腋窩静脈を穿刺するとき,針先が静脈壁に当たっても貫けず,静脈壁はTentingを起こします.それに対して,患者さんに息こらえをしてもらうことをお話ししました.Tentingへの対処ですが,患者さんに息こらえをしてもらっている間に術者もひと工夫します.
術者は腋窩静脈がTentingするまでは刺入角度を変えずに刺入していきます.Tentingが生じたところで,針を皮膚に平行になるように寝かせつつ刺入していきます.針先で腋窩静脈をすくってくるイメージです.この状況で息こらえをしてもらうと,安全に腋窩静脈を穿刺できます.大事なポイントはTentingしてから刺入角度を変えるということです.刺入角度を変えることで,Tentingしつづけた腋窩静脈を貫いた瞬間に,肺も穿刺してしまうことを回避できます.烏口突起より内側になればなるくほど,腋窩静脈(鎖骨下静脈)と胸膜が近づくので,刺入角度を変えなければなりません.脱水が強く,腋窩静脈の虚脱が強い患者への穿刺では,このように針先で腋窩静脈をすくってくるような穿刺が有効です.Tentingしていないのに刺入角度を変えると,針先が腋窩静脈の上を滑るだけで,腋窩静脈を一向に貫くことができないので気をつけてください.
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