じような画像を見せたらよいと考えていたと思います.心エコーなどは,構造物が沢山の点の集まりで構成される砂絵タッチな画質より,点と点の部分を計算処理して,つなげてしまって線として描出したほうが,より直視的に観察したような画像となるので,見た目,心臓の動きがわかりやすいわけです.GEの超音波診断装置をみるとわかりますが,極端に画像処理されて,油絵のような画質です.その結果,1-2ミリの神経,深在性の非常にかすかに映る筋膜や神経が描出されないのです.S-nerveやM-turboで見える物が,GEのLOGIQeやVenueでは全く見えません.

実は,ソノサイトも極端に油絵タッチな画像に方向変換しています.機器のバージョンを上げる度に見えていた神経が見えなくなり,それをフィードバックすると直してくる.それを繰り返しています.どっかで超音波診断装置を作りはじめないかと心配しています.

GEに駄目だしをしましたが,そのGEが2005年のころのソノサイトに姿を変えつつあります.これはGE本社というより,GEの日本スタッフの変化です.日本で独自に物作りをしようという考えのようです.今後,売りに出されるGEの機器には注目すべきかもしれません.少なくとも,名古屋大学の手術室に使われずに眠っているような超音波診断装置LOGIQeを売るようなことはしないのではないかと思います.というか,期待しています.

2012年5月25日金曜日

Posterior TAP論争の決着か!

TAPブロックの元祖,McDonnellらはposterior TAPブロックの皮膚分節遮断域がT7からL1と主張しています.これに対して,僕やHebbarはT10からL1,つまり下腹部しか遮断できないと主張しました.このposterior TAPブロックの守備範囲論争にとうとうが決着がつくような気がします.

Regional Anesthesia and Pain Medicine 2012;37:294-301で,posterior TAPブロックの局所麻酔薬の拡がりをMRIを使って,経時的に検討しています.片側には0.375%ロピバカイン30mlでposterior TAPブロックをします.もう片側にはposterior TAPブロックとsubcostal TAPブロックを0.375%ロピバカイン15mlで行っています.

注目すべきなのは2つ.subcostal TAPブロックは半月線より内側で刺入している点です.そしてもう一つは,ここでいうTAPブロックは「点で捉えるTAP」であること,つまり,腹横筋膜面を針先が貫いたら,そこで局所麻酔薬を注入してしまいます.腹横筋膜面の中で針先を進めていくような「面で捉えるTAP」ではないということです.

結果としては,三時間かけて局所麻酔薬は腹横筋膜面の中を拡がっていくことが確認されました.
30mlの大量の局所麻酔薬を注入しても,posterior TAPブロックでは,半月線までしか拡がらない.
一番,広く局所麻酔薬が拡がったのは,posterior TAPブロックとsubcostal TAPブロックを組み合わせたとき.しかし,二つの局所麻酔薬の拡がりがどこかでつながることはない.

点で捉えるTAPブロックでは,どうやら半月線が堤防の役割を果たしていると考えて良さそうです.ただし,これはあくまで超音波ガイド下TAPブロックの話です.つまり,前腹壁で局所麻酔薬が拡がっていることを前提にしています.もし,元祖,盲目的TAPブロックはかなり背部よりで刺入します.よって,ひょっとすると局所麻酔薬が前腹壁でなく,後腹壁で拡がっている可能性があります.そうなると,また別の話になってきます.

2012年5月24日木曜日

インタビュー

インタビューを受けました。テレビではありません。学会用です。案外、恥ずかしいもんですね。カメラに向かって話すのは苦手だという先生がいましたけど、その気持ちがわかりました。あれれっ?うしろの超音波診断装置が違うんじゃんじゃないの?と気づかれた人,あなたは洞察力があります.浮気ではありません.良い物を作りたいという技術者を支えたい,それが僕の考えです.えっ?頭の毛がボサボサ?仕方ありません.先週金曜日からほとんど寝ずに原稿を書いていましたから,身だしなみという概念がなくなっています.へっ?靴を履いてないじゃないかって?床がキュキュと音がするから,脱いでいたんです.はっ?両手で股間を押さえてるって!仕方ないじゃないですか,手振りを交えてしゃべると,マイクに雑音が入ると言われちゃったんです.

GE,がんばってますね.

先日のブログで,針を強調して描出させる機能について触れました.そしたら,GEさんが突然,GEの針を強調して描出させる機能を見せてくれました.以前,使ってみたときは,そのリアルタイム性のなさに,こんな危険なハイテク技術は使えないと思いましたが,昨年からGEが超音波診断装置に搭載させたものはリアルタイムでしかも,強調して針を描出させる範囲が広い.これなら充分に末梢神経ブロックに使えると考えます.というか,名古屋大学はLOGIQeを早い段階で買いすぎた.今,LOGIQeは手術室の物置に誰にも相手にされず,眠っています.それくらい全てが使い物にならない.最新のLogiq Eなら使ってみてもよいかも.そう思っていたところに,「もうLOGIQeじゃ,なんも見えないから,M-turboもってきてもらっちゃった~」とichiko先生が麻酔科控え室に入ってきました.神経ブロックに必要なものも分からずに,LOGIQeを売っていたGEは,ユーザーに不憫な思いをせていることを反省していただきたいです.摘みをいじれば,神経ブロック用の画像になると考えていたら,大間違い.どんな新しいものを,彼らが作るのか見守りたいと思います.

人に優しくなれる方法を知っていますか?

人は自分の弱さを知ったときに,はじめて人にやさしくなれます.

先々週までのメール:pnbsiva先生,原稿を至急,送付してください.

先週はじめのメール:pnbsiva先生,原稿を大至急,送付してください.
先週のペインクリニック外来の張り紙:原稿を大至急送ってください.

先週末の電話:pnbsiva先生,5月21日朝9時までに原稿を送付してください.

今週月曜日のメール:pnbsiva先生,原稿が届いていまけど.いつになりますか?(丁寧語ゼロ)

先週の水曜日に風邪を引,風邪が直らないまま,先週の金曜日からほとんど睡眠をとらずに書き続けました.手術室麻酔,ペインクリニック外来,当直2回をこなしながら・・・,最後は自分が寝ているのか,原稿を書いているのか分からないトワイライトゾーンまで体験した.そして,先ほど,ようやく脱肛,いや脱稿.今回ほど,筆が進まない状況は、今までなかった.借金地獄の気持ちがよく分かった.取り立てられる恐怖,よく理解できた.この失敗で,きっと,僕は人に優しくなれる.誰しも,完璧にスケジュールをこなせる人などいない.調子が良いときもあれば,悪いときもある.

2012年5月22日火曜日

イラクからの留学は・・・

イラク人医師の末梢神経ブロック研修を引き受けて,いろいろ手続きをとってきましたが,やはり政情が不安定なこともあり,諸事情で日本への留学がなくなってしまいました.こちらももう少し早く動いてあげていればよかったと残念でなりません.

2012年5月21日月曜日

金環日食と大学病院の朝カンファレンス

大学病院の手術室は早い.冬になると、太陽を全く見ないこともある。太陽が昇る前に出勤し,太陽が沈んでも,手術室内にいる。それが麻酔科医の仕事.今日の金環日食が朝のカンファレンスの開始時刻と重なった。人生の折り返し地点を過ぎた僕は,金環日食が見たくなった.このような自然現象を見ずに仕事をする意味は、自分にとって何なのだろうと思ったからだ。むしろ,このような自然現象を体験してえるもののほうが,医師としての人間観に重要ではないかと思った.何も体験せず,ただ医は仁術とばかりに、自分を犠牲にした人が,病気の苦しみに悩む人に的確なアドバイスなどできないと思うからです.迷いに迷った挙げ句,最後は迷わずに,朝カンファレンスを中断して金環日食を見ることにしました.結果的にはよい判断だと思いました.みんなが笑顔で仕事をしている姿に気づいたからです.

2012年5月20日日曜日

見せることの重要性

自分の技術に衰えを感じた1ヶ月半でしたが,徐々にではありますが,感覚が研ぎ澄まされてきました.勝負画像に針を描出させる技術が戻ってきています.あれ以来,自分に教えを請うてきた人には,まず自分の手技を見せることをしています.できるだけやらせてあげようと思うのではなく,まずは,どれくらい上達すべきか実際に理解してもらい,その上で手技をしてもらうことにしています.習字と一緒,お手本なくして,上手な字は書けません.

蒔いた種が芽を出した?

2009年にAnesth AnalgにUSG-TPVBを出し,2011年に香港,アブダビ,2012年はベトナムで講演をしたからでしょうか,海外から見学のオファーがきています.ポルトガル,香港の麻酔科医から・・・もちろん,快く引き受けました.場慣れしなきゃ,世界には出られない.引っ込み思案じゃいけません.

2012年5月16日水曜日

なかなか

タイから臨床実習のために日本に来日されたWireena先生ですが、なかなか厚労省からの許可がおりません。来日、9日で許可が降りるという事前連絡を厚労省に確認したのに。医師免許証の発行で忙しいとのこと。来日日程まで教えてから事前確認したのにという思いがいっぱい.最初から言ってくれていたら,来日日程を遅らせたのに.これが,放射線による風評にも関わらず,日本にきてくれた外国人医師に対する日本国の対応なのだろうか?

現在も,超音波ガイド神経ブロック教育プログラムの問い合わせが時にあります.現時点では,彼女の世話だけに集中している状況です.落ち着き次第,1-2日コースを受け付けたいと思いますが,今しばらくお待ちください.


一緒にプレスキャンをしているところです.タイの麻酔レベルの高さを一緒に
いて感じます.基本に忠実で,知識も抜群です.

2012年5月14日月曜日

ハイテク技術には限界がある.

超音波機器メーカーがしのぎを削るハイテク技術には限界がある.そのために,あるレベルまで習熟したもの(プロ)は逆に,ハイテクを使わない.

たとえば,針の刺入角度が急峻になったときに,針の描出性が落ちてしまうことを防ぐために,超音波ビームの方向を変える技術がある.国内二大メーカーのGEもソノサイトも,この技術を持っている.GEのものは,フレームレートの問題でリアルタイムではなくなっている.つまり,モニターで映ってくる画像はすでに過去の出来事をみている.ターゲットに寸止めで針先をもっていきたいときに,この時間のズレは致命的.ソノサイトのものはリアルタイムですが,この機能は画面の半分程度でしか使えない。この機能を使いたいと思う領域が実は機能を使えない領域になっていたりする。だから,僕は評価を求められて使ったきり,ソノサイトの機能も一度たりとも使ったことがない.

また脳神経外科領域で使用されるナビゲーションシステムを超音波機器に導入する動きも海外では加速している.ナビゲーションシステムは迅速性に欠けるうえ,穿刺操作を自由度を奪ってしまう.
「プローブの位置はここで,プローブをこの角度に傾けて,針はこの角度で刺入すればよい.」そんな手技ができなくなってしまう.だいたい,脳外のナビゲーションシステムをみていれば,有益なようで,あまり有益でないことはよく分かる.下垂体腺腫のオペなどで,「ナビ通りだと,すでに脳幹をぶっさしていることになってるな.」なんて,脳外科医が言っていたりする.それ専用に開発されたものが,その程度なのに,付属でついてくる機能がよいはずがない.きっと,ナビゲーションシステムに翻弄される状況が出てくる.少なくとも,現状におけるナビゲーションシステムは,医療者の技術を制限する状況になる可能性が高い.

超音波機器メーカーには,ビギナーが安全に行えるハイテクと技術習熟者が必要とするものの両方の開発に目を向けてもらいたい.

傍脊椎周囲専用プローブ

脊椎・傍脊椎周囲専用のプローブが必要である.つまり,検査のためではない,治療のためのプローブが欲しいのだ.このサイズが傍脊椎専用としてベストかなと考えている。このプローブは本来,僕が駄目で使えないと主張しているメーカーのものである.たまたま,理想に近い大きさのプローブがあったので試してみた.しかし,現段階ではとても使えたものではない。治療専用とはとても言えない.その使えたものではない画質で行った胸部傍脊椎ブロックは,これまでの僕のアプローチを大幅に成熟させた.

昨今,海外メーカーは,超音波ガイド手技のハイテク技術を開発にしのぎを削っている.いかにビギナーが安全かつ確実に手技を行えるかという視点で・・・.しかし,結局は人間の脳が作り出す手技に勝るハイテク技術はない.あるレベルまで技術を習得した者(プロ)は,ハイテク技術を必要としない.検査のためではない,治療専用として考え尽くされたプローブ.ビギナーではなく,プロのために開発されたプローブ.超音波機器メーカーには,そのための開発を忘れてもらいたくはない.国内二大超音波機器メーカーには,すでに僕が考えているものを伝えた.どちらが先に市場に出してくるか,今後の動きが楽しみである.

2012年5月10日木曜日

軽度外傷性脳損傷とペインクリニック

もうすぐ東海北陸ペインクリニック東海地方会です.昨年,AA先生が中心?になってやった会からすでに一年が過ぎたと思うと,月日が経つのが早く感じます.昨年は会の幹事をしていた関係で,座長はしませんでしたが,今年は座長を任されることになりました.

症例報告を読んでいて注目したものが,軽度外傷性脳損傷です.ネットでもアメリカリハビリテーション医学議会が定義したものの和訳を読むことができます.定義は以下のようになります.
1.ある一定期間の記憶喪失 
2.事故の直前,直後の記憶喪失 *
3.事故発生時の精神状態の変化
4.一時的または恒久的な局所神経障害
それぞれについて,注意事項が書かれています.
昔はむち打ち,外傷後症候群,外傷性頭痛,心的外傷後症候群といっていた部類のものを定義づけたようです.WHOが2004年に定義していますので,恐らくは米国の戦争と関係があって,外傷後の帰還兵の状態から新しい疾患概念として,今まで放置していたものに名前をつけたのではないかと思います.ペインクリニックでは,交通事故の身体の各所の不調を訴え,精神的にも肉体的にも苦しんでいる患者さんが来院されます.この疾患概念ができたというものの,まだ治療が確立されたとは言えず,これからという状況.EBMとしては否定されている脳脊髄減少症との兼ね合いはどうなのでしょう.新しい疾患概念ができたことで,患者さんにとっては,誰も理解してくれなかった自分の苦しみを疾患として理解してもらえるので,良いことだと思います.

