2012年5月14日月曜日

ハイテク技術には限界がある.

超音波機器メーカーがしのぎを削るハイテク技術には限界がある.そのために,あるレベルまで習熟したもの(プロ)は逆に,ハイテクを使わない.

たとえば,針の刺入角度が急峻になったときに,針の描出性が落ちてしまうことを防ぐために,超音波ビームの方向を変える技術がある.国内二大メーカーのGEもソノサイトも,この技術を持っている.GEのものは,フレームレートの問題でリアルタイムではなくなっている.つまり,モニターで映ってくる画像はすでに過去の出来事をみている.ターゲットに寸止めで針先をもっていきたいときに,この時間のズレは致命的.ソノサイトのものはリアルタイムですが,この機能は画面の半分程度でしか使えない。この機能を使いたいと思う領域が実は機能を使えない領域になっていたりする。だから,僕は評価を求められて使ったきり,ソノサイトの機能も一度たりとも使ったことがない.

また脳神経外科領域で使用されるナビゲーションシステムを超音波機器に導入する動きも海外では加速している.ナビゲーションシステムは迅速性に欠けるうえ,穿刺操作を自由度を奪ってしまう.
「プローブの位置はここで,プローブをこの角度に傾けて,針はこの角度で刺入すればよい.」そんな手技ができなくなってしまう.だいたい,脳外のナビゲーションシステムをみていれば,有益なようで,あまり有益でないことはよく分かる.下垂体腺腫のオペなどで,「ナビ通りだと,すでに脳幹をぶっさしていることになってるな.」なんて,脳外科医が言っていたりする.それ専用に開発されたものが,その程度なのに,付属でついてくる機能がよいはずがない.きっと,ナビゲーションシステムに翻弄される状況が出てくる.少なくとも,現状におけるナビゲーションシステムは,医療者の技術を制限する状況になる可能性が高い.

超音波機器メーカーには,ビギナーが安全に行えるハイテクと技術習熟者が必要とするものの両方の開発に目を向けてもらいたい.

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