二つの治療法で痛みの評価を経時的に調べて,それを群間で比較したときに2要因の反復測定分散分析や混合モデル分散分析を使う話は,統計ソフトのところで話をしたと思います.これらの解析手法は治療法の違いによるVASの変化パターンに差があるかをみるときに使います.これらの解析手法を使用したときは,PCAポンプを使って塩酸モルヒネの累積使用量から術後鎮痛の優劣を付けたり,サンプルサイズを算出しています.逆に言うと,PCAポンプがあることが臨床研究に必要だったわけです.
ところが,違った解析手法で術後鎮痛を評価する論文もあります.単純に,術後の観察期間内で,どちらの治療のほうが患者さんが痛がっていないかを調べるのに,Area under the curve (AUC)を使っているのです.AUCの概念は,もともと薬の血中濃度推移を評価するときに使われます.薬剤血中濃度のAUC値が全身に吸収された薬剤量ということになります.VASでは,観察期間内の痛がっている程度を意味することになります.個々の患者でAUCを計算して,比較すればよいわけです.AUCの良い点は非劣性,同等性の検証もできることです.AUCの欠点は,各時点の変化パターンが分からないことです.術直後は無痛で,術翌日は痛みが強くなる鎮痛法と,術直後から総じて中等度の痛みがある鎮痛法をAUCで優劣をつけてしまうことへの評価も必要でしょう.
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