2012年5月9日水曜日

富士フィルムソノサイト

今日は、小田原にある富士フィルムの先端技術を開発するセンターで、富士フィルムソノサイトと会合を持ちました。ソノサイトの技術を見せてもらいました。我々の抱える問題,特に平行法での針の穿刺と描出は、数年後には簡単に解決されます。僕がいっている型が大事だといっていることも,無用の長物になること間違いなし・・・?ただし,神経ブロックでは微妙な角度調整がきれいな画像をえるために必要です.そのあたりをクリアした形にはなっていないのではないかと思っています.つまり,そのあたりは箸をつかって繊細に食事をとる我々と,ナイフとフォークでガツガツ食べる欧米人の差とも感じました.使ってみてから指摘していく問題かな?

2012年4月21日土曜日

どれくらいで技術は落ちるか?

超音波ガイド神経ブロックの技術を維持するには,どれくらいサボってしまうとだめなのだろう?

どうして,そんなことを考えるようになったのかと言えば,どうも自分の神経ブロックの技術が落ちているからだ.藤子先生に,勝負画像に一発で針を描出するようになれと、口酸っぱく言い続けた自分が,一発で画像に針を描出できない.これまでに全国の5人の麻酔科医を受け入れて,3ヶ月間のトレーニングに付き合ってきた(旭川医大のO先生は1ヶ月).彼らがいる間は,自分はほぼ手技をすることがなかった.しかし,彼らが去った後,自分で超音波ガイド神経ブロックをすると,物の見事に一発で画像の中に針を描出させていた.それなのに,藤子先生が去った後の自分は駄目だ.恥ずかしいくらい技術が落ちている.ウィレナに「これが日本の神経ブロックだ.」と言わしめるような手技を見せていない.

よく考えると,これまでは3ヶ月研修後,1-2ヶ月間隔を開けて、次の研修3ヶ月を受け入れてきた.その間は、自分の技術は落ちなかった.これまでと違っていたのは,旭川医大のO先生と昭和大学の藤子先生の間には,全く間隔が空いていないということ.つまり僕は4ヶ月,ほぼブロックをしてこなかった.それを考えると,4ヶ月,超音波ガイド神経ブロックをサボると技術は落ちるのではないかと仮説を立てたくなる.そして,4月に入り21日が経とうとするのに,未だに勝負画像に一発で針が映ってこない.失ったものを取り返す努力は並大抵ではないということがわかる.教育プログラムに参加した人をみると,一ヶ月に120から130本ペースでブロックをして,だいたい1ヶ月半から2ヶ月(経験数ゼロから始めたK先生と藤子先生は少し遅かった・・・)で勝負画像に針を一発で出すようになっていた.とうてい,このペースで僕一人がブロックをするのは無理なので,当分の間,技術が落ちたままだろう.

外傷で腕から大出血して暴れ狂う患者に暴れ狂った状態のまま,鎖骨下腕神経叢ブロックをして黙らせた(局所麻酔中毒にしたわけではない,鎮痛で落ち着かせた).腕を脱臼し,腕が挙上した状態のまま,座ることも寝ることもできない患者に立ったまま,腕神経叢ブロックをした.こうした神経ブロックは勝負画像に一発で針を描出させる能力があってこそ,できたもの.しばらくは,こんなことはできない・・・orz.いつ元に戻るだろう?

2012年4月20日金曜日

富国日本、サヨナラAA先生

富国日本を担うAA先生が、そのお努めのため、今日で僕との珍コンビを終了。彼女とのコンビにあぐらをかいていた自分。感謝でいっぱい。今度は、しっかりしなきゃと、心してます。AA先生の後は、僕を慕って?、いやいや、更なる飛躍を求めて、ここに来てくれたM先生。今日は患者さんの引き継ぎで、賑やかそうでした。M先生にも超音波ガイド手技を教えねばならず、これから大変です。

2012年4月17日火曜日

Don't make the skin awake to the needle insertion.

神経ブロックの教育プログラムを休止してから,医局員の数人にブロックを教えています.超音波ガイド神経ブロックで初心者が冒しがちな間違いを,先日取り上げました.その中でも,もっとも手技に影響を与える間違いは,皮膚に針の刺入を気づかせてしまうことです.つまり,針の刺入と同時に皮膚が動き,その結果として,プローブが動いてしまう.そうなると,勝負画像とは全く異なる画像になるばかりか,針も全く映らない.ここが直らないと,まともな手技にならない.皮膚に針の刺入を教えてしまう原因はフォームが悪いからです.つまり,姿勢.効き目のほうに重心がかかるような姿勢をとり,できるだけ身体の各部を固定しておくとよいでしょう.

2012年4月13日金曜日

Wireena先生との一週間

Wireena先生と一週間,病院ではずっと一緒にいます.英語のアウトプット練習にはものすごくいいです.この一週間で自分の英語のアウトプットが異常なくらい上達してくることに気づきます.もちろん,うまく表現できないこともあります.それでも,どんどんアウトプットしていくことで,英語がどんどん上達していきます.アウトプットが増えると,自然とヒアリング能力もあがります.

2012年4月12日木曜日

CFNBの落とし穴

周術期抗凝固療法の重要性から,人工膝関節置換術で持続大腿神経ブロックを取り入れる施設が増えていると思います.学会でも耳にするのは,関節可動域が大きくなるとか,リハビリが進む,もう片側の人工膝関節を患者がすぐにやってほしいと言うようになったと,良いことばかりが多です.ただし,やはり注意すべき点もあります.The Knee 16 (2009) 98-100で,持続大腿神経ブロックで大腿四頭筋の筋力低下により転倒し,創離開や人工関節周囲で大腿骨骨折を起こした5症例を報告しています.

3年間で3000件の人工膝関節術を行っている施設で,92%を硬膜外麻酔でこなし,ここ最近の流れから8%(250例)に持続大腿神経ブロックを行いはじめた,いわゆる持続大腿神経ブロックを導入開始してしばらくした施設からの報告です.

薬液は1回注入で0.5%レボブピバカインもしくは0.2%ロピバカイン15-20mlを使用していますが,持続大腿神経ブロックのレシピは書かれていません.discussionでは多くの文献にあるようなレシピを使っていたとは記載があります.1例にはクロニジンも添加しています.

60歳代2人,80歳代3人で特に合併症をもった患者ではありません.術後1-2日目に転倒をしています.状況は,シャワー中,ベットから起き上がったとき,トイレ中もしくはトイレに行こうとして.意識レベルが立ち上がった瞬間に落ちて転倒したわけではありません.つまり,持続大腿神経ブロックが原因ということ.そして,注目すべきはBromage scaleが全員,0もしくは1であったことです.そんなにmotor blockに関して,心配いらないと判断される状況だったわけです.

筆者らは,「非ブロック側の下肢が充分に動くために,まだブロック側は筋力が低下し,関節の固有感覚も戻っていないにも関わらず,患者が介助なしに歩けると間違った自信を持ってしまう.」と警告しています.こうしたトラブル以降,クロニジンは禁止,彼らは0.025%レボブピバカインで持続注入,ベットサイドに転倒に関する注意喚起のボードを設置,術後48時間は介助なしでの歩行を禁止,外科医とリハビリスタッフが運動機能が完全回復したと判断するまでは術後48時間内に動かさないように医療者を教育,運動機能が完全に戻るまでスプリント装具を装着,など工夫をされているそうです.

金鯱病院のH先生が今,持続大腿神経ブロックの導入に奮闘されていますが,これがよいアドバイスになればと思います.もう彼女と一緒にブロックをするのも,あとわずかです.

2012年4月11日水曜日

伏在神経ブロックの現状(3)

伏在神経がどこまで伸びているか,みなさんはご存知でしょうか?伏在神経がどこまで伸びているか調べた論文があります.Iowa Orthop J. 2011;31:231-5.
この論文によれば,16本の伏在神経(3つの枝)のほとんどは内踝まで終わります.16本中1本だけが足関節を超えて,足にまで分布しています.6%しか,足には分布していないので,足の手術のために伏在神経ブロックをする意味はないといえます.足関節手術までが伏在神経ブロックを行う意味があるわけです.ただし,伏在神経ブロック自体,成功率が高くないので,本当に伏在神経をブロックしたければ,大腿神経ブロックをしたほうがよいといえます.

2012年4月10日火曜日

Transabdominal pain

Wireena先生とTAPブロックの話をしていて,彼女の言葉にpainが登場してくるため,話が混乱.何度聞き直しても,pain. でも,しつこく聞いていたら,painではなく,planeだった.

伏在神経ブロックの現状(2)

2011年に,三つ目のアプローチが報告されています(Acta Anaesthesiol Scand. 2011 Sep;55(8):1030-1).内側顆レベルで,薄筋と縫工筋の腱膜の間で伏在神経が描出でき,この腱膜間に局所麻酔薬を注入する方法です.伏在神経が大腿筋膜を貫く前にアプローチをしており,ブロック成功率は13/14 (92%)とかなり高い.ただ,個人的には,膝蓋下枝infrapatellar branchがでる位置にバリエーションが多く,おそらくこの位置でも膝前面の皮膚の痛みを完全に取ることはできないのではないかと思う.伏在神経ブロックを何の目的でやるのかが大事なところだ.

2012年4月9日月曜日

Wireena先生との1年間が始まりました.

タイのWireena Kampitak先生との1年間がとうとう始まりました.彼女が1年半前に突然,僕にemailをくれたのがきっかけでした.僕の所で末梢神経ブロックの勉強がしたいということでした.僕がかなわなかった留学の夢を彼女は僕に託してきたのでした.彼女の夢を叶えてあげたいと思い,すぐにOKの返事を出しました.ただ,末梢神経ブロックの実習をするだけでは意味がないので,臨床研究を一緒にやろうということを条件にしました.それから1年半,彼女は日本語の勉強を一生懸命して,4月4日に来日しました.1年間という時間があるので,ゆっくりと授業も開きながら,神経ブロックを伝授していきたいと考えています.

一緒に写真を撮って思ったことは,タイでもVサインはするんだ!?ということ.
Vサインは日本のバレーボールのスポコンドラマが起源だと聞いたことがあるのですけど...意外でした.

実は、僕は彼女を一年近く,男性だと思い続けながら,メール交換していました.日本人が全然勝てなかった有名なボクシングチャンピオンでKampitakという人がいたからです.その後,facebookで,Wireenaが女性であることに気づいて,びっくりしました.

医局を国際化させることが,医局の雰囲気をよくします.non-native同士,一生懸命,英語で会話する.医局員が楽しそうに彼女と会話している姿をみて,彼女を連れてきて良かったと思いました.

伏在神経ブロックの現状(1)

大腿神経の末梢枝で,完全な知覚枝,伏在神経をブロックする方法がいくつか報告されています.一番有名なのは,カナダのDr TsuiのSubsartorius approach.これは縫工筋の裏を大腿動脈と一緒に走行する伏在神経をブロックするものです.この方法は超音波画像が認識しやすく,やりやすいのですが,成功率は77%.もう二つ目はperivenous approach.これはご存知にように,脛骨内側顆のやや尾側レベルで大伏在静脈を描出して,その周囲に局所麻酔薬をばらまく方法です.このレベルになると,分枝が激しく,神経を描出することも困難です.

2012年4月8日日曜日

癌手術後の予後に影響するものは...

ASAのニュースレターのSEE Programで面白い問題が出ています.癌手術後の予後を最も改善しそうなものはどれかという問題で,麻薬,全身麻酔,非ステロイド性抗炎症薬,周術期同種輸血の4つ選択肢があります.

麻薬が癌の発生に関与するという直接的な証拠は人ではありませんが,液性免疫,細胞性免疫に影響を与えることは証明されています.動物実験から,周術期の麻薬の使用が癌の再発に関与している可能性が示唆されています.フェンタニルやモルヒネはNK細胞の活動を抑制してしまいます.一方,区域麻酔を全身麻酔に併用することで,乳がんや前立腺癌の再発率が減少します.ただし,十把一絡げに癌とした場合には,区域麻酔の有無で癌再発に有意差があるとは言えません.

非ステロイド性抗炎症薬はCOXを阻害します.癌細胞は宿主の細胞性免疫から逃れるために,プロスタグランディンを分泌します.COX2阻害剤は,癌の増殖や成長因子を抑え,癌細胞のアポトーシスを誘導し,周術期の細胞性免疫の抑制を抑えることで,癌の進行を抑えることが言われています.乳がん細胞にはCOX2が過剰に発現しているので,女性がCOX2阻害剤を長期服用することで乳がんのリスクが減るかもしれないと言われています.米国のFDAは,家族性大腸腺腫症など大腸癌のハイリスク群にCOX2阻害剤であるセレコキシブを使用することを承認しています.

同種輸血は免疫を修飾し,癌の再発に影響があるかもしれないことは,随分昔から知られています(Transfusion-Associated Immunomodulation :TRIM).輸血によりヘルパーT細胞,NK細胞が減少します.TRIMの機序は完全には分かっていませんが,輸血血液内の白血球が関与していることが動物実験の結果から言われています.TRIM自身が癌の発生に関与するのか,TRIMの結果生じる白血球減少が関与するのかは分かっておりません.ただし,癌の再発と輸血の関係はコンセンサスがえられているわけではありません.輸血をした人の予後が悪いという事実があり,それがTRIMによる影響かもしれませんし,輸血をするほど癌が進行した状態の患者というだけ(交絡因子)なのかもしれません.

