2011年6月11日土曜日

神経内注入(5)

神経内注入の是非を問う場合には針先の種類にも注意すべきです.

まず,教科書的に末梢神経の組織像をおさらいします.神経線維を神経周膜が束ねて神経束を作ります.神経周膜は結合組織の鞘で,機械的な力に非常に強くなっています.神経上膜が,この神経束を何本も束ねると,一本の末梢神経ができます.神経束と神経束の間にある非神経束組織はコラーゲンと脂肪組織が構成していて,機械的な力には弱くなっています.つまり,末梢神経は神経束と非神経束組織の二つで構成されていて,神経束は硬い神経周膜で覆われ,非神経束組織はルースなわけです.

Blanchらは,冷凍保存解剖用死体の坐骨神経を使って,sharp needle tipとblunt needle tipが神経内穿刺をした際の軌跡を組織学的検討をしています.彼らは,それぞれの針で5本ずつ坐骨神経を穿刺し,合計520本の神経束を観察しました.sharp needle tipでは4本(3.2%)の神経束に損傷を認めたが,blunt needle tipでは神経束損傷は全く起きなかったと報告しています.

blunt needle tipを使う限り,神経束は機械的な力に強い神経周膜に囲まれているので,針先から逃げて損傷を受けることない.そして,針は非神経束組織を通っていく.一方,sharp needle tipを使うと,頻度は少ないが神経周膜を貫いて神経束を傷つける危険性があるわけです.

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