2011年5月7日土曜日

「神の手」をなくした手技

僕は解剖死体研究を行い,超音波ガイド星状神経節ブロックを開発しました.発表した当時も,今も,ペインクリニックに携わる者の中には,「そんな面倒臭いことして」と揶揄している人がいます.僕がこの手技を発表する以前,星状神経節ブロックほど「神の手」が必要な手技はありませんでした.患者達も「○○先生にはしてもらいたいけど,××先生は効かないから・・・」と言い,自然と神の手を作ってきました.

このブロックを盲目的にやること自体がロシアンルーレットをしていることと同じです.超音波画像をみれば,頸部構造が如何に解剖学的に変異に富み,画一的な盲目的手技が危険であるかが分かります.超音波画像を見ながら,正確に頚部交感神経幹の存在する部位に局所麻酔薬を投与すれば,頭頚部と上肢の交感神経遮断作用を得ることができます.局所麻酔薬の拡がりから,合併症の予測もできます.

僕は神の手と言われている人たちから「神の手」という称号を奪い,誰しもが安全かつ効果的に星状神経節ブロックを行えるようにした証として,そうした揶揄を受け取っています.

1 件のコメント:

  1. 神の手は人に伝えられませんからね。
    誰もが努力次第で神の手を得ることのできる手法を開発することが最も求められていることだと思います。

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