2012年4月7日土曜日

横浜市立大学医学部附属病院 区域麻酔ワークショップ

横浜市立大学医学部附属病院麻酔科の区域麻酔ワークショップに講師として招待されました.4月ということもあり,新入医局員の先生達向けに,上肢,下肢,体幹のてんこ盛りプランでした.末梢神経ブロックは大腿神経ブロックなど一部はすでに導入され,持続大腿神経ブロックを膝でおこなっているということでしたが,末梢神経ブロック全般をやるには至っていないということでした.各末梢神経ブロックの描出方法を中心にしたのですが,指導的立場の先生方はどんな末梢神経ブロックをどの手術でおこなっていくかという話のほうが興味を持っていらっしゃるようでした.ちょうど,今年の日本麻酔科学会でソノサイトが企業共催で企画しているのが,まさにそれです.つまり,どう末梢神経ブロックを使っていくか?今後,そうした内容の講習会も必要となってくるのでしょう.解剖さえ理解していれば,「自由」.それが僕の答えです.

2012年4月3日火曜日

トラムセット市販直後調査結果

ペインクリニックに従事している先生にはトラムセットの市販直後調査結果(6ヶ月)のお知らせが届いているのではないでしょうか.個人的には,幻聴,幻視を経験された患者がいらっしゃったので,同様の副作用報告がなかったかに興味をもって拝読しました.この調査結果によると,幻聴,幻視の報告が365例中4例ありました.結構あるもんなんだと思いました.

調査結果には乗っていませんが,「使用上の注意」の改訂のお知らせに,意識消失に関する注意喚起があります.4例報告されており,服用開始1週間以内に発生しております.はじめの一週間は,車の運転はしてもらわないようにしたほうがよいかもしれません.

トラムセットにより慢性痛に苦しむ多くの患者さんのQOLが上がっているのを実感していますが,これまで以上に患者さんへの説明が必要かと思いました.まだ読んでいない方は市販後調査結果をに目を通されるとよいかと思います.

2012年3月31日土曜日

閉鎖神経ブロックはクラスター爆弾方式からトマホーク方式へ

超音波ガイド閉鎖神経ブロックはこれまでいくつものアプローチが紹介されてきました.僕自身はFujiwara's approachを好んでやってきました.このアプローチはすぜに閉鎖神経が前枝と後枝にわかれ,異なる位置にいます.前枝は恥骨筋-長内転筋-短内転筋でできるベンツマークの中心,後枝は短内転筋-大内転筋の間にいます.また,各枝からも細い枝がでており,ひとまとめにブロックすることは不可能でした.クラスター爆弾で周囲に散らばる敵をやっつけるように,針を繰り返し刺しなおしては,筋間に局所麻酔を注入する,これを繰り返さなければなりません.

しかし,Ahmad Muhammad Tahaが報告したアプローチはより近位のアプローチです.ただ,Fujiwara's approachのプローブを45°尾側に傾けて,超音波ビームを頭側に向けるだけ.これで恥骨筋の下に外閉鎖筋が出てきます.恥骨筋と外閉鎖筋の筋間には前枝後枝が一緒にいます.そのため,ピンポイントで前枝後枝を同時に遮断することができます(100%).閉鎖神経ブロックもクラスター爆弾方式からトマホーク方式に変わったと言っても過言ではありません.

ちなみにAhmad先生はムスリムだと思われます.ムスリムは自分の名前-父親の名前-祖父の名前という形で本名を名乗ります.よって,彼の父親はMuhammadさん,祖父はTahaさんなんだとわかります.どうして,そんなことを知っているか?今,イラクの麻酔科医を受け入れるための書類を作っているからです.

2012年3月30日金曜日

藤子先生のブロック数 新記録達成!!

昭和大学横浜市北部病院の藤子ちゃんこと,F先生のブロック数です.傍脊椎ブロック,肋間神経ブロックは片側で1例と数えています.TAPブロック,腹直筋鞘ブロックは1患者1例として数えています.blindは体表ランドマーク法,NSGは神経刺激法,記載のないものは超音波ガイド法です.

プログラム開始当初は非常にゆっくりとしたペースで,まずは末梢神経ブロックを組み込んだバランス麻酔を知ってもらうことからはじめました.僕自身は,350例くらいの手技が行えたらよいだろうと考えていました.ところが,蓋を開けてみると,彼女は,合計で475例の超音波ガイド下手技を行っていました.鹿児島大学YT先生の数を抜いた.彼女の場合,全くの初心者からのスタートで,僕の言葉足らずのところもあり,レベルアップに時間がかかりました.はじめは勝負画像にならない画像で穿刺をしてしまい,その後で針を出そうとする癖がありました,また刺入途中に針を曲げてしまう癖もありました.症例数を増やして,経験数を増やすことで,そうした穿刺も徐々に減り,最終日の浅腓骨神経ブロックでは,一発で勝負画像に針を描出させ,ミリ単位の非常に繊細な運針でブロックをした姿をみて,僕は「ヨシ!合格」と太鼓判を押しました.これで胸を張って、北部病院に送り返すことができます.彼女自身は,最後の1ヶ月,僕から厳しく注意を受けたので,自分に進歩がないように思っているかもしれません...厳しすぎたかな???


胸部傍脊椎ブロック 79例(単回注入21例,カテーテル挿入58例)
胸部傍脊椎ブロック (blind) 2例
腹直筋鞘ブロック 25例
TAPブロック 72例(Subcostal 35例,Posterior 37例)
腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経ブロック 15例
陰部大腿神経大腿枝ブロック 8例
肋間神経ブロック 4例

腕神経叢ブロック
斜角筋アプローチ 5例(単回注入 4例,カテーテル挿入 1例)
鎖骨上アプローチ 5例(単回注入 1例,カテーテル挿入 4例)
鎖骨下アプローチ 9例(単回注入 8例,カテーテル挿入 1例)
腋窩アプローチ 2例

腰神経叢ブロック 23例
大腿神経ブロック 25例(単回注入 22例,カテーテル挿入 3例)
腸骨筋膜下ブロック 2例
閉鎖神経ブロック 17例
外側大腿皮神経ブロック 13例

坐骨神経ブロック
傍仙骨アプローチ(blind) 19例
殿下部アプローチ 1例
前方アプローチ 1例
大腿中間アプローチ 1例
膝窩部アプローチ 16例(単回注入 15例,カテーテル挿入 1例)
浅腓骨神経ブロック 4例
深腓骨神経ブロック 4例
脛骨神経ブロック 4例

星状神経節ブロック 29例
頸椎椎間関節ブロック 9例
(頚神経後枝内側枝ブロック熱凝固含む)
頸神経根ブロック 2例
舌咽神経ブロック 1例
眼窩下神経ブロック(blind) 2例
前篩骨神経ブロック(blind) 2例
大後頭神経ブロック 2例
腰椎椎間関節ブロック 8例
肩関節ブロック 3例
膝関節ブロック 2例
浅頚神経叢ブロック 9例
深頚神経叢ブロック 7例
仙骨硬膜外ブロック 1例
スカルプブロック(blind) 20例

腋窩静脈カテーテル留置 20例

藤子ちゃんのプログラム終了

藤子先生が一月に僕のところに来て、三ヶ月。あっという間に時間が過ぎました。超音波ガイド下ブロックの経験ゼロからのスタートで、乗り越えるべき課題がたくさんありましたが何とか、克服してくれました。次からは地元で一人でブロックをしていくことになります.僕が教えた内容が昭和大学横浜市立北部病院の麻酔に貢献できると幸いです.藤子先生が,このブロック研修で唯一,地元に持ち帰れないものがありました.それは亭主になる人でした.残念orz.



2012年3月27日火曜日

肋間神経ブロック前方アプローチ

下位レベルの肋間神経は肋骨弓を横切って,上腹壁に分布します.よって下位肋間神経をブロックすると上腹部開腹術の鎮痛になります.下位肋間神経を前胸壁でブロックする方法は2009年に僕が解剖死体研究をもとに検討し,日本麻酔科学会学術集会で報告しました.

この手法は,針先が壁側胸膜に接するところまで刺入するので,平行法の高い技術が要求されます.僕の神経ブロック教育プログラムでも最後の方にしかやらせていません.針を描出させる能力のないものが行うと,胸膜穿刺によって気胸を起こす危険性が高いからです.つまり,平行法がしっかりとできるかの試金石にもなります.昨日,藤子先生に肋間神経ブロック前方アプローチを開腹術でやってもらいました.多少のアドバイスはしたものの,見事に針を描出し,針先を壁側胸膜面にもってくる姿をみて,もう横浜の病院に戻っても大丈夫だろうと確信しました.

2012年3月25日日曜日

infraclavicular blockは1回注入でok,それでも・・・・

腕神経叢ブロック鎖骨下アプローチでは,内,外,後神経束が腋窩動脈周囲に描出されます.僕が始めて出会った鎖骨下アプローチの超音波ガイド法は各神経束に10mlずつ注入するというものでした.

Anesth Analg 2010;111:1325-27では腋窩動脈の背側に35mlをシングルショットする場合と15mlを腋窩動脈頭側に,20mlを背側に注入するダブルインジェクションを比較しています.それによると,オンセット,ブロック施行時間,刺入経路の数,ブロック成功率に有意な差があるとはいえませんでした.

Anesth Analg 2010;110:1480-5では,後神経束への1回注入と各神経束に注入する三回注入を比較しています.ここでも,ブロック施行時間に差があっただけで,成功率に有意な差はあるとはいえませんでした.

こうなると,自分が行ってきた三回注入法は時代遅れなのかもしれません.ただし,僕は3回注入法を辞める気がしません.なぜなら,後神経束に一気に針先を運ぶことが,針先の描出性の悪さのために難しいからです.超音波診断装置は二つの物質の音響インピーダンスの差でもって二つの隣り合う物質を違うものとして描出してきます.局所麻酔薬を刺入経路の途中で注入すると,音響インピーダンスの差が大きくなり,針先の描出性が上がるのです.小胸筋の下で薬液をいれ,そのまま内側神経束,あるいは外側神経束に薬液を拡げ,その後に後神経束にアプローチしたほうが遙かに安全にブロックが出来ます.

2012年3月24日土曜日

ブロック針の刺入について

ブロック針の駄目な刺入3つについて解説します.

1.プローブ直下に刺入点がある場合
できるだけプローブの際で刺入しようとして,プローブの真下で刺入してしまう人がいます.プローブの真下で刺入すると,刺入角度の調整ができません.刺入角度を付けようとすると,針のシャフトで,テコのようにプローブを押してしまいます.その結果,勝負画像がずれてしまいます.プローブの際と言っても,プローブの真下に刺入点を持ってこないようにしてください.僕は通常5.0-20mmはプローブから話しています.



2.穿刺した瞬間に本来の刺入経路から逸脱してしまう場合

皮膚のたるんだ高齢患者に末梢神経ブロックを行う際によく見られる失敗です.いわゆる「針を刺したことを皮膚に教えてしまっている.」状況です.正しい刺入点を選んだつもりが,皮膚がたるんでいるために刺入した瞬間に皮膚がずれてしまい,走査面から針が逸脱してしまうのです.これは針を刺入する前に,針を持つ手の薬指で,刺入点周囲の皮膚にテンションをかけておくことで防ぐことができます.
3.針のシャフト添えた指が原因で針を曲げてしまう場合

通電刺激針のシャフトに指を添えてしまうと,得てして針を曲げてしまいます.指を添えても,まっすぐ針を進めるだけであれば針は曲がりません.針を曲げてしまう原因は,刺入経路の途中で針の刺入角度を変えようとするためです.針は弧を描いた方向に曲がって刺入されていくので,絶対に走査面上に針が乗りません.このような把持では平行法で針は映りません.基本的に通電刺激針のようにシャフトが細い針は直線的に動かす必要があります.
通電刺激針のようなシャフトが細い針は、シャフトに指を添えずに把持し,シャフトが曲がらないように,直線的に刺入していきます.刺入角度を変えたいときは,一端,皮下まで針を引き抜き,そこで角度を変えて,再度,まっすぐ刺入していきます.決して,刺入経路の途中でシャフトに力を加えても上手くいきません.針が曲がるだけです.

2012年3月23日金曜日

名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム第5回打ち上げ

昭和大学横浜市立北部病院から超音波ガイド神経ブロック教育プログラムに参加された藤子ちゃんこと,F先生の打ち上げを本日,行いました.藤子ちゃんのリクエストで焼き肉となりました.AA先生がこれまた素敵で,大人な雰囲気の焼き肉屋をチョイスしてくれました.お肉がとてもおいしくて,三人で会話することなく,黙々とお肉を焼き続け食べてしまいました.僕から「針先を映せ,映せ」と言われ続けた藤子ちゃんは,最後に「針先」というデコTシャツを作ろうかと思っていたそうです.ここ2週間は,千本ノックならぬ,ブロックノック状態で藤子ちゃんを追い詰めてみましたが,ひょうひょうとやってのける藤子ちゃんはマイペースの段取りワル子.「この瞬間,この刺入で一発で決める」と言ったゾーンに入ることが未だないですが,技術的には充分な域に達してきています.もう一段階,レベルを上げられるように最後の一週間で仕上げます.

超音波ガイド神経ブロックは穿刺前に勝負がついている!!

僕はかねがね,「超音波ガイド手技では穿刺前にすでに勝負がついているのだ」と彼方此方の講演で話しています.弓道が矢を射った瞬間には,矢が的に当たるか,当たらないか決まっているのと同じで,ブロック針を刺入した時点で勝負がついているのです.そして,弓道が矢を射るまでの過程を大事にしているように,超音波ガイド手技でも刺入するまでの過程が大事なのです.

