2011年5月11日水曜日

多発性硬化症の眼痛とperibulbar block

僕が眼球周囲ブロック(peribulbar block)を身につけたのは多発性硬化症の患者さんとの出会いがきっかけでした.その患者さんは,多発性硬化症による球後視神経炎のために,自分で目をえぐり取りたくなるような眼の痛みで苦しんでいました.眼科や神経内科では,この眼痛をどうにもできず,
僕の外来を受診されました.星状神経節ブロックでは痛みが半分しか軽減せず,最終的に僕が選んだ疼痛治療が鼻毛様体神経を直接遮断する球後神経ブロックでした.しかし,文献を読みあさるうち,外眼筋の中に針を刺入しなくても,外眼筋の外に針を刺入するだけで鼻毛様体神経を遮断することができる眼球周囲ブロックがあることを知りました.

自分も含め,まわりに麻酔科医で眼科領域のブロックなどしている人など会ったこともありませんでした.僕はperibulbar blockの論文を読みあさり,眼窩内の解剖,peribulbar blockの各アプローチ,それに伴う合併症を把握し,誰に質問されても答えられる状況にして,手技に臨みました.当然,それが初めての眼球周囲ブロックであることも患者さんに伝えました.

多発性硬化症に伴う球後視神経炎に対する眼球周囲ブロックの効果は驚くものでした.自分で眼球をえぐり取りたくなるような眼痛で数ヶ月寝るに寝られず,精神的にも追い込まれていた人が初めて地獄の苦しみから解放された瞬間を目の当たりにしました.

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