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2011年6月30日木曜日

サンプルサイズ計算(8) サンプルサイズと差の関係

帝王切開を脊髄くも膜下麻酔で受けた妊婦を対象に,TAPブロックをロピバカインで実施された群と生食で実施した群を比較した研究を使用して,見積もった差とサンプルサイズの関係を見ていきましょう.

この研究のPrimary EndpointはモルヒネIV-PCAの術後48 hrのモルヒネ使用量でした.見積もった差は20 mg,標準偏差は20 mgと見積もり,αエラー5%,検出力80%として,サンプルサイズは1グループ16人でした.

今回は単にサンプルサイズ計算をするより難しい検討なので,やはりパソコンで使用する統計ソフトのJMPを使ってみました.下図をみていただくと分かりますが,2グループの平均値の差が大きくなればなるほど,サンプルサイズは小さくなります.JMPではサンプルサイズは2グループの合計した値で表示されます.

2011年6月29日水曜日

Y先生が行ったブロック数

新潟のY先生が行ったブロックの内容です.末梢神経ブロック425本,中心静脈カテ9本.これだけの症例数を3ヶ月でこなした麻酔科医は世界中どこを探してもいないと自負しています.短期間に圧倒的な経験を積ませることで,一気にその地域における末梢神経ブロックの核となる人材に育て上げるのが,僕の提供する名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラムです.Y先生がひとりでブロックをしていたときに,末梢神経ブロック31本に15ヶ月を要しています.それを指標に単純計算すれば,17年分の経験をしたことになります.

NSGは神経刺激ガイド,blindは盲目的手技,USGおよび記載のないものはすべて超音波ガイドです.胸部傍脊椎ブロック,肋間神経ブロックは片側で1つ.腹直筋鞘ブロックと腹横筋膜面ブロックは1症例を1つと数えています.
胸部傍脊椎ブロック      1回注入 28
胸部傍脊椎ブロック  カテーテル挿入 65
腹横筋膜面ブロック      1回注入 72
腹直筋鞘ブロック        1回注入 36
肋間神経ブロック                    1回注入   3
腸骨下腹・腸骨鼡径神経ブロック 1回注入 6(すべて小児)
腰神経叢ブロック(NSG)   1回注入 20
大腿神経ブロック        1回注入 32
坐骨神経ブロック
 傍仙骨部アプローチ(NSG) 1回注入 19
 傍仙骨部アプローチ(USG)  1回注入 3
 前方アプローチ        1回注入 1
 臀下部アプローチ      1回注入 3
 膝窩部アプローチ      1回注入 13(うち小児4)
 膝窩部アプローチ  カテーテル挿入 2
 膝窩部高周波熱凝固 2 
閉鎖神経ブロック 1回注入 6
外側大腿皮神経ブロック 1回注入 6
陰部大腿神経大腿枝ブロック 1回注入 12
陰部神経ブロック 1回注入 2
腕神経叢ブロック
 斜角筋間アプローチ1回注入 4
 斜角筋間アプローチ カテーテル挿入 1
 鎖骨上アプローチ1回注入 5
 鎖骨下アプローチ1回注入 2(うち小児2)
 鎖骨下アプローチ カテーテル挿入 1
 腋窩アプローチ  1回注入 1(うち小児1)
浅頚神経叢ブロック 1回注入 7
深頚神経叢ブロック 1回注入 3
星状神経節ブロック 1回注入 17
頸椎椎間関節ブロック 1回注入 6
腰椎椎間関節ブロック 1回注入 22
眼球周囲ブロック(blind) 1回注入 1
肩関節注入 1回注入 3
Scalp block(blind) 1回注入 10
大後頭神経ブロック 1回注入 7 (小児3)
仙腸関節ブロック 1回注入 4
成人腋窩静脈カテーテル挿入 7
乳児内頸静脈カテーテル挿入 1
乳児腋窩静脈カテーテル 1

Y先生の教育プログラム終了

Y先生が参加した名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラムが終了しました.新潟のジャイアンは新潟の最強ジャイアンに変化を遂げ,新潟に戻ります.彼のいる間,新潟大学麻酔科の英知が名古屋大学麻酔科に注ぎこまれ,両者にとってとても有意義な三ヶ月間になったと感じています.ここで身につけた超音波ガイド神経ブロックの技術が,新潟大学の最先端かつ最難関の手術をうける患者さんのために役立ってくれたらと思います.

プログラム終了認定証第2号.
真ん中は新潟のジャイアン.向かって左が西脇教授.
向かって右は昨日,人生初のセルフ散髪に失敗したpnbsiva.

今日はみんなが僕をみて,足を止める.

セルフヘアカットに失敗し,妻に助けてもらった僕は大胆なイメチェンに成功したようだ.会う人,会う人,みんないつものように挨拶しながら通り過ぎつつ,何か異常に気付いたのか足と止め,僕の頭に視線を送る.そして何事も言わずに,過ぎ去っていく.

トイレにいって鏡の自分を見ていたら,中学生のころ,校則に違反した髪をした友人が無理矢理,担任にバリカンで髪を切られたときの頭を思い出した.全体にまとまりがないうえに,一部に長い髪が残っている・・・みんな,見て見ぬふりしてる理由が分かってきた.

2011年6月28日火曜日

自分で散髪に挑戦!

僕は以前からずっと思っていたことがあるのです.自分で散髪できるんじゃないかって・・・.美容院に行っても,床屋にいっても,最終的な髪型はいつも同じ.毎回同じ髪型を見るうちに,これなら自分でできると思うようになっていました.ただ,それを実行するところまではいきませんでした.

ところが,先日,AmazonでPhilipsのセルフヘアカッタープロなるものを見つけて,それを手に入れてみました.これは1 ~ 30 mmまで髪の長さを調整しながら,自分で髪の毛が切ることができる代物です.之を使って,いつ自分で切ってみようかと悩んでいたのですが,明日はY先生の教育プログラム最終日.一緒に写真を撮らなければいけません.なのに僕の髪はボウボウでみっともない,切るなら今日だという結論に仕事中に達しました.

仕事から帰ると,夕食の準備に取りかかろうとする妻に,彼女が子供達の髪を切る際に使っている手作りマントを出してもらい,マントを首にとりつけ,ベランダに行きました.そして,セルフヘアカッターで一気に髪を切りました.アーミーヘアーになった自分を想像しながら・・・

途中で様子を見に来た妻が目を丸くしながら悲鳴をあげました・・・.差し出された手鏡で自分を見ると,物の見事にトラ刈りになった自分が映っていました.しかも,右側頭部には禿ができていました.仕方がないので,右側頭部にできた禿の部分の髪の長さを基準にして,セルフヘアカッターで妻に髪を切ってもらうことに.なんとか,人前に出ても恥ずかしくない状態にしていただきました.かくして,はじめて挑戦した散髪は物の見事に失敗に終わりました.セルフヘアカッターのはずなのに・・・

サンプルサイズの計算(7) 2グループの平均値の比較3

Anesth Analg 2008; 106:186-91では帝王切開術を脊髄くも膜か麻酔で受けた妊婦にTAPブロックを行い,TAPブロックでロピバカインを使用したものと生理的食塩水をしようしたもので比較しています.Primary Endpointは術後48hrにおけるモルヒネIV-PCAでのモルヒネ消費量としています.彼らは自分たちの予備研究から生食のみを使用した場合,つまり単に脊髄くも膜下麻酔だけされた患者の平均モルヒネ消費量(標準偏差)が80 (20) mgと分かっていました.そこでモルヒネ消費量がTAPブロックで25%減少すると見積もりました.

つまりTAPブロックをロピバカインで実施群と生食で実施した群の術後48hrのモルヒネ消費量の差を20 mg,標準偏差20 mgとしたわけです.αエラーを5%,検出力80%として,Sample size calculator for clinical rearchに入力していきます.

計算結果は1グループ16人,合計で32人の被験者が必要だとわかります.ドロップアウトする人を考えると,1グループ20名,合計で40人の被験者が必要となります.

ところが,この論文のサンプルサイズ計算の結果を読むと,1グループ20人,合計で40人という計算結果が出て,最終的には1グループ25人,合計で50人の被験者を集めたとしています.研究者の採用した計算式が違うのだと思います.JMPでのサンプルサイズ計算でも17人,合計で34人となっていますので,このアプリと同じ計算式を採用していると思います.ひょっとして,研究者達の計算ミス??