1.正しく楽な姿勢でやるためのテーブル高さの調整(これは高めが基本).
テーブルの高さ調整がうまくできると,体幹,肘,手が固定され,プローブ固定がしっかりしますので手技中にプローブが動いて,画像が変わることはありません.

2.プレスキャンは本番さながらの姿勢で行う.
自分の立ち位置,肘の高さ,手の位置,超音波診断装置の位置すべて、本番さながらの状態でプレスキャンを行います.よく適当にプローブを当てて,画像をみてからブロックをしようとする人がいますが,それでは本番はうまくいきません.

3.勝負画像と刺入経路を見極める.
本番さながらの姿勢で,勝負画像を出します.勝負画像とは誰もが手本と思えるようなきれいな画像です.ぼやけた,誰がみてもオリエンテーションがつかない画像で勝負するのは、失敗に終わります.そして,刺入経路のイメージも大切です.刺入経路がイメージできると,勝負画像が左右に調整されて,さらに洗練された勝負画像になります.ゴルフで言えば,芝のめを読めということでしょうか?

4.刺入点を見極め,まっすぐに刺入する.
ここまで来たら,ブロック針は進めるか,引き抜くかしかないはずです.針が勝負画像に出てこなかったら,さっさと刺入点を変える.さっさと変える見極めがとても大切です.時にほんのちょっとの微調整で針が描出できることがあります.ほんのちょっとの微調整で針がきれいに映らないときは,さっさと仕切り直したほうが、結果的に早く手技が終わります.悪い刺入点のままで手技を続行しようとする人は,途中で針に余分な力をいれて,針を曲げてしまいます.針は曲がった弧の方向に向かって進むので平面上に針全体がのらず,プローブを動かしたところで,針は描出されません

ここまでの流れが型であり,手技に習熟した人は,この型を瞬時に行います.それが間として感じられ,独特の感覚があります.よって,技術的に充分なレベルかどうかの判断は針を刺入する前に見当がついてしまいます.

2012年3月16日金曜日

合点がいかぬ・・・

日本ペインクリニック学会誌2012,vol.19. no.1で心臓手術後の下肢のコンパートメント症候群を静脈内局所ブロックで疼痛コントロールした報告が載っています.これがどうも納得がいかない.なぜなら,右足関節の背屈がコンパートメント症候群によってできず,感覚障害も最後まで足背と足趾に残ったとしているのに,考察では脛骨神経障害が主としている.何故だろう???

2012年3月15日木曜日

Golden Rule of 24

 当大学病院でもMRI対応手術室以外の全部屋にデスフルランの気化器が装備され,3月5日から使い始めています.その覚醒の早さと質に驚くばかりで,抜管後に自分の病理組織の結果を主治医に質問する患者さんもいました.TIVAで個人差を見ながら覚醒の質にこだわっていたのがなんだったのかと思うくらいです.
今日はデスフルランの販売元であるバクスターによって名古屋地域におけるデスフルランの講演会が当大学病院で開催されました.急遽決まったことらしく,あまり宣伝が上手く行き渡らなかったようです.講師は,ドイツの先生で韓国に来たついでに日本の数カ所でデスフルランの紹介のために来日された先生です.彼のtake home messageとして,Golden Rule of 24というのがあります.デスフルラン濃度×Total flowが24を超えると,喉頭痙攣や頻脈や高血圧などの副作用が現れるので注意しろというものです.

紹介された使い方は,気管挿管後,Total flow 3.0 L/minで8%にすると,2分で呼気デスフルラン濃度が4-5%になるので,その後はTotal flowを0.8 - 1.0 L/minで8%に設定しておくと呼気デスフルラン濃度が維持されるそうです.手術終了後は10L/minにTotal flowを挙げて,あっという間に覚醒というものでした.

覚醒の質が高い分,鎮痛が重要になります.講師の話では脳神経外科手術以外はレミフェンタニルは使用せず,基本はフェンタニルを使用して,術後鎮痛にもつながるような術中投与をするということでした.デスフルランが国内に導入されて,再びフェンタニルに脚光が浴びるといいなぁと思います.

Aftermath of the perioperative Catastrophe

Anesth Analg 2012, volume 114, Numver3で患者の術中死など大惨事に巻き込まれた麻酔科医の精神的な問題を取り上げています.大惨事に巻き込まれた患者自身が一番の犠牲者ですが,それに巻き込まれた麻酔科医やその後,その麻酔科医に麻酔を担当してもらった他の患者さんも犠牲者となります.大惨事に巻き込まれることで麻酔科医はうつになったり,自信を喪失し,転科や最悪の場合,自殺することにもあるそうです.大惨事に遭遇した麻酔科医のケアの重要性を訴えています.すぐに仕事に復帰させることが正しいかも含めて考えなければなりません.

僕自身も患者の術中死や術中死寸前の段階までいった大惨事に遭遇したことがあります.やはり,しばらくは自身を喪失し,仕事に集中できないことがありました.ただ,僕の場合は、自分を育ててくれた心臓外科医の言葉がいつも心に残っています.原因はなんであれ,患者が手術中に死にそうになったときのために麻酔科医がいるのです.そうした大惨事に巻き込まれた経験が次の患者の命を助けます.そう考えながら,僕は心の中に生じた暗雲を消し去るようにしています.

2012年3月13日火曜日

なんのブロックでしょう?

さて,これはある神経をブロックしようとしたときの超音波画像です.何のブロックをしようとしていたか分かりますか?担当者の話によれば,効果はばっちりだったようです.僕の話を聞いたことがある人はわかると思います.これはニュートンのリンゴみたいなもんです.

2012年3月12日月曜日

LWWは問題外!!

LWWのホームページからCurrent Opinion in Anaesthesiologyを3年契約で読んでいました.まだ契約うが過ぎていないにも関わらず,自分のアカウントから記録が抹消されていました.これで3回目.ホームページが一新される度,あるいはある日突然.今年は全く雑誌が届かないのでおかしいなと思って確認したら,案の定,これです.すぐにカスタマーサービスセンターにメールで問い合わせをしました.自分のアカウントナンバーを告げたにも関わらず,再度メールで旧住所と新住所,そしてアカントナンバー教えてくれと言ってきました.開いた口がふさがりませんわ.

NYSORA Asia 2012

集合写真がフェイスブックでアップされたので,ダウンロードさせて頂きました.ここでアップしておきます.

2012年3月11日日曜日

DIYに初挑戦:ゴミ箱に悪戦苦闘

薪棚を作ろうと行動にでました.その前にウォーミングアップのつもりでゴミ箱を作ることにしました.妻が猫がゴミを漁るので,ゴミを二階のベランダにおいていると言っていたからです.東京の下田材木店でネットで注文しました.本来は自分で図面を引かないといけないのですが,親切にも以前描いたという図面を送っていただき,その横幅を大きくしたデザインで図面を描いてもらい,それで木を切って送ってもらいました.木は外装用に防腐処理をした木の板です.
今日,朝から2-3時間程度でできるだろうと高をくくって作業に入りました.ところが,図面をみてもどう組み立てて良いか分からない.ようやく分かったと思って,インパクトドライバーで木ネジを打ち込んでいくと,どうも板同士が合わない.結局,自分で図面を描かなかったために作業手順が全く掴ませませんでした.木ネジを打ち込んでは抜くを繰り返すうちに,安物インパクトドライバーの充電も切れてしまいました.藤子ちゃんを喫茶マウンテンに連れて行く約束があったので,一端作業を中断しました.
喫茶マウンテンから帰ってからは妻も参加して,ああだこうだと言いながらなんとか3面までく作りました.板も木ネジを打ち込んでは抜きを繰り返したものだから,穴だらけ.最終的には,夕方4時近くになって雨が降り出したので作業を終了としました.
インパクトドライバーだけあればできると考えた自分がバカでした.いろんな道具を揃えないときっちり板と板を合わせて木ネジを打ち込みことはできないと反省しました.

2012年3月10日土曜日

国際色豊に

4月以降は海外の麻酔科医に門戸を開き,末梢神経ブロックのトレーニングを行うことにしました.4月からタイの麻女と一緒に臨床研究をしながら教育していきます.続いてイラクの麻女もお引き受けすることにしました.4月以降,とても賑やかになりそうです.彼女たちに待っているのは,名古屋登山こと,喫茶マウンテンに違いありません.

2012年3月9日金曜日

薪棚の自作に挑戦

これまで薪棚を大工さんに作ってもらっていましたが,自分でも作って見たくなりました.2年分の薪を集めるには薪棚はまだまだ足りない.セルフヘアカットで髪なら自分で切ってしまえ的な楽天的な考え・・・?とりあえず,自分なりに設計図を作成し,それをもとにジグソー兼用の電動ノコギリ,ツーバイフォー材2mのものを12本,基礎石4つ,コースレッド75mm,ペンキとしてオスモカラーと刷毛をネットで注文しました.上手にできたら報告したいと思います.その前に依頼原稿をまだ書かないといけません.

これって何ですか?

アブダビの5つ星ホテルにもありました.ベトナムの5つ星ホテルにもありました.エレベーターの前に皿の中に砂が入っています.アブダビでは朝一番にみると,必ずホテルの紋章が刻まれていましたが,午後にはみんなが触ったあとがあります.ベトナムでも,指の後がありました.これって何ですかね?

2012年3月8日木曜日

我が一門を日本麻酔科学会総会に!?

名古屋大学末梢神経ブロック教育プログラムの一門を今年度の学術集会ワークショップに送り込むことにしました.昨今,名ばかりインスラクターがワークショップにいることが問題視されていました.つまり受講者より経験数と技術が足りていないインストラクターがいることに受講者からクレームがありました.次回の学術総会に関して,インストラクターの推薦状が僕の所に届きましたので,僕が教育してきた人を推薦させていただきました.今回は,GEとソノサイトが同じ日に企業協賛で企画を立てます.当然,インストラクターが足りなくなります.そうしたときに,名簿に載ってしまった名ばかりインスラクターでワークショップが成立するかが,別の意味で注目に値します.学会の末梢神経ブロックワークショップの名簿には掲載されていない我が一門がインストラクターとして採用されるか静観したいと思います.

ツンツルテン

金鯱病院でのことです.X線を防御する鉛のエプロンを付けていると,そのエプロンがあまりに小さかったために,藤子先生が僕に言った一言.

藤子:「先生,ツンツルテンですね.」
僕:「・・・・・・・・?」

ツンツルテンは頭が禿げている様を言うものとばかり思っていました.そこで藤子先生に,頭が禿げているとツンツルテンと表現するのだと伝えたところ,洋服の丈が短いときに使う言葉だと彼女は言い張りました.その場にいた病院関係者も,ツンツルテンは頭が禿げているときに使う言葉だと僕と意見が一致しました.多勢に無勢,藤子先生は何も言わず,引き下がりました.しかし,これは標準語を知らぬ無知な田舎者が生粋の標準語圏に済む女性に「標準語を知らぬやつめ」とからかい,逆に自分が標準語に無知であることを証明してしまったようなもの.家に帰って,日本語俗語辞書で調べてみると,ツンツルテンは確かに「丈が短い洋服を着ている様をからかったり,自嘲するときに使う言葉」と書いてあります.そして,坊主頭や一文無しをさしていう地域もあるが,つんつるてんと語感のイメージから後付けされたもの.」と記載があったのです.やっぱり,横浜の人が違うわ~~と感心.

ナイスなファントム

ファントムでよいものを見つけました.NYSORAグループの発案したものかは分かりません.豚肉で豚の腱の部分を巻いて,それをラップで全体を包み,最後に底と側面を手術室のキャップで包みこんで側面をテープでぐるぐる巻きにしたものです.腱がまるで坐骨神経のように描出されます.
ちなみに気になったのは平行法において走査面を自分の正中と直交するようにして穿刺させていることでした.アドバイスはしませんでしたが,基本が間違っている.

2012年3月7日水曜日

新しいコンベックスプローブの開発

僕は以前から,今のコンベクスプローブとマイクロコンベクスプローブの中間の大きさが絶対に麻酔科領域には必要だと国内の超音波メーカー各社にヒントを与えてきました.しかし,どこも動こうとはしません.

Dr Philippe Gautierも新しい傍脊椎ブロックのアプローチを僕に見せてくれました.僕のアプローチは横突起より外側で内肋間膜を貫くものです.彼は僕のアプローチよりやや尾側にプローブを置き,より針を急峻な角度でアプローチするというものでした.このアプローチではカテーテルが抜けてしまったり椎間孔を介して硬膜外腔にカテーテルが入ることを防ぐことが可能というのが彼の主張.彼のアプローチの問題点は針の刺入角度が40度と急峻なため,針が映らないこと.僕はhyperechoic flashで確認することで,硬膜外腔迷入を防いできましたので,彼がどの程度僕のアプローチを理解できているか不明です.ただし,肩の動きかた次第でカテーテルが抜ける可能性は否定できません.どちらのアプローチにするにせよ,傍脊椎周囲のブロックにおいて,僕がこれまで必要だと言ってきたプローブが必要になってきます.恐らくは,先に国内で麻酔科領域に持ってきたメーカーが勝者になるものと思います.

2012年3月6日火曜日

肩も手もやられていたら・・・

肩から手までが手術範囲の場合,超音波ガイド法ではlow interscalene approachで僕は対応していました.そしてinterscaleneだけでなく,subraclavicular approacの位置でも腕神経叢が局所麻酔薬に囲まれていることを確認していました.

Dr phillpe Gautierが神経刺激ガイド法で説明していたことですが,この場合,斜角筋間アプローチと腋窩アプローチを神経刺激ガイド法では組み合わせていたということでした.超音波ガイド法で,low interscaleneをしようとすると,腕神経叢の中や手前を肩甲上動脈が横切ってくるために,上手くアプローチするのに苦労するケースがあります.そんなときの代用として,彼の戦略は使えるなと納得しました.

