2011年4月28日木曜日

超音波ガイド神経ブロックの考え方(5):すべての痛みをブロックで遮断する必要はない

手術に超音波ガイド神経ブロックを導入するときに,痛み刺激の伝達経路すべてをブロックで遮断する必要はありません.伝達経路の一部でもよいから,ブロックしていきます.それが技術を身につける早道でもありますし,multimodal approachの一歩でもあります.

まずは,どんな末梢神経ブロックができるか考えます.それが痛みの経路を全て遮断するのか,一部しか遮断しないのかを解剖学的に考えるわけです.それにより,フェンタニルの使用量を考慮していきます.部分遮断の場合は,術中からフェンタニルの効果部位濃度を高く維持します.

完全遮断であるけれど,単回注入で終わる場合は,術中はそれほどフェンタニル効果部位濃度をあげる必要はなく,ブロックの効果が切れた時間帯に痛みを軽減できる効果部位濃度になるようにフェンタニル術後持続投与を調整します.

完全遮断で持続神経ブロックも行う場合も注意してください.腕神経叢ブロックのように術中も完全遮断,術後も完全遮断できるようなときは,術中術後にフェンタニルは不要です.術中にレミフェンタニルのみを投与して,PONVの発生をできるだけ抑えます.一方,腰神経叢ブロック&坐骨神経ブロック&持続大腿神経ブロックのように,術中は完全遮断であるが,術後は部分遮断というときには,持続大腿神経ブロックに加えてフェンタニル静注を併用しておく必要があります.少なくとも翌朝まではフェンタニルを投与しておくとよいと思います.

全体を通して,レミフェンタニルはそれぞれの状況に応じて増減して併用すればよいと考えます.
このように「まずはブロック,次ぎに麻薬」という方向性で考えていくと,どんな手術にでも何かしらブロックはできます.

0 件のコメント:

コメントを投稿