2011年6月9日木曜日

神経内注入(3)

D Morauらは,NSで膝窩部坐骨神経ブロックを100人の被験者に行って,rapid onsetとなる局所麻酔薬の拡がり方を超音波画像で評価しています.ブロック30分後に坐骨神経が完全知覚遮断になる割合は,ドーナッツサインを呈したブロックのほうが,ドーナッツサインを呈さなかったブロックより高かった(73% vs 43%, P = 0.0035)ということです.この論文で面白いのは,坐骨神経が総腓骨神経と脛骨神経の二つに分離する画像(これは神経内注入で見られる現象です)を呈したブロックでは15分後には,知覚も運動も完全遮断されていること.そして,坐骨神経の前後径が15%膨化した神経内注入では,他の拡がり方より完全遮断となる率も圧倒的に高く,onsetも早いということです.この研究においても,神経損傷は発生していません.(Regional Anesth and Pain Med 2010;35:559-64)

彼らは神経内注入を避けるべきという風潮から,ドーナッツサインがよいと結論づけています.しかし,本当の結論は,神経内注入が早く,完璧にブロックしたいときに目指す局所麻酔薬の拡がりだとも読むこともできます.神経内注入=悪という保守的な考えが,結論をねじ曲げてしまっている気がします.

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