2011年4月7日木曜日

重症下肢虚血痛や皮膚潰瘍に対する持続坐骨神経ブロック

ペインクリニックで重症下肢虚血痛や皮膚潰瘍に対する疼痛治療を依頼されることがあります.いろいろなオプションがあると思います.脊髄刺激電極,持続坐骨神経ブロック,高周波熱凝固による坐骨神経末梢枝の破壊術など.

外科的治療が可能であるが,痛みのために全身状態が悪化しているような場合,僕は持続坐骨神経ブロックを選択しています.持続坐骨神経ブロックによって,睡眠と食欲が改善し,手術を受けるだけの体力を回復した患者をたくさん経験しました.

整形外科手術後の持続坐骨神経ブロックでは運動機能を維持しながら痛みを取るために0.15%ロピバカインといった低濃度で行いますが,この程度の濃度では重症下肢虚血痛は治まりません.もっと濃度を高くしてあげる必要があります.しかし,はじめから高濃度で投与すると,ブロックによる痺れから患者さんが嫌がることがあります.まずは低濃度で開始し,患者さんの反応をみて,より高濃度に変更していきます.0.25~0.3%くらいまでは濃度をあげます.

注意すべき事が2点あります.一つは,完全な無痛はありえないことです.坐骨神経は人類最大の神経ですから,すべての神経線維を遮断するなんて無理です.患者さんにあらかじめ説明しておかないといけません.もう一つはカテが抜けてしまうことが頻回に起きる点です.ペインクリニックで行う持続坐骨神経ブロックでは,痛みが緩和されることで活動性が上がり,カテーテルが抜けやすくなります.ここが術後鎮痛に使う場合と異なります.

重症下肢虚血痛の患者は,透析をしている患者さんも多々います.当然,局麻中毒を気にする人も多いかと思います.僕自身は,60例の慢性腎不全合併重症下肢虚血痛患者に持続坐骨神経ブロックを行ってきました.0.2%ロピバカイン4-6 ml/hで投与して,0.75%ロピバカイン10 mlの単回注入を一日1-2回繰り返しても,局麻中毒は発生していません.

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