2011年9月10日土曜日

超音波ガイド神経ブロックでの局所麻酔薬使用量

Regional Anesthesia & Pain Medicine 2011;36:393-398で超音波ガイド法で局所麻酔薬の使用量を減らすべきかを問う論文が掲載されています.

足関節手術を受ける患者を対象に,ankle blokを超音波ガイド法(USG)で実施される群と従来のランドマーク法(Landmark)で実施する群に分けて比較をしています.超音波ガイド法では0.5%ロピバカインの平均使用量は16 (2.1) ml,盲目的手技では30 ml使用しています.術後はアセトアミノフェン,ジクロフェナックを定期投与して,トラマドールをレスキューとして使用しています.

PACUでのブロックの成功率は両群とも同じで有意差がありません.しかし,術後24時間の平均ペインスコア,安静時最悪ペインスコア,トラマドール使用率は盲目的手技のほうが優れていました.

 PACUでのブロック成功率:USG vs Landmark ; 89% vs 80%
 術後24時間の平均ペインスコア:USG vs Landmark ; 1(0-4) vs 0 (0-2)  
 安静時最悪ペインスコア:USG vs Landmark ; 1 (0-6) vs 0 (0-2)  *median(10-90th percentiles)
 トラマドール使用率::USG vs Landmark ; 50% (34-46%) vs 20 % (10-36 %)  * (95%CI)

この論文では,我々が「超音波ガイド法では局所麻酔薬の使用量が減らせて,作用時間が長い」と思い込んだMarhoferらの臨床研究(腋窩神経ブロックにおける超音波ガイド法とランドマーク法の比較)が,作用時間を比較するには検出力が17%しかないことを考察しています.使用量を減らせることは事実としても,作用時間については鵜呑みにしてはいけないわけです.

局所麻酔薬が“末梢神経で痛覚の伝導を遮断する”作用と“血管内吸収後の全身作用による鎮痛”の二つの作用と持つと考えれば,この論文の結果には納得ができます.別の観点からみれば,麻酔のエンドポイントをどこに置くかで求める結果は違ってきます.手術麻酔を完遂できればよいと考えるなら,使用量を減らすことに意義があると思いますし,術後鎮痛としても期待するのなら,使用量は減らさないということのほうが大事でしょう.

0 件のコメント:

コメントを投稿