2011年7月29日金曜日

CVレガフォースを使った超音波ガイド腋窩静脈カテーテル挿入

平行法で行う超音波ガイド腋窩静脈カテーテル挿入術におけるCVレガフォースの必要性について考えたいと思います.麻酔科外来では易出血性の血液内科患者のCVカテ留置の依頼がたくさんあります.また感染症で脱水状態になり,腋窩静脈が虚脱してしまった患者での依頼もあります.

僕はCVレガフォースを採用するように手続きをして,外来でのCVカテ依頼で使ってきました.残念ながら,CVレガフォースの利点はあまりないと考えています.何故なら,誰でも簡単に入れられるようなパンパンに腋窩静脈が張った患者では利点があっても,上述のような腋窩静脈が虚脱しかかっているな患者での繊細な針操作がCVレガフォースでは不可能だからです.

echogenic needleとして売り出された針は,針先から3 mmも離れたシャフトに加工がなされており,針先ではなく,シャフトが強調されて描出されます.強調されたシャフトにばかり目がいき,針先には目がいかなくなります.血管が虚脱しかかっている患者での穿刺では,この3 mmの差は大きな距離です.

CVレガフォースは静脈壁を貫通しやすいように,細く柔らかい針になっています.超音波ガイド法では針は太ければ太いほど描出性はよくなります.中途半端な平行法の技術では,この細い針を描出するのは無理です.しかも,刺入時に余分な力が入ると,針がしなって曲がります.しなった針は超音波ビームに針全体が乗らないので描出されません.曲がった針は曲がった方向に刺入され,自分と考える方向と違う方向に進んでいきます.この細い穿刺針を扱うことは,東洋医学で使われる極細の鍼をまっすぐ刺入することと同じ.鍼治療の経験のない者は,平行法でまっすぐに刺入させることは無理でしょう.

細いガイドワイヤーも映りません.ガイドワイヤー挿入後,胸骨上窩で鎖骨下静脈から腕頭静脈への移行部を描出して,ガイドワイヤーが心臓に向かっているか観ることができます.CVレガフォースでは,このガイドワイヤーの確認がほとんどできません.ガイドワイヤーが細すぎるのです.僕自身も今まで,CVレガフォースのガイドワイヤーを描出できたことは1回だけです.

以上のことから,CVレガフォースはあくまで内頚静脈穿刺を交差法で実施する場合にのみ利点があり,より深い位置にある腋窩静脈に対して,安全な穿刺を可能とする平行法では利点がありません.これは超音波ガイド中心静脈穿刺の教育が交差法を中心に行われつづけ,そのことだけを念頭に商品開発を行ってきたからでしょう.辛辣かもしれませんが,平行法の安全性が交差法に勝る以上,一般的な太い穿刺針とガイドワイヤーを元に超音波ガイド法向けに商品開発を仕直すべきでしょう.

4 件のコメント:

  1. これまでは穿刺針が細いという面が重視されてきましたが、超音波ガイド前提なら適度な太さをもう一度考える必要があるかもしれないですね。
    ただレガフォースのワイヤーは元々血管造影用のワイヤーの芯を流用しているので柔らかいようでコシがあって好きです。先日もシャーウッドのマイクロニードルを使って1時間くらい格闘していた外科の先生にレガフォースを使わせたら一発で入ってびっくりしました。

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  2. 先生のところで、何回かCVレガフォースを使って平行法で腋窩静脈穿刺をしましたが、その時から正直、CVレガフォースはあまり好きではありませんでした。理由はやはり、針先の手前部分ばかりが強調されて針先に集中しにくいからです。

    交差法が前提とのことですが、それに関しても成人ならよいと思いますが、新生児で内頚静脈の血管径が5mm以下の症例では普通の針の方が良いような気がします。まだそのくらいの血管径の子にCVレガフォースを使ったことがないので想像でしかないですが。

    ガイドワイヤーに関しては、私もYASU先生と一部同意見で、特に新生児の交差法による内頚静脈穿刺で有利ではないかと思います。今でもたまにガイドワイヤーが入りづらい時にラジフォーカス(お高いです)を使って解決することがあり、CVレガフォースのガイドワイヤーの仕様はそれに近いのではないかと思いました。
    ただ、超音波による視認性は悪いですね。あと、ダイレーターの切れがいまいちという噂を周囲で耳にしますが、個人的にはそんなに気になっていません。

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  3. ガイドワイヤーが太くても,CVレガフォースのようなガイドワイヤーは作れるのではないでしょうか.針だって,針先をより鋭角にしたらtentingの問題を容易に解決できると思います.

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  4. 交差法前提なら、針を強調するメリットはあまりないですね。
    あとは外套ですね。付いてなくていいのに。

    いずれにしてもまずmethodがあって、それに適したグッズということになると思います。今はmethodがバラバラなのでメーカーの対応も難しいと思います。

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