2011年6月16日木曜日

生存分析の活用(2)

イベント発生率をカイ2乗検定ばかりで統計解析するより,生存分析をしたほうが面白いという話をもう一つ.

人工関節置換術を受けた患者は,末梢神経ブロック併用フェンタニル持続静注と硬膜外麻酔のどちらが痛がっているのだろうかと思いました.そこで,後ろ向き研究となりますが,鎮痛補助薬使用状況を収集することにしました.術後24時間以内の鎮痛補助薬を使用した「1」,使用していない「0」というデータのみをエクセルに入力していきます.もしこれだけの情報しか収集しなかったのなら,単にカイ2乗検定しかできません.少し大変ですが,手術室退室から最初の鎮痛補助薬使用開始時刻までの時間を調べます.すると,Kaplan-Meier曲線が描かれ,術後どれくらい経過した時点でそれぞれの術後鎮痛法で痛みが出始めるかわかります.
調べてみると,実は硬膜外麻酔のほうが患者は早く鎮痛補助薬を必要としていることがわかります。手術室を痛み無く、健やかに帰って行く患者の顔は実は病棟で直ぐに失われていることが予想できます.もちろん,これは後ろ向きな検討なのでさまざまなバイアスが存在します.鎮痛補助薬の投与時間に関する記載が正しかったのか疑問が生じるわけです.鎮痛補助薬投与が看護師の都合で行われ,投与時刻の記載も看護師の都合で行われているような病院では,このデータは全く信頼性のないものになります.しかし,このデータを集めた病院は鎮痛補助薬の投与を患者さん側の立場でタイミング良く行い,すぐに記載していましたので,ある程度は信頼できる結果と言えます.

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