2012年3月5日月曜日

末梢神経ブロックの善し悪し(選択)を議論する際の注意点

様々な末梢神経ブロックが超音波ガイド法でできるようになった今,局所麻酔薬の使い方,アプローチの選択など人によって様々なです.そのときに注意しなければならないのは,話し手が自分の手法を
Anesthesiaを目的にしているものなのか,Analgesiaを目的にしているものなのか明確にしなければなりません.
ブロック単独で手術を遂行するのならAnesthesiaです.単にバランス麻酔の中に組み込むのならAnalgesiaです.それによりとらえ方が変わってきます.たとえば,肩関節手術をAnesthesiaとしてブロックをする場合,遮断域を完璧にするためには浅頚神経叢ブロックを腕神経叢ブロックに組み込まなければなりません.しかし,全身麻酔にブロックを併用する場合は術中の不完全遮断はOKで,術後鎮痛として充分に機能してくれたらよいわけですので,腕神経叢ブロックだけで済んでしまいます.今回のNYSORA asiaでも傍脊椎ブロックで同様な質問があり,「Anesthesiaなのか,Analgesiaなのか.」とKarmakar先生が問いただしていました.同じ土俵で相撲を取っていない状況での議論は注意しなければなりません.

NYSORA asiaのワークショップ

各facultyがどれくらいの意気込みで各ブースを担当しているかよくわかります.デーブルのシートはマジックでいろいろと書きまくっています.デーブルだけではありません.スキャンさせてもらうバイトさんにもマジックで書きまくります.そのためにバイトさんもグルグルまわります.一度,そのブースの説明で身体を使ってしまうと,もうその身体に線を引けないからです.こうした情熱的なワークショップは日本ではやっていないですね.

コンパートメント症候群を理由にカテーテルを断られたら・・・

TKA術後のコンパートメント症候群を懸念して,持続大腿神経ブロックを断る整形外科医も世界にはいるようです.そのとき,どう対応すべきか?

持続大腿神経ブロックはanalgesia程度の低濃度局所麻酔薬の間欠的投与(PCA)で対応する.NYSORAチームは0.2%ロピバカイン5ml/hの5mlボーラス/hと言っていましたが,Dr. Philoppe Gautierは本当に間欠的投与で持続なし.
そして,最も大切なことはbreakthroug painを消さないことだということでした.つまり、通常の鎮痛でコントロールできない痛みを患者が訴えたときに,その痛みを簡単に対処してはいけないということ.コンパートメント症候群などの他の原因をしっかりと検索することが大切だということでした.なるほど,納得!!

2012年3月4日日曜日

ワークショップ終了

ワークショップが終了しました.僕は二日目の担当でした.ベトナム人麻酔科医に絶えず,ペースを握られ,しかもプローブの持ち方を何度注意しても変えない彼ら.仕舞いには説明するのが疲れてしまいました.各国で少しずつ発音が違います.特にTuohy needleが通じないことがしばしば.僕も発音が悪いので何とも言えません.それでも,やっぱり他国の人と接する楽しさはやめられません.もっと,もっと自分の英語を磨きたいを思いました.いつも思うだけで終わってしまうのだけど.今回は,神経刺激ガイドのワークショップに積極的に参加し,facultyがどんな英語表現をしているのか,どんなことを言っているのかに注目して聞いていました.如何にインストをするか.そういう面でみると,いろんなことを学ぶことができました.
みんなで記念撮影を終えた今,心地よい疲れが残っています.

TKAでの坐骨神経ブロックを嫌がられたら・・?

日本の整形外科医の多くは坐骨枝経ブロックを極端に嫌がる話をしたら,イギリスでも,ベルギーでも同じ状況があるようです.そして中には理解をしめす整形外科医がいることも同じ.
では,整形外科医の要望と麻酔科医の要望の両方を満たすためにはどうしたらよいか?

TKAでの神経障害の多くは総腓骨神経ブロック,特に腓骨頭のところで浅腓骨神経を切ってしまうことによります.よって総腓骨神経の機能だけを温存させてあげれば良いわけです.坐骨神経が総腓骨神経と脛骨神経に分離したレベルで6ml程度の局所麻酔薬で脛骨神経だけ遮断すればよい.しかも,脛骨神経ブロックと坐骨神経ブロックともに鎮痛効果に有意差があるとは言えない.これがTKAにおける末梢神経ブロックの基準的なアプローチになるのでしょう.

神経刺激ガイド法のワークショップの必要性

NYSORA asia2012で神経刺激ガイド法のワークショップを見学して,その必要性を再認識しました.僕自身は腰神経叢,坐骨神経ブロックを未だに神経刺激器を使ってやっています.以前は胸部傍脊椎ブロック,斜角筋間アプローチと鎖骨下アプローチの腕神経叢ブロックもやっていました.アジアの発展途上国に向けて,いかに末梢神経ブロックを遂行させるかということが中心で,講演でもレビューではなく,やり方を話して欲しいと言われました.案外,古めかしい手法ではありますが,面白いし,楽しい.確かに成功率は高くない,いや上手くなれば超音波ガイド法と同じ.日本でも,こうしたワークショップをやっていく必要性を感じました.ハイチの大地震でも神経刺激ガイド法が活躍していました.乾電池さえあれば,疼痛コントロールができる末梢神経ブロックの技術を地震大国,日本が維持しなくてよいのでしょうか?

ワークショップ見学

NYSORAのワークショップに参加してきました.といっても本番は明日,今日は見学だけしました.Karmakar先生から,「やるか?」と尋ねられましたが,「明日ね」と言って上手くかわしました.

このワークショップは古式ゆかしい神経刺激ガイドによるランドマーク法です.傍脊椎ブロックと腰神経叢ブロック,上肢,坐骨神経ブロックと足関節ブロック,大腿神経ブロックの4ブースでした.NYSORAの集団だからこそできるワークショップだなと思いました.僕も神経刺激ガイドで一通りはやってきたので,行けと言われたらやる自信はありましたが,午前中に引き続き,日本の恥をさらしてはならぬとおとなしくしていたわけです.おとなしくじっと見ていたからか,いろんなことが分かりました.

傍脊椎ブロックは初期のNYSORA本では横突起に針先が当たったら,針をwalk offさせて,1cm刺入しろと書いてありました.今日のワークショップでは1.5cmとおしゃっていました.karmakar先生に至っては、2cm刺入とさらに深く刺入されるとのことでした.傍脊椎ブロックをAnesthesiaとして行う場合は各レベルで5mlずつ注入.mastectomyではC7からT6まで全部やる.analgesiaとして行う場合は,single-injectionということでした.僕の個人的な意見では,single-injectionでもanesthesiaになると思っているのですが・・・・.

腰神経叢ブロックは初期のNYSORA本では棘突起から4cm外側が刺入点とありました.今日の話では3cmに変更されています.僕自身は3.5cmで行っています.

伏在神経ブロックは足関節より末梢に分布する人はごくわずかだから,足関節より末梢の手術でブロックする必要はない(25%程度は必要).末梢にいけばいくほど,変異が多くなるので,確実に効かせたいのなら大腿神経ブロックを5mlでやったほうがよい.僕自身は伏在神経ブロックをやるくらいなら大腿神経ブロックをやるというスタンスでずっといました.

僕も今後のソノサイトのエデュケーションで取り入れていきたいなと思いました.

藤子ちゃんへ

藤子ちゃんへ

僕が口を酸っぱくして藤子ちゃんに言っていることを,Dr Hadzicも言ってました.
Never Bend a Needle!!  You can't place appropriately!!

針のシャフトに力を入れて,針を曲げたら駄目なんよ.方向を変えたいときは,皮下まで引き抜かなきゃね.

2012年3月3日土曜日

ベトナム講演終了で~~~す

緊張しっぱなしで朝を迎えました.何度となく読んできた原稿を繰り返し読み直し,頭にたたき込みました.僕の前に二人が講演し,休憩を挟んで僕の出番でした.休憩中にパソコンをセッティングして,動画も動くか確認し,準備万端!!

準備万端!!

準備万端だったはず・・・・・

Dr Hadzicが僕のことを紹介してくれて,僕の講演が始まりました.話が中盤になり,初めての動画を供覧している最中にそれは起きました.
壇上のスクリーンが真っ暗に.何がおきたのか分かりませんでした.
しかし,すぐに電源コードを接続していないことでパソコンの電源が落ちたことが原因だと気づき,コンセントに接続しました.あろうことか純正品の3時間しか保たないレッツノートのバッテリーであったため,コンセントに接続しても一向に起動する気配がありません.仕方がなく,次のスピーカーに先にやってくださいと壇上でお願いしました.次演者が講演してくれている間に10分ほど充電すると,ご機嫌を取り戻したのか,レッツノートが起動するようになりました.

話の内容は,傍脊椎ブロックも肋間神経ブロックも本質は同じなんだという僕の死体解剖検討からの考えを述べさせて頂いて,超音波ガイドで二つのブロックをどうやっていくかを説明しました.
トラブル発生時には,普段の英会話能力をいかに磨いておくか,ここが一番大切だと思いました.
まあ,海外講演で起こりうるトラブルを僕も経験し,ひとつ大人になれたということでよしとしておこう.とりあえず,来年のISSPS2013にKarmakar先生から頼まれたので,ベトナムに来た甲斐があったというものです.何人か,連れてきて欲しいとも言われました.

ミルク,ミルク,ミルク

行きのベトナム航空の機内サービスで気づいたこと.ベトナムの人のほとんどが,機内サービスのドリンクにミルクを頼んでいました.そこら中でミルク,ミルク,ミルク.みんな日本で出稼ぎをして,ベトナムに戻る若者なんでしょう.楽しそうな顔をして,ミルクを飲んでいました.それにしても,なんでミルク好きなんだろう?

なんと!?

NYSORA asisaのfacultyだけの夕食会に参加してきました.な,な,な,なんと,僕に間違えて,傍脊椎ブロックだけでなく,truncal blockも頼んでしまったことが明きからになりました.ということで,Dr Umaがかわりにtruncal blockを担当することに.ここ3日,ほぼ徹夜して準備してきましたが,すこしほっとしています.だって,すでに香港,アブダビでお話してきたことを,また説明すればよいのですから.
とりあえず,バーバーバー(ベトナムでビールのこと)で乾杯!

2012年3月2日金曜日

ベトナム到着

NYSORA asia 2012のために,ベトナムに来ました.バイク天国とは,このことで車もバイクも人もグッチャクチャになって車道を通っています.よく交通事故が起きないもんだと感心します.
会場は5つ星のHotel Equatarialです.ちょっと町並みを見ながら,ショッピングや食べ歩きをしようと思いましたが,あまりにバイクの交通量が多く,信号もあってないようなもの.ここで怪我したら大変なので,散策は500mも進まないところで中止に.とにかくどやって道路を渡ったらよいのかさえ,分からないのです.

一番,つらいのはベトナムではフェイスブックがつながらないことです.みんなの声がどこに行っても聴けて,ホームシックにならないのに,今回ばかりはそうはいかないようです.

2012年3月1日木曜日

いよいよ,ベトナムへ

明日,NYSORA asia 2012に向けて,ベトナムに旅立ちます.香港,アブダビに続いての講演です.英語圏でない人達ばかりなので,少し気楽な感じで行ってこようと思います.ただし,まだスライドができていません.月曜日からずっと,鬱状態に陥りながらスライドを作っていました.自分が本来,日本で述べていることを英語にすればよいのに,気取ろうとして,難しい英語で話そうとしていたのが原因です.交流を楽しむためのスライド作りに変更し,今は精神的に落ち着きつつあります.明日まで徹夜して,楽しみます.ベトナムは気温が40度近いらしいです.楽しみだな~~~

2012年2月28日火曜日

めんどうくさい

今日,これまで末梢神経ブロックを教えてきた若手に「○○ブロックしてみたら」とアドバイスをしたら,「めんどうくさい」という返事が帰ってきた.標榜医にもなると,自分なりに麻酔を考えるようになる.末梢神経ブロックは,料理における一つまみの塩と同じ.その少しの手間が麻酔の質をあげてくれる.それを共有できていなかったことが残念だが,これも成長なのだろう.あとは成長を見守るだけで,教えるのではなく,自分で考えてもらうようにしていきたい.

プチ見学&実習その2

九州のK那先生とM角先生の二日目は,金鯱の眺めがすばらしい病院に来て頂きました.T部長のご厚意で,ここで整形外科麻酔の見学をしていただきました.プロポフォールTCIとケタミンによるminimally invasive anesthesia,lumbar plexus block & parasacral sciatic nerve block, scalp block, subcostal TAPを見て頂きました.お二人はソノサイトで僕の話をお聞きになられましたが,実際にやっているところを見て,なるほどと思えるところがいろいろあったということでした.

僕自身が4月以降,金鯱が見られる病院から多の病院に外勤先が変わるので,整形外科麻酔のトレーニングを提供する場所がなくなること,本拠地の医局員増員に伴い受け入れるための医員枠がなくなる問題などが浮上し,しばらくは3ヶ月実習の受け入れを休止する予定です.ただ,体幹の神経ブロックの1週間以内のプチ研修なら受け入れ可能とは思います.二日間とはいえ,一緒に麻酔を共有することで,末梢神経ブロックについて得るものがあることは有意義なことだと思います.なんらかの形で今までやってきた教育手法を残せたらと思います.