2011年6月27日月曜日

持続傍脊椎ブロックカテ入れ10本

新潟のジャイアンのブロック研修が終了間際ということもあり,最後の試練を与えました.持続傍脊椎ブロックカテ入れ10本の荒行を課しました.1日で10本のカテーテルを入れるのです.Y先生は6本まで順調でしたが,7本目からへばり始め,10本目には針先も描出できなくなりました.最後の最後に師匠としての腕前を見せつけ,本研修における最後の胸部傍脊椎ブロックとしました.恐らく,一人の麻酔科医が1日で10本の持続胸部傍脊椎ブロックを実施するのは世界記録じゃないかと思います.
荒行,持続傍脊椎ブロック10本を終えたY先生と師匠Pnbsiva.
Y先生のコメント
「午前中は順調だったんですが・・・.悟りを開くにはまだま修行が必要なようですorz」

サンプルサイズの計算(6) 2グループの平均値の比較2

サンプルサイズ計算の根拠として平均値とSDが提示されている論文を使ってみましょう.平均値の差とSDを入力すれば,SampleCalcで問題なく計算されます.ここではSamle size calculator for clinical researchと言うアプリをつかってみたいと思います.

Regional Anesthesia and Pain Medicine 2011;36:241-8のサンプルサイズ計算を見てみましょう.この論文は,腹腔鏡下大腸切除術をうける患者を対象として,術後腸管機能回復をリドカイン静注併用塩酸モルヒネIV-PCAと硬膜外麻酔を比較した論文です.Primay Endpointは手術終了後から腸管機能回復までの時間(hr)とし,t検定で解析しています.

サンプルサイズ計算をするために,硬膜外麻酔とリドカイン静注に関する腸管回復時間の平均値(mean)の差と標準偏差(SD)を見積もらないといけません.この論文では,Ann Surg 2005;241:416-23から硬膜外麻酔の腸管機能回復時間のmean (SD)は48 (20) hrと見積もっています.一方,Anesthesiology 2007;106:11-18からリドカイン静注の腸管機能回復時間のmean (SD)を 32 (19) hrと見積もっています.αエラーは5%,検出力は80%としています.

iphoneアプリのSample size calculator for clinical researchを起動します.まず2グループの平均値の比較なので,「Two-sample parallel design: Mean 1 vs Mean 2」を選択します.
帰無仮説は「リドカイン静注と硬膜外麻酔の腸管機能回復時間は同じ」ということを検討するので,「Equality」というのを選択し,「Sample size」を選択してから右矢印の青丸をタップします.mean 1に32,mean 2に48を入力します.標準偏差は20と19と近い値なので,20で近似してしまいます.19でも19.5でもサンプルサイズ計算の大きな問題にはなりません(どうせ見積もりなんですから).Effect sizeはここまで入力すると,勝手に計算されます.あとはAlpha(αエラー)に0.05,Power(検出力)に0.8を入力します.するとサンプルサイズが25となります.1グループに25人,合計で50人の被験者が必要ということになります.最終的には,研究者らは途中でドロップアウトする人が出てくることを見越して,1グループ30人,合計60人の被験者を集めています.

2011年6月26日日曜日

サンプルサイズの計算(5) 2グループの平均値の比較1

僕は統計を勉強しようとしているうちに,サンプルサイズが計算できるパソコンソフトとしてJMP,StatMateを,iphon用アプリでBioCalc,SamleCalc,Sample size calculator for clinical researchと買いそろえていました.実はサンプルサイズの計算式にはたくさんの種類があり,ソフトによりどの計算式を採用しているかことなります.よって,同じ条件を入力しても数値が異なってきます.まずは値段も手頃なので,iphoneアプリを使ってサンプルサイズを計算してみようと思います.

Regional Anesthesia and Pain Medicine 2011;36:261-5で,Brian Mらがサンプルサイズ計算をどうおこなったかをみてみましょう.この論文は,足の手術をうける患者に超音波ガイドに膝窩部坐骨神経にカテーテルを留置する際に針先から0 - 1 cm挿入した群と5 - 6 cm挿入した群で鎮痛効果を比較したものです.0 - 1 cm挿入群のほうが鎮痛効果がよいだろうと仮説をたてました.primary EndpointとしてNumbering Rate Score (0 - 10)を使って評価しようとしています.そこでCan J Anaesth 2010;57:919-926を基に,両群のNRSの差を1.5,両群のSD(標準偏差)を2.5と見積もっています.αエラーを5%,検出力1-βを80%と設定しました.

この論文では,両群のNRSの平均値が掲載されていません.この場合はSampleCalcを使ってみましょう.なぜなら両群の平均値ではなく,差とSDを入力するようになっているからです.
SampleCalcを起動し,平均値を使ってサンプルサイズを計算するために下段にある「μ mean」をタップします.次に,2群平均値の比較をするので上段の「2Mean」をタップします.


αに0.05,βに0.2,予測される差としてμ2-μ1に1.5,両群のSDとしてσに2.5を入力します.そこまで入力すると,Nに45と出力されます.このサンプルサイズはそれぞれの群に45人必要だという意味です.合計で90名の患者さんに臨床研究に参加してもらうことになります.
最終的には,Brian Mらは臨床研究を始めてみたときに,SDが見積もりより大きな値をとったときにさらに多い人数がいないと検出力を担保できないので,最終的にサンプルサイズを各群50人,合計で100人としています.
SDが2.5から3.0に増えたときは
サンプルサイズが45から64に増えます.

2011年6月25日土曜日

元宇品公園の大クスノキに会ってきました.

今日は,広島で開催された第3回痛みを考える会で講師として話をさせていただく機会を得ました.僕が広島を出たのは2001年12月末,そのころは宮島の近く廿日市市に住んでいましたので,広島市内は1999年以来,散策したことがありませんでした.折角の機会なので,朝早く名古屋をでて,広島市内散策をしました.広島散策といっても,目的は元宇品公園に行くことでした.

広島大学医学生のころは広島港近くの宇品に住んでおり,よく元宇品公園(国立公園)で遊んでいました.元宇品公園は海に面した国有林の山で,自然がたくさんの残っています.山を上がりきったところには宇品灯台があり,広島の海の安全を見守っています.この灯台の側に樹齢300年の大きなクスノキがあり,学生時代は,よくここで自分の将来を考えていました.このクスノキのところまで一緒に登ってくれた人とは一緒になることはありませんでしたが,今の自分の姿をクスノキに報告しに行ってきました.300年もの間に,いろんな人達の出会いを見てきた大クスノキに会わずに広島を出てしまったことが,ずっと気になっていたのです.当時は,この大クスノキにもたれかけながら汗を拭いたもんですが,今は残念ながら近づけないようにロープが張られていました.ロープ越しに大クスノキに触れて,また元気をもらって山を降りてきました.スーツのまま山に登ったので,汗だくだくのまま,夕方6時の講演をさせていただきました.
僕の知っている大クスノキは,硬い土に根を張り,根はほとんどが土からむき出しのまま
元気に立っていました.当時から,根を人に踏まれて削れていました.その状態で
この大クスノキは,たくさんの人を温かく迎えてきたわけです.みんなこのクスノキに抱きついて
「わー大きい」と感動していました.子供達は,むき出しになった根を平均台にようにして遊んでいました.
300年もそうして人と触れあってきたのに,このままでは大クスノキが腐ると言って,
人を遠ざけるようにロープを張らせた樹木医の判断が正しいとは思えません.
大クスノキは人に触れてもらい,人に元気を与えることを天命とされたのです.
僕は人に触れられもせずに長生きすることを大クスノキが望んでいるとは思えません.
この大クスノキに耳をあてることができる日が早く戻ってきて欲しいです.
医療が時として余分な介入をすることで,患者さんの人格,尊厳を奪ってしまうことがあります.
樹木医は大樹が長持ちすることばかりを考えず,人に元気を与える大樹としての姿を守って欲しい.
それは大樹から人を遠ざけることではない.

