2011年4月11日月曜日

下肢切断術(3) 戦略と抗凝固療法

下肢切断術の患者さんは,抗凝固療法を継続している場合は多々あります.下腿切断術は大腿神経と坐骨神経のふたつだけを遮断すればよく,しかも2つとも表在性なので超音波ガイド神経ブロックであれば,抗凝固療法中でも実施可能です.もちろん,超音波ガイド神経ブロックに習熟した麻酔科医がブロックの指導をすることが大前提です.

一方,大腿切断では,僕は抗凝固療法を考慮してブロックします.抗凝固療法を行っていない場合には,超音波ガイド神経ブロックは選択しません.腰神経叢ブロック後方アプローチ(大腰筋筋溝ブロック)&坐骨神経ブロック傍仙骨部アプローチを神経刺激ガイドで行います.この組み合わせでブロックをすると,臀部を含め,鼡径靭帯より末梢(いわゆるパンティラインより末梢)の下肢の手術は何でも対応ができます.大腿部に分布する神経がたくさんあるにもかかわらず,たった二つの穿刺で全てを遮断できることが気に入っている点です.

抗凝固療法を行っている場合には,大腿神経,閉鎖神経,外側大腿皮神経,坐骨神経,後大腿皮神経を一つずつ超音波ガイドでブロックしていきます.局所麻酔薬の濃度を希釈することで,局所麻酔薬の投与量が多くならないようにします.大腿後面の皮膚を支配する後大腿皮神経は仙骨神経叢の枝ですが,坐骨神経とは異なる神経です.この神経は,坐骨神経ブロック殿下部アプローチより近位レベルの坐骨神経ブロックでないと確実に遮断できません.通常は傍仙骨アプローチをしています.臀下部アプローチでも,局所麻酔薬が神経に沿って近位側に拡がると,後大腿皮神経は遮断されていることがありますが,その精度は調べてないのでお勧めはしません.

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