2011年6月15日水曜日

生存分析の活用(1)

麻酔関連の臨床研究に生存分析を活用する話しをしようと思います.
何かのイベントの発生率を2群間で比較したいときに,カイ2乗検定を使う方法もあります.これを生存分析で比較することもできます.そうすると予想外に自分のデータが面白く見えてきます.僕は以前,整形外科手術を末梢神経ブロックとフェンタニル持続静注をして術後鎮痛している場合と硬膜外麻酔で術後鎮痛している場合があっときに,術後24時間でどちらがPONVを起こしやすいのかu後ろ向きに検討したことがあり,それを例に話します.

ある一定期間に人工関節置換術をうけた患者200人(各群100人)のPONVのデータを調べました.単にエクセルにPONVが起きた「1」,起きなかった「0」と入力していき,最終的にこのデータをカイ2乗検定で比較すると,術後24時間までにPONVがどれくらい発生したかを単に比較するだけになってしまいます.これに手術室退室からPONV発生までの時間を収集するだけで,生存分析ができてしまいます.Kaplan-Meier曲線が描かれ,術後24時間までのいつの時点でPONVが発生してくるかまで一目瞭然となり,面白くなります.術後24時間目でPONVに差がでてくるような場合はLog-rank検定で有意差をみて,術早い時点のPONV発生に重みが置かれるような場合はGehan-Breslow-Wilcoxon検定で有意差を見ます.
このKaplan-Meier曲線から,途中経過においてもPONVの発生推移に違いはないなと分かります.つまり,末梢神経ブロックしてフェンタニル持続静注をしても,硬膜外麻酔をしても,PONVの推移は有意差があるとは言えないわけです.麻薬静注のほうがPONVが多いと言っていた人たちは,この結果をみて,びっくりしていました.後ろ向き研究であるため,バイアスが存在します.よって,この結果をもとに前向き研究をおこなっていけばよいのです.尚,生存分析では両群の数を合わせる必要はありません.この評価のとき,たまたま100人ずつそろっただけです.

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