2×4工法はあっという間

基礎がようやくできたなと思っていたら,3日程度であっという間に家の形ができてしまいました.2×4工法というのは,基礎をやっているうちに別の場所で家の壁を作ってしまうので,あとは運んで組み立てるだけ.いわゆる大黒柱はなく,面で家を支えます.家を建てるというと,大工さんが木の特徴を読んで,鉋で削ってびったりとした形を作るというイメージがありましたが,鉋をもつ大工さんの姿はありません.麻酔と一緒で,家を建てる方法もどんどん進化しているですね.

フロンヴィルホームズ名古屋で建てています.大工さんも信頼できる人達で,間違っていると,「ごめん,そこ間違ってるから直せ!」と指示を出しています.いわゆる欠陥住宅の主たる原因はケアレスミスだと言います.家の建築も医療と同じく,ヒューマンエラーをいかに無くすかなんだと気付かされます.医療と違い,建築では現場での二重チェックというシステムは確立されていません.欠陥住宅を建てさせないことを目的とした本の多くは,建築におけるヒューマンエラーを詳細に説明しています.医療で言うインシデント報告書なわけで,僕はそれを読みながら,図面をみて,ちゃんと同じようになっているか,毎晩チェックしています.フロンヴィルホームズ名古屋は現場に施主が勝手に入ることを許可し,現場での透明性を確保しています.これは,手術の状況を患者家族がテレビモニターで見られるようにしていることと同じですね.
リビングです.2階の出っ張っているところに螺旋階段が
つながります.はしごが置いてある置くがキッチンになります.


X Waveで麻酔を楽しむ

iphoneで脳波解析をするアプリX Waveを以前紹介しました.YASU先生に人柱になるようにアドバイスをうけ早速購入しました.先週にはうちに届いていたのですが,ようやく箱をあけました.まずは自分に試してみました.ヘッドマウント型のセンサーは1 cm × 1.5 cmの金属板なので,BISのようにセンサーをいちいち新しいものに替える必要はありません.センサーの金属板とそれが付着する左の額をアルコール綿で拭いておきます.センサーに単4電池(付属していません)をいれ,コードをiphoneのイヤフォーン挿入口に差し込みます.あとは電源をいれえ,アプリを起動すればOKです.自分に使ってみて,YASU先生が指摘していた筋電図に反応している可能性はないと思いました.脳波シグナルにノイズが入ると,poorの表示がされ,問題がなければGoodの表示がされます.

脳波を周波数解析して,δ (0.5 - 2.75 Hz),θ (3.5 - 6.75 Hz),Low α (7.5 - 9.5 Hz),High α (10 -11.75 Hz),Low β (13 - 16.75 Hz),High β (18 -29.75 Hz),Low γ (31 -39.75 Hz),High γ (41 - 49.75 Hz)に分けて,どの成分が多く出現しているかトレンド表示しています.

X Waveの各脳波成分のトレンドとBISのCSA

次に麻酔中の患者さんに着けてみましたが,麻酔中は変化の仕方がゆっくりで,δ波とθ波が多く出ていました.
Propofol, ketamine, Remifentanilで麻酔中の
トレンド.主にδ波,θ波,α波が観察されていました.
BIS値は50代.
麻酔から覚醒してくると,脳波成分の変化が次第に激しくなり,γ波が多く観察できました.BISのCSAやDSAを観察して麻酔をしているようなものです.生の脳波波形がでると,もっと面白いですね.
覚醒直前のトレンド.γ波やβ波がたくさん出現しはじめました.

2011年6月24日金曜日

秋田のオオカミ,巣に戻る

一週間の実習参加を終えた秋田のオオカミ,F先生は僕たちに実習の成果を見せてくれました.自分の腰痛を自分で治すというのです.ブラックジャックのように鏡で超音波画像を見ながら,自分で腰椎椎間関節ブロックをし始めました.

しかし,途中で力尽き,Y先生にブロックをしてもらうことに・・・.

L5/S1の椎間関節ブロックをしたところ,立ちどころに痛みが消失.すっかり,ご機嫌になったオオカミは,ジャイアンに熱い抱擁.照れるジャイアン.

国が変われば,モデルも変わる

ドバイのPain Management Conferenceの運営方法について,向こうの先生といろいろメールで話しています.僕からは受講者のレベルで,グループ分けしたほうがよいというアドバイスをしました.そんなワクワクする異文化の人々とのコミュニケーションで,新しい発見をしました.ハンズオンワークショップで陰部神経ブロックや傍仙骨坐骨神経ブロックなど臀部周囲のブロックを担当するステーションでモデルを男性より女性にしたほうがよいというアドバイスがありました.男性はシャイだからお尻を見せることを嫌がる,女性はビキニをはき慣れていると・・・.イスラム圏だからむしろ女性が肌を露出することを敬遠するじゃないのかと感じましたが,イスラムの人たちも考えはいろいろなんだと思いました.むしろ,日本で女性にビキニをはいてもらってモデルになってもらうことのほうが,とうてい無理のような気がします.

日本のハンズオンワークショップでもビキニをきた女性がモデルになってくれる日が来るのかな?

2011年6月23日木曜日

僕の腕前

新潟のジャイアンこと,Y先生のプログラムが来週に終了となります.たくさんの症例をこなし,また一人,地域で神経ブロックの核となる麻酔科医を育てたという感慨にふけっていました.しかし,やはりY先生はジャイアンでした.

Y先生:「先生,実はいろんなところで,たくさんの人に訊かれるのです.」
Pnbsiva:「何が?」
Y先生:「Pnbsiva先生って,本当に上手なの?って」
Pnbsiva:「・・・」
Y先生:「実は,僕はほとんど先生の手技をみていないんですよ.だから返事に困って.」

ふと考えると,山形のK先生は時に手技を取り上げて,自分の技術を見せることがよくありました.しかし,Y先生には駄目なときにでも手技を取り上げることがありませんでした.今思えば不思議です.K先生は師弟関係を重んじるものの,Y先生はあくまでジャイアンであるために,僕もジャイアンとして付き合っている・・・ジャイアンは最後までやってしまうのがジャイアンなのだ.いずれにせよ,K先生もY先生も最後には,僕の思い描くイメージ通りに針を進めているので,ほぼ自分の画像が僕の手技と思ってもらえたらいい.

唯一,僕が師匠としての技術を見せたのは,Y先生が絶望を抱いた凝固機能が破綻した乳児への腋窩静脈カテーテル穿刺くらい.あれだけでは,こっそりと僕の技術が本物かどうか怪しむ人達への返事はできないかな?

サンプルサイズの計算(4)

サンプルサイズ計算の基礎です.下図にサンプルサイズ計算を導き出す式を記載してあります.細かいことを言ってもアレルギーが出てしまいますから,省略します.Zα/2とZβはαエラー,βエラーの確率を規定することで決まる数値です.サンプルサイズは,Primary Endpointとした項目の予測される差,両グループの標準偏差,αエラーの確率,βエラーの確率の4つを決めてあげると計算できます.通常はαエラーの確率は5%,βエラーは20%とします.そうするとZα/2は1.96,Zβは0.842と決まってきますから,つまり,僕たちはpilot studyや他の論文から両グループにおけるPrimary Endpointの差と標準偏差を調べておけばよいのです

市販のサンプルサイズ計算ソフトもいろいろ特徴があります.予測される差を直接入力するものと,2グループの平均値をそれぞれ入力すると,平均値の差をもって予測される差として計算するものもあります.2グループの標準偏差は同じだという設定が一般的ですが,ソフトによってはそれぞれの標準偏差を入力するようになっているものもあります.さらには,サンプルサイズが両グループで違っている状況も計算して出してくれるものもあります.

2011年6月22日水曜日

サンプルサイズの計算(3)

はじめに行うサンプルサイズ計算はあくまで他の論文から集めてきた数値で計算されますので,実際に正しいとは言えません.Primary Endopointで予測した差や両グループの標準偏差が大きくことなることもあります.よって,Primary Endopointで見積もった差や両グループの標準偏差が変化したときにサンプルサイズがどう変化していくかも調べておきます.さらに,それぞれの条件で検出力を90, 80, 70%としたときのサンプルサイズも計算しておきます.その中で最大値をサンプルサイズとして決定しておくと,状況が変化しても検出力を担保することができます.もちろん,最大値のサンプルサイズが施設で確保できるかも考えなくてはいけません.

