2013年1月13日日曜日

鎖骨上アプローチによる超音波ガイド鎖骨下静脈穿刺


自分の外来では、血液内科の患者さんが化学療法を行う前の中心静脈カテーテルを留置して欲しいという依頼が圧倒的に多い。この場合、カテーテル感染のリスクを減らすために、腋窩静脈穿刺を基本としている。しかし、体格がかなりよい人だと、腋窩静脈が皮膚からかなり深い位置にあるため、穿刺がとても難しくなることがある。そのような場合は、鎖骨上窩にプローブを置いて超音波ガイド鎖骨下静脈を穿刺するとよい。肥満患者では、丁度よい深さに鎖骨下静脈が描出されてくる。鎖骨上窩にカテーテルが固定されるので、内頚静脈穿刺と比べて、患者がカテーテルの存在を気にすることが少ない。

鎖骨上での鎖骨静脈穿刺は、腕神経叢ブロックの鎖骨上アプローチの延長と考えても、差し支えない。つまり、腕神経叢ブロックの鎖骨上アプローチの十分な経験がある人はなんなくこなせる。
腕神経叢ブロックの鎖骨上アプローチでのプローブの位置から、走査面を前下方にしゃくりあげるようにすると、鎖骨上窩で鎖骨下静脈を描出できる。この鎖骨下静脈をさらに内側に追っていくと、鎖骨下静脈が無名静脈に合流する部分が描出される。この部位で、無名静脈穿刺をしてもよい。
注意すべきなのは、鎖骨下静脈あるいは無名静脈が描出されている画像上に針を描出させる能力がいる。鎖骨下静脈あるいは無名静脈が描出されている画像上に針が描出されない場合は、穿刺を続けるのではなく、刺入点を変えなければならない。ちょっとでも、プローブを動かすと、動脈が描出される。プローブを動かして、針を描出した途端、刺入経路上に動脈が位置する危険性を充分に認識してください。



鎖骨上窩から鎖骨下静脈を描出。
画面の右が外側、左が内側


無名静脈への穿刺。
画面右が外側、左が内側

2013年1月12日土曜日

アダモちゃんと腋窩静脈カテーテルの方向修正(3)

アダモちゃんとは、芸人の島崎俊郎が昔、おれたちひょうきん族で演じていた原住民のキャラクターです。手を外転して、頸をすこしかしげる感じで、「アダモちゃんで~~~す」とやっていました。

内頚静脈、鎖骨下静脈が無名静脈に合流する部分まで、ガイドワイヤーを引き抜き、頭側に向かって、しなっていたガイドワイヤーのしなりがとれたら、次ぎのように、アダモちゃんの姿勢をとります。

介助の看護師さんに上肢の肩関節を90°以上外転してもらいます。肩関節は手のひらを上に向けておかないと、90°以上外転しませんので注意してください。肩関節を90°以上、外転することが、ガイドワイヤーを心臓に向かわせる点で重要です。

同時に、患者に穿刺側に顔を向け、頸を穿刺側に側屈してもらうように頼みます。プローブは皮膚から離し、プローブを充てていたところ(内頚静脈、鎖骨下静脈、無名静脈の合流部)を手で圧迫します。これにより、内頚静脈を圧迫で虚脱させることで、頭にガイドワイヤーが向かわないようにします。

アダモちゃんの姿勢がとれたら、ガイドワイヤーを再度、挿入します。これで確実にガイドワイヤーは心臓に向かいます。

アダモちゃんの姿勢

アダモちゃんと腋窩静脈カテーテルの方向修正(2)

超音波ガイド腋窩静脈カテーテル留置では、ガイドワイヤーを留置した後、穿刺側の内頚静脈の短軸像を描出し、内頚静脈が無名静脈に合流するまでをスキャンします。無名静脈に合流していくあたりでは、腕神経叢ブロック鎖骨上アプローチでのプローブの位置から、超音波ビームをさらに前下方に向ける(プローブをしゃくり上げる)感じになります。

ガイドワイヤーが心臓に向かっていると、鎖骨下静脈が無名静脈に合流するあたりで、胸膜のカーブに沿って、心臓に向かうガイドワイヤーの一部が描出され、内頚静脈にはガイドワイヤーは認めません。

もし、ガイドワイヤーが頭に向かっていると、内頚静脈にガイドワイヤーがhyperechoic dotとして描出されます。虚脱した内頚静脈壁に挟まれてしまっているときは、ガイドワイヤーが頭側に向かっていても気付かないことがありますので、注意してください。

