ブロック後の患者さんが痛みを訴えたときこそ重要なことに気づくチャンスなんだという経験談をもう一つ.前に勤務していた病院で,トラックに巻き込まれて腕を不全切断し,ショック状態で緊急搬送されてきた患者さんがいました.僕は,この緊急手術をMIAによる深鎮静と持続腕神経叢ブロックで管理しました.しかし,僕が術翌日に病室に訪問すると,患者さんは「痛い,痛い」と泣いていました.手術は腕神経叢ブロックのカテーテルでうまく管理できていたので理由がわかりませんでした.ところが,包帯が巻いてある切断端を触っても患者さんは顔をしかめることもありません.確かに腕神経叢ブロックのカテーテルはちゃんと痛みを遮断していました.痛いと言っていた理由は別のところにあったのです.トラックに巻き込まれたわけですから,全身を強く打撲しています.これにより全身が痛かったわけです.そのときの自分は急性痛管理として手術部位しか見ていなかったのです.それ以来,
急性痛管理では患者さんのトータルな痛みを管理することに気を配るようになりました.僕が末梢神経ブロックに必ずオピオイドを加えるようにアドバイスをするのも,こうした経験からです.
柴田先生
返信削除滋賀県の今井秀一です。
楽しく拝見しています。
「急性痛管理では患者さんのトータルな痛みを管理することに気を配るようになりました」
今回の話こそ、先生が言われたい言葉だな、と深く感銘を受けました。
・ブロックや痛み止めをしたから・・
という言葉をよく聞き(おそらく自分も使っているだろう)ますが、トータルな急性期管理への対応であり、行った事の経過観察とともに、他の所見の観察が重要だと思いました。
あらためて「木を見て森を見ず」を忘れないようにしたいと思います。
雑文で申し訳ありません。
今井先生,コメントありがとうございます.タイミングよく,ブログに書いたことと同じ状況の患者さんを麻酔していました.
返信削除いつぞやはご相談のお返事ありがとうございました。
返信削除確かにブロックしたはずだから、痛み止めを入れたからいいや、といった思い込みは良くないですね。いろいろな視点から考えたいです。
群馬は今日あたりが桜満開です。