2011年6月21日火曜日

超音波ガイドCV穿刺のバトルは・・・

秋の臨床麻酔学会で,超音波ガイドCV穿刺に関して平行法と交差法のバトルが繰り広げられるはずでしたが,何故か交差法の話も僕がすることになってしまいました.YASU先生が期待したバトルはなくなってしまいました.平行法の理論武装について,Y先生と尾張越後連合(名古屋大学と新潟大学)をつくって話の展開をいろいろ考えていましたが,突然の知らせに拍子抜けしてしまいました.

サンプルサイズの計算(2)

サンプルサイズを計算する前に,次の7項目をあらかじめ決めないといけません.
1)自分が予定している臨床研究のPrimary Endpointは何にするか?
2)それをどういった統計解析で検討するか.
3)検出される差がどれくらいか.
4)Primary endpointで測定する項目のばらつき(標準偏差)
5)αエラー:有意差がないのにあるとしてしまう確率.
6)βエラー:本当は有意差があるのにないとしてしまう確率.
 検出力1-β:有意差があるものを,しっかりと有意差があると検出する確率.
7)実際に何人くらい患者を集められるかの把握.

例えば,下腹部開腹術における硬膜外麻酔とTAPブロックの鎮痛効果を比較する場合に,他の論文の結果から数値を見積もっていきます.
1)鎮痛補助で使用するモルヒネIV-PCAにおける術後48hにおけるモルヒネ消費量を
2)t検定を使って比較する.
3)硬膜外麻酔にIV-PCAを併用している論文から硬膜外麻酔群のモルヒネ使用量40 mg,TAPブロックにIV-PCAを併用している別の論文からTAPブロック群のモルヒネ使用量は50 mg.よって10 mgの差が検出されるだろうと考えます.
4)二つの論文から,両グループのモルヒネ使用量の標準偏差は30 mg
5)αエラーは通常,5%とします.非劣性試験では片側検定ですが,通常の臨床研究では両側検定とします.統計ソフトでは勝手に両側検定,片側検定を決めてくれますので,5%と入力すればいいだけです.
6)βエラーは20%.検出力1-βは80%とします.
7)うちの病院では,下腹部開腹術はA,B両先生がいつも同じアプローチで手術していて,年間に40例近くこなしているから,1年半あれば結果が出せるはず・・・

ここまで,数値を見積もっておけば,あとは統計ソフトを使えばサンプルサイズを計算してくれます.

胸部傍脊椎ブロックカテ入れ 6本!

今日から秋田のオオカミと新潟のジャイアンのダッグで持続傍脊椎ブロックのカテ入れを行ってもらうようにしました.初の新潟大学コンビによるカテ入れは予想外に難しかったようで,Y先生は苦労していました.やはり介助するものも,それ相当の知識を持たないと案外だめなんだということに気付きました.ここで充分な経験を秋田のオオカミが積めでくれれば,新潟で胸部傍脊椎ブロックはすんなり軌道に乗るでしょう.6本というのは,この日一日で傍脊椎腔に挿入したカテーテルの数です.

2011年6月20日月曜日

サンプルサイズの計算(1)

臨床研究をしていく上でサンプルサイズを計算することが求められます.サンプルサイズの計算について,少し話をしていこうと思います.

サンプルサイズを計算する意義は,臨床研究を安全に,かつ効率的に信頼できる結果を出すためにあります.

サンプルサイズを計算せず,たくさんの患者を安全性の確立されていない治療に参加させることは倫理的に許されません.その治療がもし本当に有効でない場合に,たくさんの患者さんを危険にさらすことになるからです.さらに,ようやく獲得した科学研究費も無駄使いすることになります.

サンプルサイズを計算せずに臨床研究をして,その結果が「有意差があるとは言えない.」という結果が出た場合に,それが本当に有意差がないということなのか,単にサンプル数が少ないために本当は有意差があるのに,ないと結論づけてしまったのか分からなくなります.

2011年6月19日日曜日

日本麻酔科学会地方会の抄録文字数

日本麻酔科学会地方会の抄録も電子システムによる査読になりました.それに併せて,文字数も800文字と大幅に増えました.今回,若手2人の抄録作成の手伝いをしましたが,800文字だとかなりの情報を書き込めます.つまり,800文字制限では,これまで以上に正しく抄録を書くことを要求されます.これまで日本麻酔科学会総会の抄録も含めて,文字数制限が厳しすぎてとてもじゃないが,IMRAD (Introduction, Methods, Results, and Discussion)に必要な情報を充分に入力できないと感じてきました.統計学的手法も書けるはずもなく,発表者の統計解析の間違いを学会当日にならないと指摘できないこともありました.文字数を増やしたことで,学会発表の質を上げることにもつながるんじゃないでしょうか.もちろん,査読者もしっかりと査読することが要求され,これまでの地方会のように,なんでもかんでも発表させてあげる若手の発表の場のような雰囲気はなくなると思います.総会と同様に,演題として合否の判定,否の場合は何故駄目なのかを査読者は演題登録者にフィードバックしなければなりませんので,次第に査読に関する問題も浮き彫りになってくるのではないでしょうか.

輸血関連死の原因4つ

神経ブロックの事ばかり話しても,ブロックバカになってしまいます.時には違うことでためになるお話を.ASAのNEWSLETTERにあるACE Questionからの抜粋です.

アメリカの輸血関連死で最も多いのは輸血関連肺障害(Transfusion-related acute lung injury,TRALI)です.通常,輸血後2時間以内に低酸素,呼吸困難,発熱が生じ,6時間で最も重篤化します.病因は白血球抗体による非心原性肺水腫で,輸血製剤すべてで起きる危険性があります.多くは96時間以内で回復しますが,5-10%の死亡率があります.

輸血による敗血症は,血小板輸血でもっとも多く起きます.頻度は血小板輸血2000回に1例,血小板輸血を受ける12000人に1例.室温保存することが一番の原因らしく,血小板を4日保存するより,5日保存すると敗血症の頻度は5倍に増加します.血小板輸血後6時間以内の発熱では,常に敗血症に注意する.

溶血性輸血反応は,通常ABO不適合輸血で起きます.発熱,悪寒,胸痛,嘔吐の症状が起きますが,麻酔中はマスクされてしまいます.麻酔中は低血圧,ヘモグロビン尿,出血傾向が唯一の症状になる.

HCVやHIVなどの輸血関連感染症は核酸技術で検出するようになり希になってきている.HCVは1/600,000,HIVは1/800,000の頻度です.

2011年6月18日土曜日

リドカイン静注を使いこなす(2)


リドカイン静注は硬膜外麻酔も末梢神経ブロックもできない状況において麻薬と併用して実施すべき鎮痛法と言えるかも知れません.
Mingkwan Wらは,腹腔鏡下大腸・直腸切除術を受ける患者を対象に,リドカイン持続静注併用モルヒネIV-PCAが術後早期回復に与える影響について硬膜外麻酔と比較しています.

リドカインは麻酔導入前に1.5 mg/kgを投与後に,術中は2.0 mg/kg/h,術後は1.0 mg/kg/hで術後48時間投与します.モルヒネIV-PCAはバックグラウンドなし,ボーラス1.0-2.0 mg7分置きとしています.硬膜外麻酔はT7/8でカテーテルを挿入し,術中は0.25%ブピバカインを5-10 mlをワンショット後に,5.0-8.0 ml/hで持続投与し,術後は0.1%ブピバカイン1.0-15 ml/hで投与してます.両鎮痛法ともnaproxenacetaminophenも定期投与して,multimodalな鎮痛をしています.

早期回復プログラムにおける評価項目,術後初めての放屁,腸管運動,はじめての飲水,食事全量摂取の時期,ベット離床時期,PONV,入院期間など,すべてで有意差がありませんでした.術後鎮痛に関しては,大腸切除では有意差がありませんでしたが,直腸切除では硬膜外麻酔のほうが有意に低くなっていました.

体幹の末梢神経ブロックが消化器外科手術に実施できない状況というのは,かなり少ないと思いますが,もしブロックすらできない状況の場合はリドカイン静注も考慮してみるとよいですね.

