2011年6月3日金曜日

もう一つの産科麻酔の神経ブロック (1): Paracervical block

学会で産科麻酔の神経ブロックというのが取り上げられていたが,あれだけでよいのだろうかと思っていました.今の麻酔科医ができる範囲でしか産科麻酔の神経ブロックを見ていないことに疑問を感じていました.そこでもう少し広い視野に立って,ここで取り上げておきたいと思います.麻酔科医がやろうが,やるまいが知っておいて損はない(逆に言えば,いつでもやるチャンスは訪れる)という意味で紹介します.

Paracervical blockという手技があります.これは膣円蓋の外側に局所麻酔薬を注入する手技です.その手技の変遷には安全性を求めた産科医の意気込みを感じます.Paracervical blockは正常妊娠の分娩第1期,子宮口が2-8 cm大に開大したら行われます.膣円蓋の外側3-4時,8-9時の二カ所に局所麻酔薬を5 mlずつ注入します(現在は3時と9時には血管があるので,2, 4, 8,10時を刺入点としている文献もあります).このブロックが紹介された当初は,針を15-25 mm深く刺入するとされていました.しかし,血管内注入による徐脈や胎児死亡が問題となりました.文献を時代毎に読み進めると,その刺入深度は浅くなっていきます.6-12 mmの刺入深度で,合併症の頻度は減少し,最終的には3 mmのところ,つまり膣上皮直下に注入することで,徐脈は一過性のものとなり,その頻度は1.0% (Acta Obstet Gynecol Scand 1975;54:9-27)となっています.ブロックによる母子の急変による緊急帝王切開もゼロとなっています.

Paracervical blockは妊婦,胎児の酸素飽和度,新生児臍帯血のPH,新生児の神経学的所見に悪影響を与えないことが明らかになっています.

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