ほっとしたメール

NYSORA asia 2012の準備に取りかかりました.あと3日しかありませんが・・・そんなおり,メールが届き, ”it would be important that your presentations are geared towards principles of accomplishing nerve block..."と書いてありました.ようはレビューより,ブロックのhow toを説明すればよいということのようです.これから論文を読み直して,レビューをしなきゃと思っていたので,すこし気が楽になりました.がんばろう

2012年2月27日月曜日

プチ見学&実習

本日は,九州からM角,K那先生がプチ見学と実習にお見えになりました.腹直筋鞘ブロック,肋骨弓下TAPブロックを一緒にやって,あとは胸部傍脊椎ブロックをたくさん,たくさん見て頂きました.明日は金の鯱近くの病院に一緒に行って,整形外科麻酔を見学して頂きます.

2012年2月26日日曜日

TAPブロックの安全性と局所麻酔の極量

おかしい,おかしい,絶対におかしい.TAPブロックは,大量の局所麻酔薬を投与して臨床研究が行われているのに,1例も局所麻酔薬中毒の報告がない.血漿ロピバカイン濃度が2.2μg/mlで中枢神経毒性の症状が出始める.それがロピバカインを投与する際の基準になっている.しかし,ロピバカイン3.0 mg/kgでTAPブロックをして,2.2より高い濃度になっても,局所麻酔薬中毒が発症しない.全身麻酔が症状をマスクしてしまうとも言われているが,僕は手術終了後にブロックしているが特に問題はない.そう考えると,血漿ロピバカイン濃度で2.2μg/mlで中枢神経毒性の症状がでるという事実のほうが,間違っているのではないか.

セルフヘアカット

今日は,朝ごはんを食べた後にお風呂場に直行し,Phillipsのセルフヘアカットプロを使って髪を切りました.ペインクリニックで診ている美容師からのアドバイスで,今回は奥様にハサミで調整をしてもらいました.

2012年2月24日金曜日

TAP blockは内臓痛にも効果あり?

解剖を知らないと末梢神経ブロックはできないと僕はよく言っています.体幹の神経ブロックで内臓痛も対処できると勘違いされる麻酔科医が現れたときには,注意を喚起していました.しかし,その指摘は正しくないかもしれません.

Am J Emerg Med. 2012 Feb 3.のレターで,麻薬に耐性ができてしまった急性膵炎の女性に対して,TAPブロックが効果があったと報告しています.前腹壁の痛みだけではなく,内臓痛に効果があったわけです.類推するに,局所麻酔薬の血中濃度が上昇し,全身性鎮痛(systemic analgesia)が得られたのではないでしょうか.末梢神経ブロックには神経遮断作用と全身性鎮痛があるわけですから,当然といえば当然かもしれません.しかし,このレターがTAPブロックに全身性鎮痛があることを我々に認識させてくれた意義は大きいかもしれません.このレターは読み手に,いろんなことを考えさせてくれます.

しかし,よくこのレターがアクセプトされたもんだと感心してしまいます.「バカな報告だ,解剖もしらないで.」とrejectしなかったreviewerは偉い!ひょっとすると,reviewerも硬膜外麻酔と同じだと勘違いする程度の救命医だったのかもしれませんが,僕にとっては「あんたは偉い!!」とreviewerに賞状をあげたい気持ちです.

2012年2月23日木曜日

TAPブロックの論文

EndoNoteでTAPブロックの論文を検索してみました.O'DonnellらがTAPブロックをはじめて紹介した2006年以降でちょうど100論文がヒットしました.ちょうど100個だったので,意味はないけど,キリの良い数字にうれしくなって書き込んでしまいました.

2012年2月22日水曜日

超音波ガイド神経ブロックの上達方法

超音波ガイド神経ブロックの技術を如何に向上させていくか?自分なりに振り返ってみると,まだ誰も超音波ガイド神経ブロックをやっていない時期に一人でやり始め,それをみんなに紹介する機会を得ました.超音波画像の録画を繰り返したのです.良い画像を得るには,一回の撮影で満足するものが撮れることはありませんでした.全症例を撮影する勢いで行って,ようやく自分が満足のいく画像がひとつ撮れました.刺入したと同時に針が描出され,そのまま針先が描出されながら,スピーディーにターゲットまで到達する.今,自分がみなさんに伝える平行法のコツのほとんどは,プレゼン用動画として最適な動画を撮るために自分が考えた技術でした.今日は,藤子先生にNYSORA Vietnum 2012のプレゼン用動画に協力してもらおうと,プレゼン用の最適画像を撮るためのアドバイスをしていたら,そのことに気づきました.みなさんも他人に見せるための動画を撮影しながら,手技を磨けば,メキメキ上達するのではないでしょうか?

2012年2月19日日曜日

泥棒出現

我が家の駐車スペースを横切る車や人が多いので,おしゃれなアイアン製の進入禁止ポール1セット2本を2セットを楽天で購入しておいていた.このポールは効果てきめんで,侵入してくる車や人はいなくなった.しかし,そのポールを車で轢いていく強者が現れ,1本だけ曲がってしまった.曲がってしまったのを修正しながら,大事に使ってきたのだが,昨夜,全部盗まれてしまった.

僕は,妻が薪屋さんが薪を持ってきてくれるためにポールをどけたんだと思い込み,妻は妻で,僕が薪屋さんのためにポールをどけたんだろうと思っていた.夕食を食べて,薪ストーブを焚いたところで,妻が「駐車場のポールはどこにやったの?」と言うから,「おまえが薪屋さんが来るから,どけてたんでしょ?」と聞き返すと,「わたしは,パパチンがどけたんだと思ってたわ」と.二人して,ようやく盗まれたことに気づきました.恐らくは金曜日の深夜に盗んでいったと思われます.

誰が盗んだのか?鉄をお金に換えたい輩が盗んだのか,それとも我が家の駐車場をショートカットしたい輩が盗んだのか?いずれにせよ,腹が立つので,吉良の里で頂いた梨の木のどでかい幹を二本,進入禁止薪として置くことにした.

外側大腿皮神経は必ず描出できるのか?

外側大腿皮神経ブロックを超音波ガイド法で行う方法が文献で散見されるが,本当に映るのだろうか?答えは否である.

外側大腿皮神経は腸骨筋表面を外下方に走行し,上前腸骨棘より1cm内側で鼡径靭帯の下を通って骨盤から大腿外側表面に出る.大腿外側で縫工筋を横切りながら,腸骨筋膜,大腿筋膜を貫いて大腿前面および外側面に分布していく.Cnilical Anatomy 2009;22:365-370で,meralgia sydnromeと言って,外側大腿皮神経の絞扼にともなう痛みとしびれを訴える整形外科疾患がある.それに対するRoth手術をした際の外側大腿皮神経の解剖学的変異を調べた報告がある. それによると,実際にはその神経走行には解剖学的変異があるのだ.骨盤から大腿外側に出てくる際に,鼠径靱帯の下を通過するもの(85.2%),鼠径靱帯を貫くもの(8.9%),鼠径靱帯ではなく腸骨の孔(iliac canal)を通るもの(4.4%)がある.また上前腸骨棘周囲で観察されないもの(8.8%)まである.骨盤から出た後では,大腿筋膜下を走行する場合(88.5%)と大腿筋膜上を走行する場合2.7%)がある.大腿筋膜下を通過するものの多くは下外側方向に走行する(87%)が,下内側方向(11.5%)や外側方向(1.5%)に走行ものがある.一方,大腿筋膜上を走行するものは下外側方向に走行する.これだけみても,そう簡単に超音波で外側大腿皮神経を描出してブロックできるはずがない.

上前腸骨棘近傍で腸骨筋とそれを覆う腸骨筋膜を描出し,そこに局所麻酔薬を投与することが解剖学的変異をさける最良の方法のような気がする.

2012年2月17日金曜日

腸骨筋膜下ブロックを超音波ガイドでやるべきか?

とある本の原稿で,4種類かのブロックについて書かねばならない.しかし,困ったことは筆が進まない.A&AでShafer教授が,自分が過去に書いたものでも盗用になると定義している.何度も同じようなことを書いてきた僕としては,同じ内容を違った表現でかくほど,文才がわるわけではない.その4つのブロックの一つに超音波ガイド腸骨筋膜下ブロックがある.

このブロックを超音波ガイドでやる意味があるのだろうか?僕自身はないと考えている.なぜなら,救急車に医師が搭乗するフランスから,大腿骨骨折の患者に救急車内で体表ランドマークと筋膜貫通感の二つだけで大腿神経と外側大腿皮神経が遮断できるということが報告されて,みんなの注目を浴びたからだ.超音波画像や神経刺激器がなくても安全,確実であることが証明されているわけだ.

それでも,超音波ガイド腸骨筋膜下ブロックを執筆しなければならない理由はなんだろう?初心者は筋膜貫通感が分からない.その筋膜貫通感を理解するために,超音波画像で大腿筋膜と腸骨筋膜を描出しながら,針を刺入するとよいのかもしれない.しかし,得てして画像ばかりが気になって,針から感じる筋膜貫通感に意識が集中しておらず,無駄に終わってしまうような気がする.Pediatric Anesthesia 2011;21:1261-4で小児の超音波ガイド腸骨筋膜下ブロックのケースレポートが報告されている.それによれば,薬液の広がりが分かること,針を頭側にむけて刺入した場合,腸骨筋のすぐ頭側に消化管があるので安全という利点があるようです.ただし,元祖のDalenは皮膚に垂直に針を刺入し,頭側にむけた刺入していません.Anaesth Intensive Care 2009;37:140-1では,成人患者で膀胱穿刺を起こした事例が報告されていますが,刺入点を間違えたとしかいいようがない.

結局,どう良いように考えても,腸骨筋膜下ブロックを超音波ガイド下に行うことはお勧めできない.故に,この原稿依頼はボツ!!本当はボツにできません.

2012年2月16日木曜日

薬液を注入する前にカテーテルを入れる方法を先日,お話ししました.その手技を紹介するビデオです.利点は薬液の広がりをもって,カテ先の位置確認ができるという点です.薬液を針から注入した後にカテーテルを挿入すると,カテ先と神経の位置関係の把握が難しいことがあります.空気入りの生食を注入して,hyperechoic flashを観察することで把握することもできますが,この手法は空気が周囲組織に入り込むことで画質が落ちてしまう欠点があります.一発勝負といったほうがよいかもしれません.この方法であれば,そうした問題点を回避できます.

この手技は僕ではなく,金の鯱病院麻酔科のH先生です.最近,一生懸命にTKAの術後鎮痛に取り組んでくれています.

片岡英樹先生との会食

このブログで以前,英語の参考書として紹介した「NASAに学ぶ英語論文,レポートの書き方」の訳・解説者,片岡先生と2時間半もお話できる機会を昨夜,得ることが出来ました.この本はNASA SP-7084というテクニカルライティングの本を片岡先生がNASAの許可を得て日本人向けに加筆し理解しやすくしたものです.宇宙に行くことに関して,誤解を招く記載は人の生死に関わる問題に発展します.そのため,NASAは誤解を招かないようにする英語の記述方法(テクニカルライティング)を決め,SP 7084という本にしたのです.

片岡先生はミシガン大学でレトリックrhetoricの技術を学ばれたそうです.レトリックとは修辞法という意味です.つまり,相手にわかりやすく説得する技法のことです.レトリックの技法そのものは実はアリストテレスの時代からあったそうで,その基本は変わってないそうです.競争社会の米国では,上司に自分の企画を伝えたい場合,そのレポートが少しでも読みにくいものであれば上司は読んでくれません.
レトリックの技法は自分が成功するために必要な知識であるため,多くの米国人がお金をつぎ込んで学ぶそうです.実は医学英語論文も同じなのです.有名な雑誌にもなると,専門用語や文法がいくら正しくても,少し読んで,疑問を感じるものであれば,その論文はrejectとなります.reviewerにNOと言わせない書き方としてレトリックが使われるのです.以前は,ビジネス英語の書き方,emailの書き方,英語論文の書き方など,様々な書く手法を解説したものがたくさんありました.しかし,これらすべて,レトリックという技法に集約されるわけです.如何せん,我々日本人は受験英語,大学では文学の英語を学ばされるために,社会人になっても,相手を納得させる(説得する)文章の英語の書き方を知らない(日本語だって同じ).人が社会で生きていくためには,レトリックの技法を知っておくことが大切なのに,そのことに多くの人が気づいていない.

英語論文作成に長けている人は,まさにレトリックを身につけた人であり,それさえ分かってしまえば,英語論文を書くことは苦痛にはなりません.ただレトリックは相手にNOと言わせない技術であるが故に注意しなければならないことがあります.データのねつ造が起こりうるのです.レトリックの技法を正しく使わず,実験結果もないのに論文が作成される.現に,これまでも論文ねつ造が報じられています.あくまで,正しく臨床研究や基礎研究がなされた上で,レトリックが使われなければなりません.
レトリックの内容について書かれた本として,「技術英文の書き方55のルール」をご紹介して頂きました.本の内容は,医学英語論文の書き方にも共通するものがあり,今後,このブログでも取り上げたいと思います.

2012年2月12日日曜日

薪置き場増設.

家の西側に薪置き場を増設しました.陽の当たる時間帯もありますし,ものすごく風通しが良いので,薪置き場にはちょうどよいです.ただし,玄関横から庭に通じる通路だったので,薪置き場をつくった分,通りにくくなりました.はじめはコンクリート部分にすのこを敷いて,そこに薪を積み上げればよいと思っていましたが,20cmは地表から上げないと,雨に濡れて腐ることがあるようなので薪置き場を作ることにしました.DIYで自作しようとも考えましたが,台風で飛んでいっても困るかなと思い,大工さんに頼んでしまいました.代金には住宅エコポイントをあてました.昨日,ポリカーボネイトの屋根をつけてもらい完成したので,早速,自分で収集した薪を入れました.W1.8m×H0.7m×D0.48mが6つありますが,これでも足りなくくらいです.あとは簡易の薪置き場を自作しようかと思います.