2011年6月17日金曜日

秋田のオオカミ現る‼

今日から一週間、新潟大学からもう1人麻酔科医が超音波ガイド神経ブロックの実習のために名古屋大学病院に来ています。秋田のオオカミこと、F先生です。すでに四肢に関してはたくさんブロックをしており、新潟ではブロックのパイオニア的存在ということです。Y先生が持続傍脊椎ブロックのテクニックを持って帰るには手技を理解してくれる人がもう一人いたほうがよいと思うので,F先生には是非,手技を覚えて帰ってもらいたいと思います.新潟大学では肝胆膵外科グルーブが体幹の神経ブロック&麻薬静注のほうが明らかに硬膜外麻酔より痛がっていないということで,神経ブロックに対する理解を示しはじめたとのことです.

今日はペインクリニックでの胸部傍脊椎ブロックと星状神経節ブロック,平行法による腋窩静脈へのCVカテーテル留置を見ていただきました.

それにしても,中堅から若手クラスで大学の垣根を越えて交流がとてもすばらしいことだなと今更ながら感じます.様々な意見が聞け,自分が置き忘れてきてしまった麻酔科医としての初心を思い出させてくれます.人事交流の波が国内で起きるとよいなと思います.
名大麻酔科の赤ずきんちゃんを襲おうとする“秋田のオオカミ”.
その後で悪代官のような笑みを浮かべる新潟のジャイアン.

リドカイン静注を使いこなす(1)

リドカイン静注は鎮痛作用,抗痛覚過敏作用,抗炎症作用があることがわかり,現在はmultimodalな急性痛管理のひとつとして捉えられています.

僕が研修医の頃,リドカイン静注は不整脈の治療以外に,気管支喘息や虚血性心疾患がある患者さんへの気管挿管で交感神経を抑制する目的に使っていました.気管支れん縮や頻脈や血圧上昇を防いでくれました.でも,当時の僕はリドカイン静注の意味を理解していませんでした.麻薬の薬物動態シミュレーション簡単にできるようになると,気管挿管時の交感神経を麻薬で抑えることが簡単になり,リドカイン静注を使うことはなくなりました.

その後,広島から愛知に転居し,バイト先の病院で大先輩の麻酔科医が大腿骨頚部骨折をプロポフォール持続投与とリドカイン静注100 mgを使って,自発呼吸下に全身麻酔する姿を見て,こんな使い方があるんだと驚きました.その時に「もし大災害で麻酔薬がなくなったら,リドカイン静注で全身麻酔をすればいいんだよ.」と教わりました.その時に初めて,リドカイン静注と全身麻酔が自分の頭の中でリンクしました.でも,リドカイン静注を鎮痛薬として理解するのには,もっともっと時間がかかりました

2011年6月16日木曜日

生存分析の活用(2)

イベント発生率をカイ2乗検定ばかりで統計解析するより,生存分析をしたほうが面白いという話をもう一つ.

人工関節置換術を受けた患者は,末梢神経ブロック併用フェンタニル持続静注と硬膜外麻酔のどちらが痛がっているのだろうかと思いました.そこで,後ろ向き研究となりますが,鎮痛補助薬使用状況を収集することにしました.術後24時間以内の鎮痛補助薬を使用した「1」,使用していない「0」というデータのみをエクセルに入力していきます.もしこれだけの情報しか収集しなかったのなら,単にカイ2乗検定しかできません.少し大変ですが,手術室退室から最初の鎮痛補助薬使用開始時刻までの時間を調べます.すると,Kaplan-Meier曲線が描かれ,術後どれくらい経過した時点でそれぞれの術後鎮痛法で痛みが出始めるかわかります.
調べてみると,実は硬膜外麻酔のほうが患者は早く鎮痛補助薬を必要としていることがわかります。手術室を痛み無く、健やかに帰って行く患者の顔は実は病棟で直ぐに失われていることが予想できます.もちろん,これは後ろ向きな検討なのでさまざまなバイアスが存在します.鎮痛補助薬の投与時間に関する記載が正しかったのか疑問が生じるわけです.鎮痛補助薬投与が看護師の都合で行われ,投与時刻の記載も看護師の都合で行われているような病院では,このデータは全く信頼性のないものになります.しかし,このデータを集めた病院は鎮痛補助薬の投与を患者さん側の立場でタイミング良く行い,すぐに記載していましたので,ある程度は信頼できる結果と言えます.

2011年6月15日水曜日

バトル?!

日本臨床麻酔学会メールマガジン第3号を読んでいて、「えっ!」って、思わず声を出してしまいました。「皆さん、CV穿刺は交差法(短軸法)、平行法(長軸法)のどちらを採用していますか? このパネルディスカッションでは、 その対決を観ることが出来ます。」と書いてあります.

いつの間に対決になったの?

この際だから,みんなが楽しんでもらえるように,俳優になって対決を演じて見せよう・・・

手術麻酔における一日で実施したブロック数の記録更新

これまで手術麻酔で超音波ガイド神経ブロックを一日に実施した最高記録数は,前勤務地での16でした.今日は予定手術に加えて,緊急手術すべてでY先生と一緒に超音波ガイド神経ブロックを行い,一日のブロック数が17となりました.気付けば最高記録を更新していました.今日はY先生と一緒に当直ですので,もっと増えたりして・・・

「人間(じんかん)至る所,青山有り」と言います.まさにY先生は故郷を出て,今名古屋で躍進中であります.しかし,今日の彼に当てはまる言葉は「人間(にんげん)至る所,神経有り」と言ったところでしょうか・・・.

生存分析の活用(1)

麻酔関連の臨床研究に生存分析を活用する話しをしようと思います.
何かのイベントの発生率を2群間で比較したいときに,カイ2乗検定を使う方法もあります.これを生存分析で比較することもできます.そうすると予想外に自分のデータが面白く見えてきます.僕は以前,整形外科手術を末梢神経ブロックとフェンタニル持続静注をして術後鎮痛している場合と硬膜外麻酔で術後鎮痛している場合があっときに,術後24時間でどちらがPONVを起こしやすいのかu後ろ向きに検討したことがあり,それを例に話します.

ある一定期間に人工関節置換術をうけた患者200人(各群100人)のPONVのデータを調べました.単にエクセルにPONVが起きた「1」,起きなかった「0」と入力していき,最終的にこのデータをカイ2乗検定で比較すると,術後24時間までにPONVがどれくらい発生したかを単に比較するだけになってしまいます.これに手術室退室からPONV発生までの時間を収集するだけで,生存分析ができてしまいます.Kaplan-Meier曲線が描かれ,術後24時間までのいつの時点でPONVが発生してくるかまで一目瞭然となり,面白くなります.術後24時間目でPONVに差がでてくるような場合はLog-rank検定で有意差をみて,術早い時点のPONV発生に重みが置かれるような場合はGehan-Breslow-Wilcoxon検定で有意差を見ます.
このKaplan-Meier曲線から,途中経過においてもPONVの発生推移に違いはないなと分かります.つまり,末梢神経ブロックしてフェンタニル持続静注をしても,硬膜外麻酔をしても,PONVの推移は有意差があるとは言えないわけです.麻薬静注のほうがPONVが多いと言っていた人たちは,この結果をみて,びっくりしていました.後ろ向き研究であるため,バイアスが存在します.よって,この結果をもとに前向き研究をおこなっていけばよいのです.尚,生存分析では両群の数を合わせる必要はありません.この評価のとき,たまたま100人ずつそろっただけです.

2011年6月13日月曜日

神経内注入(7)

針先が神経に触れた瞬間に,プッツと筋膜を貫いた感触を得られます.これまでは,その感触は神経周囲の筋膜を貫いた感触として教科書には説明されてきました.実際には,これは神経上膜を針先が貫くときの感触だったわけです.

これまで紹介した文献から判断すると,1)blunt needle tipを使って,2)非神経束組織の多い部位でのアプローチでは,3)ほんのちょっと針先が神経上膜を貫くだけの神経内注入を目指してもよいのではないかと思います.よって,超音波ガイド神経ブロックを神経刺激ガイドと併用する場合は,針先が神経と接触する瞬間を確実に描出する能力がとても重要です.そして,神経上膜を貫くときの針操作はgently, gently, ジェットリーです.


2011年6月12日日曜日

基礎ができました.

