2011年11月4日金曜日

僕の教え方

今の施設では僕の手技を必要としてくれてはいるが,僕の手技を学びたいと思っている者はAA先生を除いてはいない.臨床教育制度が始まって以来,若手医師は教えられることが当たり前で,教育的立場の者は相手がどんな者であれ,教えることが当たり前になっている.そんな現状だから,若手はやる気があっても表現しなかっただけかもしれない.ただ,僕が熱心に教えもした時期があったが,それに応えてくれることはなかった.そんな中,僕の知識や技術を学びたいという若手麻酔科医が三人,これまで僕のところを訪れた.彼らは貪欲に僕の知識と技術を学んでいった.そして,三人とも自然にずば抜けた超音波ガイド手技を身につけて帰って行った.いつの間にか僕の教育プログラムはエキスパートを育て上げるシステムとして,みんなから言われるようになった.

今日の超音波ガイド中心静脈穿刺のパネルディスカッションで,「誰もができる手技でなければならない.エキスパートができるものではいけない.」という趣旨の意見があった.末梢神経ブロックにしろ,中心静脈穿刺にしろ,僕が発言をすると,「エキスパートだから・・・」とか,「先生だからできること」と言われてしまうことが多い.しかし,自分としては,そんなことをこれぽっちも思っていない.誰しもができる超音波ガイド手技を教えていると思っている.超音波ガイド手技を学びたいと思っているものに正しく手技を行うためにはどうすべきかを教えているだけだからだ.とにかく,それを徹底的に教えている.しかも,僕を必要としてくれている一人の若手だけに.最終的には,超音波画像をみて,どのような刺入経路でアプローチするかという感覚まで一緒になってくる.

一方,現況の超音波ガイド中心静脈穿刺の教育はどうなっているだろう?多数の医師をターゲットに交差法を教育し,いつの間にか交差法による穿刺法を考案したT先生の思い(針先をちゃんと描出しなければ危険だということ)を理解することもなく,単に超音波画像で中心静脈を見ているだけで,針先を描出せずに穿刺することで事故が起きているとT先生が指摘されていました.今日のパネルディスカッションでもT先生は,正しくない超音波ガイド中心静脈穿刺がなされてしまうために,とうとう超音波ガイド中心静脈穿刺を自ら否定して,Dr Englishが考案したランドマーク法による中心静脈穿刺がどんなものであったのかを原点回帰をして,パネルディスカッションの講演としてしまった.


僕が教えていることは,誰もが正しく針先を描出する平行法である.針先を描出することがいい加減になってしまっている人たちからすれば,その教育を受けたものがエキスパートに見えるだけだ.そうであるならば,僕はエキスパートを育てていこうと思う.そして,ちゃんと自分が教えていることがしっかりと相手に伝わっているか確認するために,一人に徹底して教えていこうと思う.僕が教えた彼らがそのまま全国に散らばって,各地で僕が伝えたことを他の人に教育してくれたら,確実に僕の教えていることがみんなに伝わっていくと思う.

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