2012年2月16日木曜日

片岡英樹先生との会食

このブログで以前,英語の参考書として紹介した「NASAに学ぶ英語論文,レポートの書き方」の訳・解説者,片岡先生と2時間半もお話できる機会を昨夜,得ることが出来ました.この本はNASA SP-7084というテクニカルライティングの本を片岡先生がNASAの許可を得て日本人向けに加筆し理解しやすくしたものです.宇宙に行くことに関して,誤解を招く記載は人の生死に関わる問題に発展します.そのため,NASAは誤解を招かないようにする英語の記述方法(テクニカルライティング)を決め,SP 7084という本にしたのです.

片岡先生はミシガン大学でレトリックrhetoricの技術を学ばれたそうです.レトリックとは修辞法という意味です.つまり,相手にわかりやすく説得する技法のことです.レトリックの技法そのものは実はアリストテレスの時代からあったそうで,その基本は変わってないそうです.競争社会の米国では,上司に自分の企画を伝えたい場合,そのレポートが少しでも読みにくいものであれば上司は読んでくれません.
レトリックの技法は自分が成功するために必要な知識であるため,多くの米国人がお金をつぎ込んで学ぶそうです.実は医学英語論文も同じなのです.有名な雑誌にもなると,専門用語や文法がいくら正しくても,少し読んで,疑問を感じるものであれば,その論文はrejectとなります.reviewerにNOと言わせない書き方としてレトリックが使われるのです.以前は,ビジネス英語の書き方,emailの書き方,英語論文の書き方など,様々な書く手法を解説したものがたくさんありました.しかし,これらすべて,レトリックという技法に集約されるわけです.如何せん,我々日本人は受験英語,大学では文学の英語を学ばされるために,社会人になっても,相手を納得させる(説得する)文章の英語の書き方を知らない(日本語だって同じ).人が社会で生きていくためには,レトリックの技法を知っておくことが大切なのに,そのことに多くの人が気づいていない.

英語論文作成に長けている人は,まさにレトリックを身につけた人であり,それさえ分かってしまえば,英語論文を書くことは苦痛にはなりません.ただレトリックは相手にNOと言わせない技術であるが故に注意しなければならないことがあります.データのねつ造が起こりうるのです.レトリックの技法を正しく使わず,実験結果もないのに論文が作成される.現に,これまでも論文ねつ造が報じられています.あくまで,正しく臨床研究や基礎研究がなされた上で,レトリックが使われなければなりません.
レトリックの内容について書かれた本として,「技術英文の書き方55のルール」をご紹介して頂きました.本の内容は,医学英語論文の書き方にも共通するものがあり,今後,このブログでも取り上げたいと思います.

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