ようやく家の基礎ができてきました.写真の左手前は家の南側で庭に面した部分です.螺旋階段をつけたので手前の基礎の部分が螺旋階段にあわせて丸く飛び出ています.右側は東に面し,ウッドデッキを作る予定です.写真の奥が北に面していて玄関となります.玄関の階段もすでにできていました.

フロンヴィルホームズ名古屋による建築になります.今後,
どのように家が建つのか楽しみです.

神経内注入(6)

末梢神経はすべて末梢神経というわけではないことに注意してください.
一本の末梢神経でも,神経束に対する非神経束組織の比は末梢に行くに従って大きくなります.椎間孔に近いところでは神経束の割合が高く,椎間孔から離れるに従い,非神経束組織の割合が高くなっていきます.坐骨神経の神経束と非神経束組織の比は,中臀部や臀下部では2:1で,大腿中間レベルや膝窩部では1:1となります(Anesthesiology 2009;111:1128-1134).腕神経叢も同様で,斜角筋間部や鎖骨上レベルでは1:1ですが,鎖骨下レベルでは1:2になります.腕神経叢ブロックでも坐骨神経ブロックでも,神経障害は椎間孔に近い部位でのアプローチの方が多く発生しています(Anesth Analg 2007; 104:965-974).

このことから,一本の末梢神経に対する神経ブロックでも,神経内注入が許容されるアプローチと許容されないアプローチがあると言えます.超音波画像でいうならば,神経束の割合が多い部位は神経そのものが低エコー性に描出され,非神経束組織が多い部位では高エコー性に描出され,その中に神経束が低エコー性に描出されて,ハスの種状に描出されてきます.腕神経叢ブロックなら鎖骨下アプローチから末梢が許容される.坐骨神経ブロックは,どのレベルでも良さそうですが,特に膝窩部は神経内注入をしても,神経束注入にはなりにくいと言えます.

一番最初に紹介したBigeleisenらの鎖骨上アプローチでは,まだまだ神経そのものが神経線維の塊で全体が低エコー性に描出されるので,彼らが言うように鎖骨上アプローチでの神経内注入は安全だという結果は鵜呑みにすべきではないと考えます.Boezaartらは,組織学的検討から椎間孔レベルの末梢神経は脊髄の延長と考えるべきだと主張し,このレベルでの神経ブロックではTuohy針を使用することを推奨しています.

2011年6月11日土曜日

リングネーム

どうもY先生と2ヶ月ほど一緒に麻酔をしていく中で気付いたことがあります.新潟の麻酔科医は一人一人,リングネームがあるのではないか・・・Y先生は,「新潟のジャイアン」と新潟大学の先生達から呼ばれていました.実は,来週末から,もう一人新潟大学の先生が実習に1週間だけ参加されます.その先生はどうやら「秋田のオオカミ」と呼ばれているようなんです.どうしてオオカミなのか,興味のあるところです.胸毛モジャモジャ?,それともすぐに女性にアタックをかけるのか?
いずれにせよ,一人一人にリングネームのある麻酔科っていいですね.僕もリングネームをつけてもらおうかな.

神経内注入(5)

神経内注入の是非を問う場合には針先の種類にも注意すべきです.

まず,教科書的に末梢神経の組織像をおさらいします.神経線維を神経周膜が束ねて神経束を作ります.神経周膜は結合組織の鞘で,機械的な力に非常に強くなっています.神経上膜が,この神経束を何本も束ねると,一本の末梢神経ができます.神経束と神経束の間にある非神経束組織はコラーゲンと脂肪組織が構成していて,機械的な力には弱くなっています.つまり,末梢神経は神経束と非神経束組織の二つで構成されていて,神経束は硬い神経周膜で覆われ,非神経束組織はルースなわけです.

Blanchらは,冷凍保存解剖用死体の坐骨神経を使って,sharp needle tipとblunt needle tipが神経内穿刺をした際の軌跡を組織学的検討をしています.彼らは,それぞれの針で5本ずつ坐骨神経を穿刺し,合計520本の神経束を観察しました.sharp needle tipでは4本(3.2%)の神経束に損傷を認めたが,blunt needle tipでは神経束損傷は全く起きなかったと報告しています.

blunt needle tipを使う限り,神経束は機械的な力に強い神経周膜に囲まれているので,針先から逃げて損傷を受けることない.そして,針は非神経束組織を通っていく.一方,sharp needle tipを使うと,頻度は少ないが神経周膜を貫いて神経束を傷つける危険性があるわけです.

2011年6月10日金曜日

名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム第2回打ち上げ

新潟のジャイアンこと,Y先生のプログラム修了の打ち上げを行いました.まだ実習が3週間残っているのですが,僕が6月は出張続きで予定が詰まってしまっているために,今日の打ち上げとなりました.Y先生のご要望で和食による会食となりましたが,チーム金曜日の自称コンシェルジュことAA先生がこれまた,とても美味しい料亭を手配してくれました.愛知の地酒で気分が良くなったY先生は,麻酔科医向けの替え歌を歌ってくれました.

ふと気付けば,すでにa先生がsurgical ICUに配属となり,Y先生も6月末で新潟に戻ってしまうわけです.そうなると,チーム金曜日は僕とAA先生の二人だけになってしまいます.7月からはチーム金曜日ではなく,コンビ金曜日になるわけです.
手前向かって左が新潟のジャイアン,右がa先生,
左奥がAA先生,右奥が僕です.

我いまだ木鶏たりえず

牛乳のような麻酔薬で有名な会社がアポイントを取って,わざわざ僕に面会しにきました.「先生の御施設で区域麻酔のワークショップを開きましょうか・・・?まだ確約とまではいきませんが・・・,ご要望があれば講師の先生をお呼びして3時間程度のものを・・・.こちらさまでは,先生が積極的に区域麻酔をされているとお聞きして・・・,とりあえずご相談をと思いまして・・・」と言ってこられました.

これまで○○の会で講師としてお話してくださいというのはよくありましたが,講師をお呼びしましょうかと言われたのは今回が初めてで,相手の言っていることを理解することができず,主旨を理解するために何度も聞き直してしまいました.

神経内注入(4)

末梢神経ブロックによる経損傷の原因は,神経内注入から神経束注入へと現在は変遷しています.

Fernando Rらはブタの腕神経叢と大腿神経にUSとNSを使って24本の神経内注入をした後,組織学的検討を行っています.針にはStimuplex Bを使用して,超音波ガイド下に神経の真ん中にまで針先がくるまで刺入してインディアインクを注入しています.神経内注入の超音波画像と神経の組織像を見比べると同時に,NSの最低刺激閾値および注入圧も調べています.神経内注入の超音波画像は,薬液の注入と同時に神経が膨化していきます.組織学的には,神経内注入を示していましたが,神経束注入になっているものはありませんでした(95%CI, 0 - 16.3%).神経内に穿刺した時の最低刺激閾値は0.2 - 3.3 mAで,注入圧は0.07 - 31.5 psi (80%は0.61 - 15 psi)という結果になっています.

最低刺激閾値に関しては,これまでのヒトの研究と同様,0.2-0.5 mAは神経内注入になっていないという安全神話が当てにならないことを示す結果になっています.注入圧は,一般的に20 psi以上では神経内注入になっていると言われてきましたが,それより随分低い注入圧でも神経内注入が起きていることがわかります.この論文から言えることは二つ.神経刺激ガイド法におけて安全を保証してきた手段(刺激閾値,注入圧を指標)でも,神経内注入が起きていた可能性が高いこと.しかし,神経内注入は神経束注入にはなってないということです.

この論文は,欧米のUSG-RAの指導者達には「神経内注入と神経束注入は超音波では区別が付かない.」ことを証明するものとして受け取られています.そうでしょうか?

2011年6月9日木曜日

神経内注入(3)

D Morauらは,NSで膝窩部坐骨神経ブロックを100人の被験者に行って,rapid onsetとなる局所麻酔薬の拡がり方を超音波画像で評価しています.ブロック30分後に坐骨神経が完全知覚遮断になる割合は,ドーナッツサインを呈したブロックのほうが,ドーナッツサインを呈さなかったブロックより高かった(73% vs 43%, P = 0.0035)ということです.この論文で面白いのは,坐骨神経が総腓骨神経と脛骨神経の二つに分離する画像(これは神経内注入で見られる現象です)を呈したブロックでは15分後には,知覚も運動も完全遮断されていること.そして,坐骨神経の前後径が15%膨化した神経内注入では,他の拡がり方より完全遮断となる率も圧倒的に高く,onsetも早いということです.この研究においても,神経損傷は発生していません.(Regional Anesth and Pain Med 2010;35:559-64)

彼らは神経内注入を避けるべきという風潮から,ドーナッツサインがよいと結論づけています.しかし,本当の結論は,神経内注入が早く,完璧にブロックしたいときに目指す局所麻酔薬の拡がりだとも読むこともできます.神経内注入=悪という保守的な考えが,結論をねじ曲げてしまっている気がします.

