2011年5月22日日曜日

学会を医学統計で楽しむ

僕は,今回の学会でいつもと違う楽しみ方をしていました-医学統計で楽しんでみたのです.iphoneのアプリで統計のソフトを2つあります.ひとつはBioCalc,もうひとつはSampleCalc.BioCalcは一通りの統計解析ができます.SampleCalcはサンプルサイズを計算できます.

ポスターで間違った統計解析手法で結論を出していることがあります.そうしたときに,表示されているデータを使って,BioCalcからそれなりの解析をすることが可能です.

有意差が出なかった発表では,βエラー(有意差があるのに,ないと結論してしまう危険性)がありますので検出力解析にSampleCalcを使ってみました.α = 0.05,1-β = 0.8として,有意差がでなかったとしている差を検出するにはどれくらいのサンプルサイズがいるのか計算するのです.算出されたサンプルサイズが発表者のサンプルサイズより大きければ,発表者はもっと多く被験者を集めなければいけなかったのだと理解できます.逆に,発表者のサンプルサイズがどれくらいの検出力かも計算できます.検出力1-βを0.7,0.6,0.5のサンプルサイズを計算します.発表者が使用したサンプルサイズがどのあたりにあるかをみれば,おおよその検出力が計算できます.SampleCalcの良さはもうひとつあります.自分が興味をもった研究発表を施設に持ち帰って再検討してみようというときにサインプルサイズをその場で算出することにもなります.同じ日本人ですから,人種の違いを考えなくてもすみます.

学会抄録を見ると,十分なサンプルサイズがない演題が採択されていることが多々あります.そうした演者が学会発表までに充分なサンプルサイズにして発表しているか,不十分なままで学会発表しているかまで分かります.当然,その結論を自分が知識として受け入れてよいかも分かります.

5 件のコメント:

  1. サンプルサイズは本来倫理委員会を通すときにチェックされると思うのですが、、
    施設によってこの辺りの厳しさが大きく違うようです。

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  2. サンプルサイズ計算を本格的に請求しはじめたのは,ここ1-3年だと思います.だから,学会発表の質が上がるのはもっと時間を要すると思います.うちなんかは,サンプルサイズ計算として利用できる論文がないからとpilot studyをすると伝えたら,はじめはOKでしたのに,途中からpilot studyすらすでに臨床研究だからとストップがかかりました.倫理員会も混乱しているじゃないでしょうか.医学統計の全分野に精通した統計学者が学内でいるかいないかも大きいと思います.そうした部門がある大学は少ないと思います.

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  3. 僕も今学会の演題査読者になりましたが,学会は査読者に採択基準の指針を提示すべきかと思います.サンプル数が明らかに少ない演題に対して,採択しないか採択するかが査読者によって対応がまちまちだったと思います.

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  4. 初日夜の会合(アルコール入り)で、今回は明らかにレベルが低い演題が採択されていたというのが話題になりました。全体的な基準が必要なのと、1人でも査読者が厳しい点数を付けたらアウト的な基準も必要ですね。
    全体的にも、企画のマンネリ化が残念な部分です。

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  5. ちなみに僕はサンプルサイズが明らかに少ない(各群でN=6程度で有意差が出ていない)ような抄録は採択しませんでした.理由もちゃんとそのことを付けました.
    企画のマンネリ化は難しい問題ですね.しかし,動物実験施設を利用した企画は善かったと思います.cadaver workshopも開けるとよいのでしょうけど.このあたりは私立大学のほうが自由がきくと思います.ASAのような企画は難しいですね.

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