2011年6月12日日曜日

神経内注入(6)

末梢神経はすべて末梢神経というわけではないことに注意してください.
一本の末梢神経でも,神経束に対する非神経束組織の比は末梢に行くに従って大きくなります.椎間孔に近いところでは神経束の割合が高く,椎間孔から離れるに従い,非神経束組織の割合が高くなっていきます.坐骨神経の神経束と非神経束組織の比は,中臀部や臀下部では2:1で,大腿中間レベルや膝窩部では1:1となります(Anesthesiology 2009;111:1128-1134).腕神経叢も同様で,斜角筋間部や鎖骨上レベルでは1:1ですが,鎖骨下レベルでは1:2になります.腕神経叢ブロックでも坐骨神経ブロックでも,神経障害は椎間孔に近い部位でのアプローチの方が多く発生しています(Anesth Analg 2007; 104:965-974).

このことから,一本の末梢神経に対する神経ブロックでも,神経内注入が許容されるアプローチと許容されないアプローチがあると言えます.超音波画像でいうならば,神経束の割合が多い部位は神経そのものが低エコー性に描出され,非神経束組織が多い部位では高エコー性に描出され,その中に神経束が低エコー性に描出されて,ハスの種状に描出されてきます.腕神経叢ブロックなら鎖骨下アプローチから末梢が許容される.坐骨神経ブロックは,どのレベルでも良さそうですが,特に膝窩部は神経内注入をしても,神経束注入にはなりにくいと言えます.

一番最初に紹介したBigeleisenらの鎖骨上アプローチでは,まだまだ神経そのものが神経線維の塊で全体が低エコー性に描出されるので,彼らが言うように鎖骨上アプローチでの神経内注入は安全だという結果は鵜呑みにすべきではないと考えます.Boezaartらは,組織学的検討から椎間孔レベルの末梢神経は脊髄の延長と考えるべきだと主張し,このレベルでの神経ブロックではTuohy針を使用することを推奨しています.

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