2011年6月8日水曜日

神経内注入(2)

Robardsらは,USとNSを使って膝窩部坐骨神経ブロックを行い,最低刺激閾値における針先と神経の位置関係を調べてきます.24人中20人(83.3%)で,針先が神経内に刺入されないと筋収縮が得られなかったとしています.坐骨神経の最低刺激閾値は0.35 - 1.2 mAとなっています.残り4人では神経内に針が刺入されていたにも関わらず,1.5 mAでも筋収縮が得られませんでした.彼らの神経内注入でも神経学的合併症は生じていません(Anesth Analg 2009;109:673-7).

Sala Blanchらは,NSでの膝窩部坐骨神経ブロックを行って,42人中28人(66%)で神経内注入が起き,1週間後において神経損傷を示す症状は無かったとしています(Br J Anaesth 2009;102:855-61).

やはり坐骨神経ブロックでも,神経刺激ガイド法で知らず知らず,神経内注入をしてきたのではないでしょうか.

2011年6月7日火曜日

神経内注入(1)

僕は上下肢の末梢神経ブロックは超音波ガイド(US)と神経刺激ガイド(NS)の両方を併用しています.坐骨神経ブロックを膝窩部で行うと,必ず神経内注入になります.神経刺激器を0.5 mAに設定して,刺入しています.針先が神経に当たっても,全く筋収縮はでません.神経上膜を貫いて,ようやく筋収縮が始まります.そこで局所麻酔薬を注入すると,神経が膨らんでいき,脛骨神経と総腓骨神経の二つに分離したり,どちらかの成分が裂けていく画像が見られます.全例,MIAによって深鎮静でブロックを行っています.それでも今まで神経学的合併症を経験していません.そこで神経内注入について,考えてみたいと思います.

まずは,NSによる末梢神経ブロックがこれまで安全であったかを考えたいと思います.末梢神経ブロックによって6ヶ月以上持続した神経後遺症の頻度は1000 blocksにつき0.4(Reg Anesth Pain Med 2009;34:534-41)と低く,これまでの末梢神経ブロックは安全に行われてきたと言えます.神経刺激ガイド法では,通常0.2-0.5 mAで最低刺激閾値が得られたところで,局所麻酔薬を注入します.<0.2 mAでは神経内注入の可能性があるから局所麻酔薬を注入してはいけないというのが常識となっています.

Bigerleisenらは腕神経叢ブロック鎖骨上アプローチで神経刺激の最低刺激域値と神経内注入の関係を超音波画像で調べています.被験者の54%で最低刺激域値が0.2-0.5 mAでも神経内注入が起き,10%では> 0.5 mAでも神経内注入が起きたとしています.結論として,最低刺激域値が0.2 mA未満では神経内穿刺が起きると言えるが,0.2 mA以上であっても神経内穿刺は否定できないとしています.この論文では,神経内注入が起きても合併症は起きていません(Anesthesiology 2009;110:1235-43).

この文献から言えることが,我々が腕神経ブロック鎖骨上アプローチを神経刺激ガイドで行ってきた中で,かなりの症例で知らず知らず神経内注入を冒しているということです.

(ただし,個人的な意見としては,鎖骨上レベルでの腕神経叢は神経内注入は危険だと考えています.その理由は追々,説明します.)

超音波ガイドCV穿刺について

正式に沖縄でお話させていただけることになりました.タイトルが"エコーガイド”と和製英語になっているのが気になりますが,それはそれ.あまり拘らずに自分の考えを秋に述べたいと思っています.話の内容はやはり平行法での方法論です.

超音波ガイド神経ブロックでも同様なのですが,平行法をどう行うべきかという教育が,これまであまりなされてきませんでした.ワークショップでは,低い台に載せたボランティアを中腰の姿勢で,中途半端な握り方でプローブをもって,画像を描出するだけでした.それでは,平行法で安全に針を刺すことはできないのです.これまでのワークショップが軽視してきた部分に光を当てるだけで,安全性はグット高まります.

名古屋大学のCV穿刺のガイドラインは有名なのですが,改訂作業が行われています.実は私はその改訂には全く携わっておりません。秋にお話する内容がうちのガイドラインとは思わないでください.あくまで超音波ガイド神経ブロック教育プログラムで、僕が教えている技術のひとつですので,あしからず.

2011年6月6日月曜日

もう一つの産科麻酔の神経ブロック (3):腹直筋鞘ブロック

最後に学会では触れられていない腹直筋鞘ブロックについて述べたいと思います.腹直筋鞘ブロックは帝王切開が縦切開で行われたときに適応としています.全身麻酔でも,脊麻でもどちらで行ってもよいです.妊婦では下腹壁動静脈が非妊婦より発達していますので,血管損傷を起こさないように下腹壁動静脈の走行には特に注意すべきです.帝切終了後の弛緩した妊婦の腹壁はグニャグニャですので,針を刺入する力加減に注意が必要です.臍下レベルでは,正確には弓状線より尾側では腹直筋鞘後葉がありません.腹直筋の後面を横筋筋膜と腹膜が直接裏打ちしているだけですので,ちょっと力加減を間違えると,腹腔内に針を刺入してしまう危険性があります.必ずTuohy針を使用してください.

2011年6月5日日曜日

あなたのハートにケタ注入

Facebookで肉食系?麻女Nagai先生が電車の中で見つけたイケメンに対するコメントに対して,Nakayama先生が言った一言.あまりに衝撃的な一言だったので,これは「multimodalな鎮痛」の合い言葉にしようと思った次第です.ケタミンを上手に使いこなそうということ.是非,弘前大学のHirota教授に伝えたいです.

iphoneで観察できる脳波モニター


XWave EEGと言って,iphoneに接続して各脳波成分を観察することができるモニターが販売されています.99ドルと安い.日本からだと輸送料金が余分に103.71ドルかかります.リサーチ用もあるようですが,脳波成分をみて遊びたいというだけなら99ドルで充分な気がします.麻酔導入と覚醒で見てみるとどうでしょう?

2011年6月4日土曜日

野口英世の左手の手術

日本医大に訪れるまで手術方法を全く知りませんでした.きっとメスで癒着を無理矢理剥離したのかなという程度にしか考えていませんでした.むしろ皮膚欠損の部分があって,本には左手が自由になったと記載してあっても,再度癒着して,そんなに自由に左手を使えなかったじゃないかと思っていました.ところが,橘桜会館に展示されている野口英世の左手の手術内容をみて,びっくりしてしまいました.当時,すでに有茎皮弁という技術があったんです.

日本医科大学で神経ブロックセミナー開催

今日は日本医科大学で開催された神経ブロックセミナーの講師としてお話をさせていただきました.内容は体幹の神経ブロックと下肢の神経ブロックについてでした.下肢では神経刺激ガイド腰神経叢ブロックと傍仙骨アプローチ坐骨神経ブロックも紹介させていただきました.高度救命センターがあり,たくさんの外傷が運ばれてくると思いますので,きっと日本医科大学で神経ブロックが鎮痛の主流になってくると思います.

今回は山形のK先生に僕の片腕として来てもらいました.インストラクターとして,みなさんにしっかりと説明をしていて感心しました.


会場は橘桜会館で,夏目漱石の住宅跡地でした.この会館の展示物がすごい.
野口英世の自筆の履歴書,野口英世が使用したのと同型のライツ社製顕微鏡,
志賀潔が描いたペスト菌のスケッチなどがありました(ペスト菌の発見は北里柴三郎).