内頚静脈短軸像でガイドワイヤーを認める場合、ゆっくりとガイドワイヤーを抜きます。内頚静脈短軸像で、ガイドワイヤーが消失した瞬間が、ガイドワイヤー先端が走査面を横ぎった瞬間です。そこからは、ガイドワイヤー先端を追いながら、ゆっくりとガイドワイヤーを抜いていきます。そのまま、内頚静脈と鎖骨下静脈が無名静脈に合流するところまで、ガイドワイヤーを抜いてきます。頭に向かって、しなっていたガイドワイヤーがまっすぐに戻るのを画像で確認します。ここまで、きたら、アダムちゃんのポーズを患者さんにとってもらいます。

 

2013年1月11日金曜日

アダモちゃんと腋窩静脈カテーテルの方向修正(1)

いわゆる鎖骨下穿刺による中心静脈留置で、一番困るのはカテーテルが頭に向かってしまうことです。超音波ガイド下腋窩静脈穿刺では、胸部レントゲン写真を撮らなくても、内頚静脈を描出すればガイドワイヤーが頭に向かっているかは一目瞭然です。ただし、ガイドワイヤーが頭に向かっていることが分かっても、それを修正できない若手が案外と多いです。超音波ガイドで、ガイドワイヤーを心臓方向に修正する方法について述べたいと思います。ヒントはアダモちゃんです。ガイドワイヤーの方向を修正しようと、透視を使っている麻酔科医もいますが、透視は不要です。

2013年1月10日木曜日

SSJECの体幹ブロックコースはしばらくお休み

SSJECの体幹ブロックを1-2ヶ月の1回のペースで行ってきましたが、昨年末に体力的な限界を感じ、しばらくはお休みを頂くことにしました。そんなに講義をやらなくても、みなさんが、それなりに安全にできるようになったのではないかと思う次第です。また、形を変えて、初夏に再開する予定です。

2013年1月8日火曜日

呼吸器外科専門麻酔研修医

麻酔科にも二ヶ月間、研修医が来て修練を積みます。自分は呼吸器外科手術の麻酔を担当するようにしていますが、そのときに一緒に麻酔をする研修医をいつも同じ先生に決めています。呼吸器外科専属で充てるようにして二人目で、今はN先生です。彼らは、呼吸器外科専門研修医と名付けたくなるくらい呼吸器外科手術の麻酔に習熟していきます。N先生に限って言うと、彼は肺全摘術、胸壁合併肺葉切除も難なくこなせます。右用のダブルルーメンチューブも使いこなして、術中に酸素飽和度が低下すると、気管支鏡をのぞいて位置ズレの修正まで判断できます。

一人の先生に同じ手術を徹底的に叩き込ませることで、「プロフェッショナルな仕事というのは、同じ事を同じように繰り返していくことの連続で、仕事に型(かた)が出来ると上手になる。応用なんてものはなく、あくまで型のレパートリーが増えるだけ。」ということに、早い段階で気付いてもらえます。

こうした取り組みの利点は、。医師教育の面だけでなく、麻酔の質も高いレベルで保てるのでよいと思います。

2013年1月3日木曜日

戦時、戦後を生き抜いた母の言葉

戦時、戦後の厳しい時代を生き抜いた母は、酒類販売業という商売柄、沢山の人を雇ってきた。そんな母や同業のお仲間、つまりは、70歳代で今なお、現役で仕事をする人達は、若い人が生活保護や年末の炊き出しでご飯をもらっている姿に対して厳しい。彼らから見れば、不況といわれている、このご時世でも仕事は腐るほどある。雇い主からみると、人には2タイプいる。ひとつのことを言えば、何も言わないでも、仕事をみつけてやっていく人。そういう人は、仕事が長続きする。一方、ひとつのことを言っても、そのひとつのことでさえ、しっかりとできない人がいる。そういう人は、雇ってあげても、たいていは数日で仕事を辞める。半日仕事をして、半日分の給料だけ欲しいと言って、辞めていくという。彼らに共通するのは、生活が自立できていないという点。

この話を正月に聞いて、自分の子育てで欠けている部分があることに気づいた。社会に出たときに社会に求められる人という観点が抜けていた気がした。父親が社会性を教えるという意味で、このことに注意して、子育てをしていきたい。