はじめに造ってもらった薪置き場は,増設に伴い南西の角に移動させました.もともと,かなり庭がわに設置されており,薪置き場の後ろのスペースが無駄になっていました.コンクリート部分が少なかったために,薪を割るスペースがなく,芝生の上で作業をしていました.そのために,せっかく植えた芝生が駄目になってしまいそう(もう駄目かも)でした.これで,コンクリート部分で薪割り作業ができます.

ちなみに二年間乾燥させた薪を作る予定なので,この薪が使えるのは2013年の秋以降になります.来年は,まだ薪業者から購入しなければなりません.仕事が趣味だと言ってきた自分が,こうも薪ストーブライフにはまるとは思いもしませんでした.木に触れることが今は楽しいです.


2012年2月10日金曜日

安心な神経ブロック

今日,藤子先生と一緒に超音波ガイド腋窩静脈穿刺をしていて気づいたことがあった.今まで僕のところに研修にきてくれた人達も,前半は僕が手技を中断して穿刺し直すように言われていた.しかし,後半に入ると何も言われなくなっていた.何故だろう?僕が安心して見ていられるようになったからだ.安心して手技を見ていられるようになるとは,どういうことか?それが手技の安全性という意味で大切であると気づいた.

僕は,このブログで「勝負画像上に針を描出する」よう修練しないといけないと言ってきました.別の言い方では,「プローブに針を合わせる」と表現しています.多くの麻酔科医は手術麻酔の超音波ガイド神経ブロックをしているあまり,プローブを動かして,針を描出する癖がついてしまっています.これを「針にプローブを合わせる」手技と僕は言っています.針にプローブを合わせる穿刺は,手術麻酔の神経ブロックでは問題を起こしません.しかし,胸部傍脊椎ブロックを含めたペインクリニックの神経ブロックや腋窩静脈穿刺では危険な状況を招くことあります.針を映そうと夢中になるあまり,勝負画像から逸脱して,勝負できない画像に変わっていることに気づかず,そのまま刺入を続けてしまうのです.腋窩静脈穿刺で言えば,勝負画像として腋窩静脈長軸像を描出していたにも関わらず,描出されていない針を映そうと,プローブが頭側にずれていき,いつのまにか腋窩動脈の一部が腋窩静脈とすり替わってしまっている.しかし,本人は,針が描出されたことに安堵して,腋窩動脈に向かって刺入しようとしている.このような状況が初心者には,よく見られるのです.

手技に熟練の思考はどうでしょう?恐らくは,次のようになっているはずです.
1.まずは勝負画像を描出.
2.針を勝負画像の中に描出.よ!刺入をしていこう!!
3.針が微妙に映っていない.
4-1.ちょっとプローブを動かして,針は映った.その画像でも勝負できる!よし刺入!
4-2.ちょっとプローブ動かして,針は映った.でも,その画像では勝負できない.よし刺入点変更!
*針が描出されないときは,3-4の繰り返し
5.映っていた針が途中で消えたら,針を引き戻す.針先が再び描出されたら,アライメントを調整.
6.針が再度描出され,アライメントも整ったあら,刺入していく.

たえず勝負する画像の中で針が描出されているかを気にしながら,手技が行われるので安心してみていられるのです.針を映すことに一生懸命で,危険な状況に気づかないのはだめなのです.

藤子先生を治療

今週は当直が大変だったせいか,それとも僕の研修が大変なのか,藤子先生は数日前から咽頭痛を訴え,今日はとうとう欧陽菲菲(オーヤンフィーフィー)のようなかすれ声に.欧陽菲菲とは“love is over”という昭和の流行歌を歌った歌手です.藤子先生に,「欧陽菲菲みたいな声だね.」と言ったけど,キョトンとした顔をされ,世代ギャップを感じさせられました.

ブロック中の動きも鈍く,風邪を引いたときの全身性炎症反応を感じている雰囲気が漂っていましたので,遠絡療法という経絡治療をしてあげました.風邪や手術後の全身倦怠感は膀胱経の気の詰まりをとってあげるだけで随分楽になります.脊椎に沿って背中をトントン叩き,どちらが痛いか尋ねると,左側が痛いというので,右の肺経を使って臓腑通知を行い,右心包経,左心経で補強,左脾経で相克を行いました.あら不思議,「身体が楽になった.」と笑顔を取り戻した藤子先生は,再び研修を再開されました.

2012年2月9日木曜日

持続末梢神経ブロックのカテ入れ

腕神経叢ブロックや大腿神経ブロックで,カテーテル挿入方法についてですが,最近,新しい試みを行っています.平行法で行うことは変わりありません.ただ薬液を入れる前にカテーテルを挿入してしまいます.針先をターゲットとなる神経まで持って行き,そこでカテーテルを挿入し,針先から4-5cmだけ進めます.その後,薬液を1mlずつ注入しながら,薬液が神経を包み込む広がりをするところまで引き抜いてきます.

これまでは薬液を最初に針から注入して,その後,カテーテルを挿入していました.しかし,この方法はカテ先の位置がわかりません.hyperechoic flashの位置で神経とカテ先の位置関係を把握していきます.何度も空気入りの薬液をいれているうちに解剖が分からなくなる問題がありました.しかし,カテを薬液注入前に挿入すれば,薬液の広がりでカテ先と神経の位置関係が把握できます.three hand techniqueとすると,一連のカテーテルの動きを描出することができ,精度が上がります.

今度,この画像をアップしたいと思います.

2012年2月7日火曜日

藤子先生が贈るStimuplexのリモートコントローラーの持ち方

僕は,下肢の神経ブロックでは,神経刺激ガイド法で腰神経叢ブロック&傍仙骨アプローチ坐骨神経ブロックを行うことをまず身につけるべきだと伝えてきました.この二つのブロックで下肢のすべての手術に対応ができるうえ,二つとも超音波ガイド法より神経刺激ガイド法のほうが圧倒的に簡単にできるからです.

神経刺激ガイドで今,一番使いやすいと思っているのはB.BraunのStimuplexです.神経刺激では,電流閾値を下げながら,針先を神経の近くまでもっていきます.電流閾値の調整を介助者にやってもらうこともできますが,電流閾値を下げることと,針先を神経近傍までもっていくという二つのことを術者一人で行うと,神経刺激ガイド法での末梢神経ブロックの精度が格段にあがります.そのため,Stimuplexにはリモートコントローラーがオプションでついています.Stimuplexのリモートコントローラは手に装着させます.

しかし,いかんせん,巨人族ともいえるゲルマン民族向けのリモートコントローラーのため,日本人の我々が手に装着させると,でかすぎて使えません.僕は身長があるのでよいのですが,たいていの日本の麻酔科医は使いこなすのに苦労しています.このリモートコントローラーは指にかける黒い輪っかが二つあるのですが,これに指を通してしまうと,電流域値を調整するボタンに指が届かなくなるのです.僕は,輪っかに指を通さない方がよいとアドバイスをしますが,それでもボタンを指で押すのに苦労します.

今,僕のところに研修にきている藤子先生が画期的な装着方法を見つけたので紹介します.写真のようにリモートコントローラーを手のひらにおいて,手袋をします.ポイントは黒い輪っかを小指側に置きます.すると電流閾値を下げるボタンが上にきて,域値を上げるボタンが下にきます.これにより親指で電流閾値の調整が格段にやりやすくなります.もし輪っかを上に置いてしまうと,電流閾値を調整する二つのボタンが横にならび,親指が届かなくなります.これを題して,「藤井握り」と僕は名付けます.

2012年2月6日月曜日

薪ストーブライフのためのチェーンソー

薪ストーブライフを始めて,薪を自分で自給自足しようとがんばっています.今は,薪ストーブライフを自給自足している方に弟子入りをして,チェーンソーでの木の切り方の指導を受けています.自分が教えてもらった内容を忘れないためにも,薪ストーブライフを自給自足でやりたいと思っている麻酔科医のためにも,ここに書き留めておきたいと思います.

薪ストーブは,その木が生きている間に吸収したCO2を薪ストーブで排出するだけで,地球温暖化の要因にはならず,最もエコな循環型エネルギーを使用している.薪には建築廃材は使わず,地域の人達との信頼関係を数年かけて築き,地域の人の思いが入った木を切らせて頂く.薪ストーブがあっても,建築廃材などを使用するようでは焼却炉と変わりない.薪ストーブを持っているだけでは駄目で,薪ストーブを焚く人のセンスが薪作りには問われる.自分の家を訪れた人がいいなと思って貰えるような薪を作らないといけない.ちゃんと薪置き場における美しい薪を作るには,木を切る際に何も考えずに切っていては,見た目も美しくない薪ができてしまう.

美しい薪を作るためには,
1.太さの均一な部分で40cm長の玉木が作れるよう,木を切っていく.
2.均一な太さの薪を作る基準点を探す.
3.基準点は,曲がっている部分の両サイド.
4.主幹の枝に分かれる部分も基準点となる.
5.小さい枝は,焚き付け用薪として使用できるので,捨てない.

効率的に家を暖めるには,
1.薪ストーブは「いかに非効率的にストーブを焚くか」が重要.
2.効率的に焚いてしまうと,あっという間に薪を消費する.
3.空気を絞り,薪ストーブ本体を暖めるには,薪が乾燥していないと駄目.
4.水を含有した薪は水の蒸発にエネルギーをとられて,ストーブは暖まらない.
5.よって,薪を2年乾燥させる.
6.細い薪を作ってはだめ.薪ストーブを焚くことと,五右衛門風呂や釜の薪炊きとは違う.
7.太い薪をつくる.
8.腕~下腿の太さの薪は割らない.太ももの太さで半分に割る.胴体の太さで4分割.
9.薪は常に二年分を蓄え,半分が1年薪,半分が2年薪になるようにしておく.
10.二年分の薪には,胸くらいまで薪を積んで駐車場2台分のスペースが必要.

2012年2月4日土曜日

肥満にも二つある

麻酔科医として,肥満患者さんは麻酔管理が難しく,我々はいつも泣かされます.しかも,相当な肥満にならないと麻酔管理料も上がらない.相当な肥満とはいかないまでも肥満の範疇に入る人でも,本当は我々は四苦八苦しているというのに,おかしなものです.

さて,肥満には「二つの肥満がある.」と僕はかねがね言っています.棘突起の触れる肥満と棘突起の触れない肥満です.どれだけBMIが高くても,棘突起さえ触れれば硬膜外麻酔もしてあげられるし,腰神経叢ブロックもやりやすいです.ところが,棘突起が触れない肥満は脊椎・傍脊椎周囲で針を刺す指標がなくなり,麻酔科医は「羅針盤を持たずに航海にでる」状態に追いやられるのです.

腰部の脊椎・傍脊椎を超音波で観察することが,最近の超音波ガイド手技のトピックになっていることはご存知だと思います.腰椎のレベル確認は通常,Running horse signと言って,椎弓の矢状断面を描出して行います.棘突起を数えることはしません.なぜ棘突起で確認しないかというと,棘突起はプローブ直下に位置するため,描出されていても同定しづらく,数えづらいのです.

これまで,「棘突起の触れない肥満」は麻酔科医にとって最も苦労させられる存在でしかなかったのですが,この腰部の脊椎・傍脊椎の超音波画像が普及しはじめて,神様に見えてくることがあります.

なぜ?

棘上靱帯より外層にもどっぷり貯まった脂肪層によって,棘突起が数えやすくなり,しかも矢状断でもコンベックスプローブがぴったりと肌に合うので,矢状断面で硬膜までの距離を簡単に把握できます.棘突起の触れる肥満では,棘突起で肌がごつごつしているので,水平断面では硬膜までの距離は把握できるものの,矢状断面ではプローブの一部が皮膚から浮いてしまい描出できないこともあります.棘突起が触れないことが,硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔の針の刺入位置や刺入長を計測するのに大いに役立っています.

2012年2月3日金曜日

ケタミン&ミタゾラムによる鎮静

先日,卵アレルギーのある患者さんが人工膝関節置換術を受けることになりました.いつもはプロポフォールとケタミンによるminimally invasive anesthesiaによる鎮静で,腰神経叢ブロックと傍仙骨アプローチ坐骨神経ブロックをしていますが,はじめてプロポフォールをミタゾラムに変えてみました.おかしなもので,卵アレルギーのある患者さんを僕が整形外科手術で担当することが,ここ数年ありませんでした.

ミタゾラム2mgを適宜投与し,呼びかけに応じなくなるのを確認しました.そこで,さらに2mg追加投与した後,ケタミン50mgを投与しました.MIAより末梢神経ブロックに取りかかる時間は早くできました.
神経刺激ガイドでブロックを行いましたが,その間の患者さんの状態はMIAと全く同じで,動くこともなく,自発呼吸もしっかりと温存できていました.ブロック後はigelを挿入し,吸入麻酔薬による全身麻酔(AOS)に移行しました.

手術が終わって,麻酔から覚醒させようとしましたが,MIAより覚醒に時間がかかりました.ミタゾラムを2mg追加する必要はなかったかなと思いつつ,就眠に時間を要するか,覚醒に時間を要するかの問題で,在室時間という点では同じかなというのが僕の印象でした.術後の状態などの比較は行っていませんが,覚醒後の患者さんの意識レベルはMIAのほう良い印象があります.ミタゾラムを減らせば,覚醒後の意識レベルはもっとクリアになるかもしれません.

2012年2月2日木曜日

タイヤチェーン装着とテレビインタビュー

昨夜から名古屋も雪が降りました.僕の自宅のある藤が丘は朝7時過ぎには道路に積雪はなく,車に積もっている程度で大丈夫だろうと自動車通勤にしました.子供達の小学校も大学病院に行く途中にあるので,一緒に連れて行くことにしました.この程度なら,名古屋市内なら車の熱で雪が溶けているだろうと思い,ノーマルタイヤのままでした.