 金曜日に東京入りして,日本医科大学麻酔科のみなさんと新丸ビルのSaltというお店で食事をしました.美味しいコース料理と東京の麻酔科事情をいろいろ聞けて,楽しい時間を過ごすことができました.医局長HK先生ありがとうございました.ちなみに医局長のHK先生と群馬の麻女は兄姉であることをこのセミナーをきっかけに知りました.びっくり,でもよく見ると顎のラインはそっくりです.



もう一つの産科麻酔の神経ブロック (2):Pudendal Nerve Block

Paracervical Blockの次ぎは,Pudendal Nerve block(陰部神経ブロック)を紹介します.Pudendal nerve blockは,泌尿器科の検査,直腸検査,ペインクリニック領域で会陰部痛の治療として専ら行われています.

Pudendal nerve blockは自然分娩第2期もしくは吸引分娩で実施されます.会陰切開の修復にも鎮痛効果を発揮します.会陰切開と同じ側の陰部神経ブロックを行っておくと,分娩後48時間の座っているときや歩行時の痛みが少なく,鎮痛薬の使用量も減ります(Anesth Analg 2008;107:625-629).砕石位を取り,肛門の上縁を通る水平線と坐骨結節内側縁の交点を刺入点とします.神経刺激器を2 mA, 1 Hzで設定し,100 mm長の通電刺激針を刺入します.肛門括約筋やクリトリスのTwichが得られるまで刺入し,最終的に0.5-0.6 mAでTwichが得られているところで,0.75%ロピバカイン15 mLを分割注入します.

現在,Pudendal nerve blockは超音波ガイドで実施可能です.仙尾靱帯と仙結節靱帯の間に挟まれる陰部動脈を描出して行う方法です.他の方法でも可能ですが,それは自前の方法なので内緒にしておきます.

2011年6月3日金曜日

もう一つの産科麻酔の神経ブロック (1): Paracervical block

学会で産科麻酔の神経ブロックというのが取り上げられていたが,あれだけでよいのだろうかと思っていました.今の麻酔科医ができる範囲でしか産科麻酔の神経ブロックを見ていないことに疑問を感じていました.そこでもう少し広い視野に立って,ここで取り上げておきたいと思います.麻酔科医がやろうが,やるまいが知っておいて損はない(逆に言えば,いつでもやるチャンスは訪れる)という意味で紹介します.

Paracervical blockという手技があります.これは膣円蓋の外側に局所麻酔薬を注入する手技です.その手技の変遷には安全性を求めた産科医の意気込みを感じます.Paracervical blockは正常妊娠の分娩第1期,子宮口が2-8 cm大に開大したら行われます.膣円蓋の外側3-4時,8-9時の二カ所に局所麻酔薬を5 mlずつ注入します(現在は3時と9時には血管があるので,2, 4, 8,10時を刺入点としている文献もあります).このブロックが紹介された当初は,針を15-25 mm深く刺入するとされていました.しかし,血管内注入による徐脈や胎児死亡が問題となりました.文献を時代毎に読み進めると,その刺入深度は浅くなっていきます.6-12 mmの刺入深度で,合併症の頻度は減少し,最終的には3 mmのところ,つまり膣上皮直下に注入することで,徐脈は一過性のものとなり,その頻度は1.0% (Acta Obstet Gynecol Scand 1975;54:9-27)となっています.ブロックによる母子の急変による緊急帝王切開もゼロとなっています.

Paracervical blockは妊婦,胎児の酸素飽和度,新生児臍帯血のPH,新生児の神経学的所見に悪影響を与えないことが明らかになっています.

2011年6月2日木曜日

ひそかに人気急上昇の名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラム

僕がおこなっております名古屋大学超音波ガイド神経ブロック教育プログラムですが,密かに人気急上昇で問い合わせが多くなっています.まずは,所属施設の部長の許可を頂いた上でご連絡いただけたらと思います.その上で,プログラム参加時期の調整を行います.まだ僕一人で教育している状況なので,一定期間にお引受けするのは一人としています.僕の片腕となる人が現れるまでは,細々とやっていく予定です.

手作り経鼻エアウェイによるMIA (2)

Barry L Friedbergの手作り経鼻エアウェイは,その後,換気困難挿管困難なリウマチ患者さんに応用してみました.その患者さんは人工股関節置換術後すぐに股関節前方脱臼を起こし,緊急徒手整復術を受けることになったのです.前回の麻酔記録から換気困難と挿管困難が予測されました.ベット移動もままならない患者さんにY先生がストレッチャー上で大腿神経ブロックを行い,鎮痛を図りました.その後,ベットから手術台に移動.手作り経鼻エアウェイで気道を確保し,MIAで鎮静,徒手整復を行いました.下顎挙上もままならない患者さんだっただけに,手作り経鼻エアウェイの良さを実感できました.

何度かFriedberg先生とはメール交換していますが,僕と同じようにMIAを整形外科領域に使っている麻酔科医がアメリカに一人いるようです.

2011年6月1日水曜日

Vibra, a先生!

6月1日をもって, a先生がチーム金曜日から去り,Surgical ICU勤務となります.彼がチーム金曜日に来たときから,平行法による超音波ガイド下腋窩静脈穿刺を体得してもらつつもりでした.最初から腋窩静脈穿刺を超音波ガイド下にするのは難しいので,まずは腰椎椎間関節ブロックで平行法による針先の描出能力の感を養ってもらっていました.椎間関節ブロックで椎間関節にブロック針を刺入できるようになったのを見計らって,腋窩静脈カテーテル挿入に挑んでもらいました.針先を描出できる能力を養ってきた彼は何の問題もなく,すんなりとやり遂げました.針先が静脈壁を貫通する時のTentingに対する対処にはコツがいりますが,針先さえ描出できれば安全に手技を行うことができるわけです.その後も食道外科手術で,自分一人で超音波ガイド下に腋窩静脈カテーテル留置をしている姿をみて,もうこれでチーム金曜日卒業だなと確信しました.また,集中治療からペインクリニックに戻ってきたら,一緒にチームを組めたらと思います.教えていないブロックがたくさんあるので・・・

超音波ガイド中心静脈カテーテル挿入で発言するチャンスが到来!

11月の臨床麻酔学会で,超音波ガイド下中心静脈カテーテルのことで話をする機会を頂けるかもしれません.僕は常日頃から鎖骨下(腋窩静脈)は,交差法ではなく,平行法で行うべきだと主張してきました.そのことをようやく公の場で主張できるのでうれしい限りです.今までの日本における鎖骨下でも交差法という風潮を一掃してしまうやも・・・.

手作り経鼻エアウェイによるMIA (1)

リウマチ患者で環軸椎亜脱臼,下顎の後退,開口障害も認める場合,まずもってマスク換気も難しくなる.少しだけのつもりで鎮静をしたら,後悔先に立たず状態に陥ったことがある人も多いのではないでしょうか?僕はプロポフォールとケタミンによる深鎮静:Minimally Invasive anesthesia (MIA)で末梢神経ブロックをします.当然,リウマチ患者さんもいるわけです.

MIAの考案者Barry L FriedbergMIAは口腔外科の日帰り手術でも,MIAを使用しています.僕自身はMIAで舌がん患者さんへの浅側頭動脈カテーテル留置の麻酔管理を気管挿管せずにたくさんやってきました.名古屋大学に移籍して,インプラント治療で全身麻酔がどうしても嫌という患者さんにMIAを使ったことがありました.浅側頭動脈カテーテル挿入では下顎を触ることはなかったので気道は上手く通りました.しかし,インプラント治療では,開口で下顎を押すと,気道を塞がれてしまうのです.市販の経鼻エアウェイを挿入してみましたが,その患者さんには合わず,結局,全身麻酔に切り替えました.

そこで,Barry L Friedbergに連絡を執りました.「あなたはインプラント治療で使っていると記載しているが,開口操作によって気道がふさがってしまう.どうしたらインプラント治療でMIAを使えるのか教えてください.」と質問をぶつけてみました.彼は本には記載していないコツがインプラント治療のMIAにはあることと教えてくれました.それが手作り経鼻エアウェイです.カフ無し気管チューブのサイズ5,6をお湯につけ軟らかくしておき,それを患者さんの鼻に突っ込んで,気道が通るところまで進める.チューブ先端の位置が決まったら,外鼻孔のあたりで気管チューブを適切な長さに切断する.そうすることで,すべての患者にあったエアウェイができ,MIAによるインプラント手術が可能となるわけです.