2011年4月4日月曜日

ブロック後に患者が痛みを訴えたとき(1)

時にブロックが失敗したことの理由を問うメールを頂くことがあります.全身麻酔からの覚醒後,患者が痛みを訴えた時に,ブロック失敗しちゃったんだと悲観的になってはいけません.失敗の理由を考えることで,誰も知り得なかったことを発見することがあります.僕自身,まだTAPブロックが世に出る随分前から体幹の神経ブロックを開腹術で応用していました.自分が麻酔管理を行えば,患者は痛みなく覚醒するのに,他の麻酔科医と交替すると患者が痛みを訴えて覚醒してきました.当時の仲間で,「体幹の神経ブロックなんて効果ない.」と陰口を叩く者もいました.しかし,このときに何故そうなのかを突き詰めた結果,開腹術では腹壁の体性痛管理と内臓痛管理の二つのベクトルに分けて管理すべきなんだという考えに気づいたわけです.解剖学的には当たり前のことですが,末梢神経ブロックを開腹術に応用すれば,体性痛と内臓痛の二つを分けてコントロールできることに気づいた人は僕以外に誰一人としていませんでした.陰口を叩いているものがいることを知ったときには残念な思いでしたが,考えるきっかけを作ってくれたことには感謝しています.

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