途中までが良かったのですが,次第に交通渋滞になった上に,吹雪いてきました.そして,あっという間に道路にも雪が積もり始めました.いつもなら15分で通り過ぎているところを1時間経過しても,通過しませんでした.子供達の朝礼開始時刻8時20分をすぎて,ようやく覚王山にある学校に近くまできました.いつもなら,すでに手術室で患者さんを迎えている時間帯です.

子供達の学校がある覚王山は坂になっており,学校にいくには上り坂を進んでいかなければなりません.その上り坂にさしかかると,たくさんの車が追い越し車線に車線変更をし,左側にはハザードランプをつけた車がたくさん止まっていました.そして警察官の姿も.事故でも起きたのかなと思いつつ,上り坂にさしかかりました.その途端,タイヤが空回りをし始めました.「ここはアイスバーンなんだ!」と思ったときにはすでに遅く,蟻地獄にはまった蟻状態.逃げようにも,そのアイスバーンから脱することはできませんでした.ハンドルを切っても,車の方向すら変更できません.子供達が,「車おりて押そうか?」と言ってくれましたが,危険なので車にのっているように言いました.5分以上立ち往生したでしょうか,誰も助けてはくれません.警察官も寄ってきてもくれません.「薄情者め,税金泥棒!!」,そう心に思いつつ,自棄になって,ハンドルを右に左に急転換をくりかえしたら,あら不思議?それまで蟻地獄から脱することができなかった車が進み始めました.僕は急いで,道路の左端に車をつけ,子供達に少し距離があるけど,歩いて学校に行くよう言い,自分はタイヤチェーンを装着することにしました.

ことも達が無事に,歩道に入ったことを確認して,僕はトランクにあるタイヤチェーンと軍手をはめました.このタイヤチェーンはワンタッチで装着できると言われて買ったのに,まったくワンタッチじゃないホンダの純正タイヤチェーン.車輪の内側でタイヤチェーンを結合させて,そのうえで少しだけ車を前進させ,最後に外側でタイヤチェーンを結合させるという,どこがワンタッチなのか全然わからない,とても面倒くさいタイヤチェーンなのです.時間的余裕が亡くなった僕は,正常な判断を失い,この坂さえ越えてしまえば大丈夫だと考え,タイヤチェーンの外側だけ結合させて固定,坂を上り始めました.

「これならいける,ゆっくり進めば上れるぞ.」と思った矢先,ガガガガという何か引っかかる音が・・・
後ろを見ると,アイスバーンと化した道路の真ん中に僕が装着したタイヤチェーンが落ちていました.
「しっかりと装着しないと大学病院に行けない!!」そう反省しました.道路の左端に再度,車を寄せて,道路の真ん中に落ちたタイヤチェーンを取りに行き,再び,タイヤチェーンを装着しようとしました.しかし,ゴム製のタイヤチェーンは寒さで堅くなり,両端を車輪の内側で結合させるのに大変でした.袖もタイヤ周囲の汚れが付着し,真っ黒になりながら,30分以上かけて,ようやくタイヤチェーンを装着.ぐったり疲れながら,立ち上がると,目の前には何故か,CBCテレビの取材クルー.
まさか,僕の無様な姿をずっと収録していたのかと思いつつ,目が合うと,「取材いいですか?」と.
どうせ仕事は遅刻だから,取材を受けてしまえということで,インタビューに応じました.ということで,東海地方では今日の午後か夕方のニュースで僕の惨めな姿が映るのではないかと思います.

2012年1月23日月曜日

F先生の近況

昭和大学横浜市北部病院からきたF先生がきて,3週間.1月第1週は3日しかありませんでしたので,実質2週間程度.その間に行ったブロック数は61.F先生のブロック経験数は限りなくゼロに近かったので,ブロック症例数を増やすことより末梢神経ブロックを取り入れた開腹術,開胸術,整形外科手術がどんなものであるかを理解してもらうことを中心に,ゆっくりしたペースで研修を始めました.それでも実質2週間で61ですから,それなりのペースにはなっています.本日のブロック数は7つですので,すでにハイペースの状態になりつつあります.手術麻酔のブロックはそれなりにこなしていますが,ペインクリニックでブロックが適応となる患者さんがたくさんはいません.現状では,SGBや頸椎椎間関節ブロックを経験してもらっています.

本日,持続傍脊椎ブロックをしているF先生.どうやら横浜市北部病院の
関係者のみなさんが僕のブログを読んでいるということがわかりました.
F先生の近況を書かないと,不満が募ってはいけませんので,本日はF先生
特集としました.
超音波ガイド神経ブロックの技術はというと・・・驚くスピードで上達しています.当初,観察された針先を途中で見失うことも,ほとんどありません.まだ,針の刺入と同時にプローブが動いてしまうことがあり,そのようなときは手技に時間がかかってしまうこともあります.自分がこれだ!と思う勝負画像の中に針を描出させてく技術の重要性を認識している毎日です.プローブが大きく動かなくなり,勝負画像上に針が出るようになると,「僕ならここに針先をもってくるな」という刺入経路の会話ができるようになるのですが,まだ,そうした会話は多くありません.2ヶ月目に入って,どこまで上達していくか,さらに楽しみです.

2012年1月19日木曜日

NASAテクニカルライティングの改訂増補版

以前,ここで紹介した岡山大学非常勤講師の片岡英樹先生の「NASAに学ぶ 英語論文・レポートの書き方 -NASA SP-7084テクニカルライティング」が改訂増補版がでるそうで,予約販売が始まったようです.片岡先生からメールがあり,pnbsivaイチ押しのテキストですので,ここで紹介させていただきます.


http://www.amazon.co.jp/NASA%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6-%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E8%AB%96%E6%96%87%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E6%96%B9-%EF%BC%8DNASA-SP-7084%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%8D-%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BBK%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB/dp/4320005880/ref=sr_1_6?ie=UTF8&qid=1326894042&sr=8-6

2012年1月12日木曜日

ハムファントムの重要性を認識

昭和大学のF先生がブロックの研修に来ています.彼女はブロックの経験がほぼゼロという状況でしたので,こちらに来る前も,来た後もハムファントムで描出する練習をしてもらいました.単にハムに穿刺するのではなく,どれくらいのdepth設定で,どのあたりに向けて穿刺した状況をシミュレーションすればよいか,あらかじめ伝えていました.ブロック経験があった先生達より,癖がない分,画像描出能力の上達は早いです.針を刺入する際に,皮膚を動かしてしまうことで,走査面と刺入点のアライメントがずれてしまう問題が当初はありましたが,かなり修正できています.その結果,針がより描出できるようになってきています.あとはプローブの固定がしっかりとすれば,より容易に針を描出できるようになると思います.改めて,ハムファントムで練習しておくことの重要性を感じました.

2012年1月11日水曜日

ノロウィルスに翻弄された一日

昨日,朝6時に突然と自分の携帯がなり,息絶え絶えの声で助けを求める電話がありました.すぐに一人生活をしている自分の母親だと気づきました.どうしたのか尋ねると,どうやらノロウィルス感染にかかったようでした.前日の夜9時頃から下痢と嘔吐の症状が出現し,いつもお世話になっている個人経営の総合病院はバイト当直医がお間抜けだったようで,母親に対して夜間対応もしてくれると病院長がおしゃっていたにも関わらず,夜間受診を拒否したとのこと.すでに全身の力もぬけて,トイレにも行けないということで,かなり全身状態の悪化が予想されました.とりあえず,日頃家にストックした治療薬をもって,車に乗り込みました.名古屋の家から岐阜の実家までは車で1時間以上はかかります.その日はバイト日だったので,休むわけにもいかないし,かといって母親を放ってはおけません.仕事と母親の看病という両方をこなすには,かなり時間的に厳しい状況でした.
岐阜に入る手前で交通渋滞に巻き込まれ,車と車の間を割り込みながら,先を急ぎ,実家にたどり着いたのが朝7時半.すぐに母親の全身状態をみました.かなりの脱水状態で,一通りの処置を行い,漢方薬としてツムラの真武湯をお湯にとかして,チビチビ飲むように伝えて,勤務先の病院に向かいました.途中,T部長に事情を説明し,麻酔の導入に間に合わないかもしれないと伝えたところ,やっておくと優しい返事.T部長にはいつも助けてもらって感謝です(T_T).電話の後は,高速道路をいくら料金がかかろうと,ばんばん走って,名古屋城隣にある勤務先へ急ぎました.麻酔の導入に間に合わないかと思いましたが,患者さんが入室され,モニターを装着しているところに飛び込むことができました.ぎりぎりセーフ!!仕事の合間も,母親の状態が問題ないか,何度も母親の携帯に電話をし,無事を確認しました.夕方5時過ぎに,仕事が終わり,そのまま岐阜の実家に直行し,夜8時過ぎに,母親を再度診察しました.母は,依然として,かなりの脱水状態でした.肌は干し柿状態で,つねると,肌がつねった状態のままで戻らない.訊けば,丸一日尿も出ていないということがわかり,これはいけないと思い,処置をしつづけました.僕の処置が幸いして,夜10時過ぎにようやく尿が出始めました.腸内細菌を整えるためのヤクルト飲料を買い,お粥もつくり,家中の消毒を行って,名古屋に帰りました.僕が帰る直前に,母親をいつも診てくれている主治医から電話があり,昨夜の不適切な対応に対する謝罪の電話でした.その電話には,少し正気が戻った母が出て,僕は応対しませんでした.個人経営の総合病院にお気楽バイトで来ている当直医が,重篤な脱水状態の患者を適切に処置できるとは思えなかったからです.


新潟 豚(トン)喰う?

昨日,日本語が全くわからない中国のご老人の整形外科手術を管理しました.手術後に「あなたは痛みをかんじますか?」とどう尋ねたらよいかをGoogle翻訳で調べたところ,「你感到痛苦?」と出てきました.発音の仕方もチェックすると,「新潟,豚(とん)喰うう?:にいがた,とん,くうう?」と聞こえました.そこでジョン万次郎みたいに「新潟,豚喰うう?」と質問してみたところ,ものの見事にご老人は無視・・・通じませんでした.がっくりorz

2012年1月4日水曜日

名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム 第5期開始

仕事始めの今日から昭和大学横浜市北部病院のF先生が教育プログラムに参加されます.F先生は,ほとんどブロックをしたことがないということでした.こちらに来る前にひたすらハムファントムを使った平行法のトレーニングをしてきてもらい,今日を迎えました.まずは他の先生のやっているところも観てもらいながら,徐々にペースアップしていこうと思います.そうは言っても,持続胸部傍脊椎ブロックや乳児へのsubcostal TAP blockは来た初日にやって頂きました.

傍脊椎ブロックとプローブ固定

旭川のO先生や昭和大学のF先生とブロックを一緒にやっていて気づいたことがあります.それは,プローブをいかに固定するかです自分が「この画像で穿刺する!」という画像を勝負画像と僕は読んでいます.勝負画像を出していても,ブロック針を穿刺する際に,刺入する際の力を皮膚に伝えてしまうことで,刺入点で皮膚が動いて,プローブも間接的に動かしてしまいます.結果,針も描出されないし,勝負画像も消失するという二重苦に遭遇するはめになります.五所川原の佐藤裕先生は,このことを「皮膚に刺したことを教えるな!」と表現して指導されています.

皮膚に針が刺さったことを教えないためには,プローブをいかに患者の背中に固定するかが大事です.プローブを腕の力だけで固定してはいけません.体の重心移動で皮膚に圧迫して固定します.適切なテーブルの高さにして,脇をしめて,肘を体幹の前腋窩線あたりに密着させて固定します.また,自分の身を手術台に預けるようにすると,さらにプローブ固定が強固なものとなり,針の刺入でプローブが動くことはなくなります.

2012年1月2日月曜日

サッポロ生ビール

今日はちょっとだけ,麻酔と全く関係ない小ネタを話します.僕の実家はその昔は岐阜でも有名な酒屋さんでした.岐阜の酒造メーカーの千代菊の経営に僕の祖父が携わった経緯もあり,従業員をたくさん抱えて営業していました.そんなわけで,家には昔の酒屋さんが使っていたものがあります.


みなさんが飲み会の始めに頼むお酒は「とりあえず,生ビール!!」だと思います.1960年代,まだ冷倉庫が各家庭になかったころ,家で飲むビールは瓶詰にして,熱処理をされていました.当時として,熱処理をしないビールは,大きな冷蔵庫をもっている飲食店でしか飲めなかったのです.熱処理をしていないビールは,生ビールと呼ばれて,木製樽にいれて運ばれていました.初めて生ビールを販売したのがサッポロです.僕は父がまだこの木製樽を肩に担いで配達していた姿をおぼろげながら覚えています.今は,飲食店の業務用の樽は金属製になってしまい,瓶ビールも樽出ビールも中身は変わらない.お店でしか飲めないビールがあった時代のほうが楽しかったかもしれません.そんな懐かしい生ビールをいれていた木製樽が我が家には二つ残っていました.母は部屋のオブジェとして使用しています.年季が入っていい味を出しています.一時期,家の屋上に置いていたため,木の一部が朽ちていますが,他の部分はしっかりしています.


15Lの木製樽で,369という番号がついています.製造番号なんでしょうか.木製樽が流通しなくなるときに,父が問屋に戻さずに保管していたようです.新築の我が家に持って行こうとしたら,妻から却下されました.僕としては,上に布をかけて玄関先のイスとして使用してもよいかなと思っているのですけど.

2012年1月1日日曜日

あけましておめでとうございます.

麻酔科医のみなさん,あけましておめでとうございます.大晦日は紅白歌合戦をみてましたが,福山雅治のところで力尽き,布団の中に潜り込みました.本年もよろしくお願い申し上げます.