2011年1月28日金曜日

BISで何をみるか(2)

 BISのEMGは鎮痛モニターにもなります.EMGとは筋電図のことです.手術中の侵害刺激をコントロールしていないと,体動が生じます.実は,EMGが体動が生じる2-3分前に急上昇します.この現象は,整形外科の四肢手術を末梢神経ブロックと自発呼吸を残した全身麻酔で管理しているときに,体動があると観察できます.
 手術中の侵害刺激は,術野に加わる侵害刺激,気道確保(気管チューブ,LMA)による咽頭・喉頭への侵害刺激,同じ体位をとり続けることによる侵害刺激の3つがあります.さらには,術者が末梢神経ブロックの範囲外に侵害刺激を加えてしまう場合もあります.末梢神経ブロックにより術野に加わる侵害刺激を取り除いても,残りの侵害刺激を抑えられていないと体動が生じてしまうわけです.
 BISのEMGを鎮痛モニターとして使うという話はもっと身近な話に言い換えることができます.皆さんも,リウマチ患者さんの膝手術を硬膜外ブロックと鎮静のみで管理していて,術中にモゾモゾをよく動かれて,その対処に疲れてしまった経験をされたことがあるのではないでしょうか.患者さんに聞くと,同じ姿勢をとり続けることが辛いと言われます.このモゾモゾをとるには鎮静薬を投与するより,麻薬や非麻薬性鎮痛薬を投与するほうが効果的です.BISのEMGを鎮痛モニターとして使うという話は,昔から我々が経験則でやっていたことです.EMGが上昇してきたら,筋弛緩薬を投与する前に,鎮痛レベルを再評価してみましょう.
上腕骨骨折に腕神経叢ブロック+プロポフォール&ケタミンによる全身麻酔で管理.気道確保はLMAで自発呼吸を温存していました.術者が偶然にも術野とは関係のない部分に身体を預け続けたことが引き金となって体動が生じました.BIS値が上昇する2-3分前にEMGが上昇しています.フェンタニル25μgを投与して対処し,体動が治まり,BIS値も低下しました.BIS値の推移とEMGの推移が連動していることが分かりますか?

0 件のコメント:

コメントを投稿